経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

大混乱の予感 : イギリスのEU離脱 (下)

2018-10-26 06:53:14 | イギリス
◇ 八方ふさがりのメイ首相 = イギリス国民は16年の国民投票で、EUからの離脱を最終決定した。だが、この国民投票では「離脱後の関係」については何も決めていない。このため現在の民意は「EUと完全に縁を切る」という強硬派と、「自由貿易の関係は続けたい」という穏健派に2分されている。メイ内閣の閣僚や議会でも、強硬派と穏健派が伯仲。だからメイ首相はEUとの交渉で、「自由貿易」も「移民規制」も落とせない。

仮に何らかの条件が整って、EUとの間で離脱協定が成立できたとしよう。だが、その場合も協定がイギリス議会で承認される可能性はそう高くない。強硬派と穏健派のどちらかが反対すれば、議会でつぶされてしまう危険性がある。またメイ内閣は、北アイルランドの弱小政党との連立で成立した。この政党が反旗を翻せば、内閣は潰れてしまう。メイ首相はEUとの会議では白い目で見られ、国内では強硬・穏健の両派から突き上げられ、進退窮まっているようにみえる。

もしイギリスが無秩序状態でEUを離脱すれば、企業や個人がイギリスで取得した営業権やパスポートは3月30日以降、効力を失う。イギリスとEUの間で「自由なヒト、モノ、カネの移動」が出来なくなるわけだ。特に企業はEUで営業権を取り直す必要があり、そのためには拠点をイギリスからEUのどこかへ移さなければならない。

すでにイギリスに本拠を構える海外企業は、対応策に乗り出している。たとえばドイツのBMWは、イギリスからの撤退を決めた。日本企業も、パナソニックはヨーロッパ本社をロンドンからオランダに移転。日立は生産拠点をイタリアに集中する。金融機関も一部の機能を大陸側に移し始めた。今後は12月のEU首脳会議を見据えて、こうした動きが加速するに違いない。それでも来年3月には、大混乱に陥る可能性は高い。

       ≪25日の日経平均 = 下げ -822.45円≫

       ≪26日の日経平均は? 予想 = 上げ


大混乱の予感 : イギリスのEU離脱 (上)

2018-10-25 08:33:23 | イギリス
◇ 解のない連立方程式 = 来年3月29日、イギリスがEUから離脱することは確定している。だが離脱後の関係をどうするかが、全く決まらない。EUは12月に首脳会議を開くが、これが最後のチャンス。だが、ここで決まる可能性はきわめて小さい。もし決まらないまま離脱の日を迎えると、イギリスはEU加盟国としての特権をすべて失う。ヨーロッパはむろんのこと、全世界が大混乱に陥る危険性は限りなく大きい。

EUは先週17-18日、ベルギーで首脳会議を開き、この問題を討議した。ところが進展はゼロ。12月の首脳会議に問題を持ち越した。ここでも合意に達しないと、議会の承認を得る時間がなくなり、3月29日を迎えてしまうことになる。そうなれば無秩序のまま離脱することにならざるをえない。

合意ができなかった大きな問題点は2つ。1つ目はイギリスのメイ首相が主張する「EUと自由貿易地域を創設、他の諸国とはFTA(2国間の自由貿易協定)を結ぶ」という提案。EUからは離脱するので、EUに対する分担金は支払わない。また移民の流入制限も、独自に実施するという内容だ。EU側からみれば「イギリスのいいとこ取り」であり、他の加盟国に真似されてはたまらない。だから絶対に受け入れられない。

2つ目はEU加盟国のアイルランドと、イギリスの一部である北アイルランドの国境問題。両方とも同じ島にあるため、EU側は「北アイルランドも加盟国並みにしたら」と提案しているが、イギリスは「国家を分断される」と猛反対だ。この2点について、先週の首脳会議では少しの進展もみられなかった。それだけではなく、イギリス国内のもっと込み入った事情が、問題解決の大きな障害になっている。

                              (続きは明日)

       ≪24日の日経平均 = 上げ +80.40円≫

       ≪25日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

三重苦の 中国経済 (下)

2018-10-24 08:19:25 | 中国
◇ 自動車・マンション・携帯も冷え込む = 中国人民銀行は10月上旬、預金準備率を引き下げ、大手銀行の場合は14.5%になった。この措置で7500億元(約12兆円)の資金が市中に放出されたという。準備率の引き下げは、ことし3回目。流動性の増加額は2兆2500億元に達したとみられている。政策の妥当性はともかくとして、初動だけは早かったと言えるだろう。

政府も財政面から手を打った。個人所得税を10月から年3200億元(約5兆1000億円)減税。法人についても、研究開発費について減税した。また11月からは、輸入関税の引き下げも実施する予定。物価上昇を抑制し、個人消費の減少を防ぐことが主たる目的となっている。ただ地方政府と国有企業の債務増加を避けるため、インフラ投資は行っていない。

これらの政策効果は、まだ表われてこない。たとえば9月の新車販売台数は239万台で、前年を11.6%も下回った。3か月連続の前年割れで、ことしは通年でも昨年を下回るかもしれない。マンションの売れ行きも不振。なかには高級車を景品に売り出す業者もいるという。携帯電話の出荷台数も、17か月連続で前年割れとなった。

こうした中国経済の成長鈍化は、世界に影響を広げ始めた。日本の場合も自動車や機械、電機メーカーが、相次いで中国向けの販売計画を下方修正している。これを反映して、市場では中国関連銘柄の株価が下落した。中国の状況がさらに悪化すると、世界同時不況の引き金にもなりかねない。株式市場はこうした危険性にも、警戒感を抱き始めている。

       ≪23日の日経平均 = 下げ -604.04円≫

       ≪24日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

三重苦の 中国経済 (上)

2018-10-23 05:33:27 | 中国
◇ すべての指標が下向きに = 中国統計局の発表によると、7-9月期の実質GDP成長率は年率6.5%だった。前期より2ポイントの低下で、リーマン・ショック後09年1-3月期以来の低い伸び率となっている。地方政府や国有企業の債務超過を是正するためインフラ投資を抑制していたところへ、米中貿易戦争の影響が重なった。このため固定資産投資、個人消費、輸出など、すべての項目が悪化している。

設備やインフラ、不動産投資を総計した固定資産投資は、1-9月間で前年比5.4%の増加。1-6月間の6.0%増から目立って減退した。特にインフラ投資は3.3%増にまで落ち込んでいる。小売り売上げ額は1-9月間で9.3%の増加。これも1-6月間の9.4%増から、わずかだが減少した。輸出も元相場が大きく下落したにもかかわらず12.2%増で、1-6月間の12.5%増から縮小している。

景気の減速と米中貿易戦争の影響で、株価は2月から下降局面に入った。最近の上海総合指数は、4年ぶりの安値に沈んでいる。特に外国人投資家の売りが激しいようだ。人民元の対ドル相場も10年ぶりの安値に。輸出にはプラスだが、国内の物価は押し上げられる。9月の消費者物価は前年比2.5%の上昇。素材や食品が上がっており、個人消費を冷え込ませる心配も出てきた。

株価の低迷、元相場の下落、そして成長率の低下。いま中国経済は、この三重苦に憑りつかれた。しかも米中貿易戦争の悪影響はこれから本格化するから、見通しもよくない。中国経済の停滞は、アジア諸国や日本、さらには欧米など世界中にマイナス効果を及ぼす。中国政府はなんとか三重苦から逃れようと、いろいろ対策を打ち出した。だが、その結果はまだ少しも見えてこない。

                             (続きは明日)

       ≪22日の日経平均 = 上げ +82.74円≫

       ≪23日の日経平均は? 予想 = 下げ


今週のポイント

2018-10-22 08:05:29 | 株価
◇ 強気と弱気が綱引き中 = ダウ平均は先週16日、548ドルと大幅に上昇した。7-9月期の決算発表が始まり、大手銀行などの業績が予想以上に伸びたことが材料になった。しかし、この日以外の株価は冴えず、週間の上げ幅は104ドルにとどまっている。日経平均も16-17日は上昇したが、あとの日は売られて週間では163円の値下がりとなった。

株価の売り材料になったのは、主として外部要因。米中貿易戦争の先行き不安、資金流失に悩む新興国経済に対する警戒感が強まると、株価は下げている。特に4年ぶりの株安と10年ぶりの為替安に見舞われ、成長鈍化もはっきりしてきた中国経済への懸念が高まった。東京市場でも、いわゆる中国関連銘柄の下落が目立っている。

日米ともに、企業の業績は最高の水準を維持している。したがって決算発表が進むにつれて、株価が上昇する場面もありそうだ。その半面、外部要因の悪化も進行しそう。株価をめぐる強気と弱気の綱引きは、もう少し続くだろう。ただ先週の株価は、10月になってからの大幅安を半分も取り戻せなかった。ここからみると、強気派はやや劣勢と言えるかもしれない。

今週は22日に、8月の全産業活動指数。25日に、9月の企業向けサービス価格。26日に、東京都区部の消費者物価。アメリカでは24日に、9月の新築住宅販売。25日に、9月の中古住宅販売。26日に、7-9月期のGDP速報が発表される。

       ≪22日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

Zenback

<script type="text/javascript">!function(d,i){if(!d.getElementById(i)){var r=Math.ceil((new Date()*1)*Math.random());var j=d.createElement("script");j.id=i;j.async=true;j.src="//w.zenback.jp/v1/?base_uri=http%3A//blog.goo.ne.jp/prince1933&nsid=145264987596674218%3A%3A145266740748618910&rand="+r;d.body.appendChild(j);}}(document,"zenback-widget-js");</script>