経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

びっくり! アメリカの雇用統計

2019-03-12 08:14:09 | アメリカ
◇ 異常に減少した雇用者増加数 = アメリカ労働省が発表した2月の雇用統計をみて、多くの関係者が仰天した。最も注目される非農業雇用者の増加数が、わずか2万人にとどまったからである。1月は31万人も増加していたのに、なぜこれほど減少したのか。なにしろ景気の力強さを象徴する指標とみられてきただけに、そのショックは大きかった。

実は17年9月にも、雇用者の増加数が1万8000人に落ち込んだことがある。このときはハリケーンの影響だった。今回も中西部を襲った大寒波の影響を指摘する声もあるが、その被害の大きさは比較にならない。さらに心配な点がある。統計をよくみると、建設業の雇用者が3万1000人減ったほか、小売業と製造業の雇用者もほとんど増えなかった。

最近のアメリカ経済を点検すると、まず住宅関連の不振。次いで製造業と小売業の伸び悩み傾向が目につく。たとえばローン金利の上昇で、住宅投資は1年以上にわたって前年割れ。製造業の景況感は2年3か月ぶりの低水準に。小売り業界は、ことしの見通しを昨年より大幅に引き下げている。もし、こうした実体経済の悪化傾向が雇用面にも現われ始めたとすれば、景気後退の危険性が強まることになるだろう。

その答えは、おそらく1か月後に発表される雇用統計に示される。仮に3月の雇用者増加数が20万人に達すれば、2月の急減は一過性のものだと片づけられる。仮に15万人を割り込むようだと、景気後退色が一気に広まりかねない。世界経済をずっと牽引してきたアメリカ経済は、いま重大な分岐点にさしかかっている。

       ≪11日の日経平均 = 上げ +99.53円≫

       ≪12日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

今週のポイント

2019-03-11 07:05:50 | 株価
◇ 潮目が変わった株式市場 = 世界中の株価が急落した。ダウ平均は5日間の続落で、先週は576ドルの値下がり。日経平均も577円の下落。ドイツやフランス、上海の株価も大きく値を下げている。原因は各国で、実体経済の悪化が報じられたこと。アメリカでは住宅販売の不振、雇用者増加数の激減。日本では景気動向指数の低迷、中国では目標成長率の引き下げ。EUでは景気予測の下方修正など。悪いデータが一斉に出現した。

世界の株価は、先々週まで予想以上の強さを示していた。ダウ平均は昨年10-12月間に下落した分の8割を取り戻し、日経平均も半分まで戻している。日経新聞の調査だと、世界36市場のうち16市場が半値戻しに成功していた。だから先週の急落は、その反動だという見方もないではない。

仮に今週の株価が大きく反発すれば、そういう見方が広がるだろう。だが株式市場は、ここへきて実体経済の悪さに気が付いたとみる方が自然。とすれば、株価の調整は長引くと覚悟しておいた方がいい。その調整の長さと深さを知るためには、各国が発表する経済指標を重視して行くしかない。

今週は12日に、1-3月期の法人企業景気予測調査。13日に、2月の企業物価と1月の機械受注、第3次産業活動指数。アメリカでは11日に、1月の小売り売上高。12日に、2月の消費者物価。13日に、2月の生産者物価。14日に、1月の新築住宅販売。15日に、2月の工業生産と3月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が14日に、2月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額を発表する。

       ≪11日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

下剋上の戦国時代に : 情報メディアの闘い

2019-03-09 08:43:30 | メディア
◇ ネットに食われるテレビや新聞 = 世はまさに情報時代。膨大な数の情報が、テレビや新聞、それにSNSと総称されるインターネット関連メディアを通じて流れている。こうしたなかで、メディア同士の競争は熾烈さを増すばかり。食うか食われるかの戦いを展開しているが、形勢は後発のネット・メディアがきわめて優勢だ。新聞や雑誌などの活字メディアはもちろん、テレビもネットに攻め立てられて防戦一方である。

電通の集計によると、昨年の総広告費は6兆5300億円だった。前年比では2.2%しか増えていない。各メディアが、この広告費を取り合ったことになる。その結果、首位はまだテレビが死守。獲得した広告費は1兆9123億円だったが、前年比では1.8%減少している。一方、ネット・メディアは1兆7589億円で、16.5%も増加した。この調子で行くと、ことしはネットがテレビに追いつきそうだ。新聞は4784億円、前年比7.1%の減少で、これもネットに食われた。

出版物という視点でみても、ネットの進出が著しい。出版科学研究所の調査によると、昨年の雑誌と書籍の総売上高は1兆2921億円で、前年比6.7%の減少だった。この実績はピークだった1996年の半分以下に落ちている。特に若い人の活字離れが急速に進んでいるという。その一方、いわゆる電子出版物の売上高は2479億円で、11.9%も伸びている。

こうしたネット・メディアの快進撃は、スマホの普及に支えられている。総務省の調査によると、17年のスマホの世帯普及率は75.1%に達した。特に20-30歳代では90%を超えている。ある意味では、そろそろ飽和状態に。したがってネット・メディアの勢いも、ことしあたりから弱まる可能性がないではない。そうなると、こちらも必死になるだろうから、情報メディアの闘いはさらに激化することになる。

       ≪8日の日経平均 = 下げ -430.45円≫

       【今週の日経平均予想 = 5勝0敗】   

習政権は 「背水の陣」を敷いた (下)

2019-03-08 08:02:52 | 中国
◇ 実態はすでにマイナス成長? = 財政・金融面からの強力な景気対策にもかかわらず、中国経済の立ち直りには時間がかかるという見方も少なくない。というのも仔細に観察すると、厄介な問題を抱えていることが判るからだ。たとえば不動産バブルの問題。あるいは地方政府と国有企業の過剰債務。景気対策を推進するなかで、これらの問題への対処を誤ると、新たな大問題が発生しかねない。

大都市のマンションを中心にした不動産投機は、以前からバブルの様相を濃くしていた。中国政府は昨年春から不動産融資をきびしく規制、今回もその規制を緩めていない。ところが景気の悪化とともに、最近は住宅価格が急落。1月の住宅販売高は前年比で3割も落ち込んだ。しかし規制を緩めると、バブルが復活する。だが、このままだと建設業を中心に失業者が増えてしまう。

国有企業の累積債務は、昨年末時点で40兆元を超えたとみられている。また地方政府の債務は18兆元と発表されているが、実際はもっと多いようだ。GDPに対する比率は160%に達したという試算もある。さらに今回のインフラ投資増額で、これらの債務がいっそう膨れ上がることは確実。どこかで債務不履行が発生すると、連鎖的に金融不安が顕在化する危険をはらんでいる。

日経新聞によると、中国人民大学の向松祚教授は、昨年末の講演で「重要な機関が18年の成長率を1.67%かマイナスと試算した」と語ったという。自分の考えではなく、“重要な機関”の試算だと言っているが、よく当局から叱られなかったものだと思う。それとも当局の方が、こういう形で「マイナス成長もありうる」ことを教え込もうとしているのだろうか。

       ≪7日の日経平均 = 下げ -140.80円≫

       ≪8日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

習政権は 「背水の陣」を敷いた (上)

2019-03-07 08:09:00 | 中国
◇ 6%成長を死守する構え = 中国の李克強首相が、全国人民代表大会で発表した19年の目標成長率は「6-6.5%」だった。18年の「6.5%前後」からの引き下げ幅を小さく見せるための工夫をしているが、上限の6.5%に意味はない。というのも実際の成長率は、昨年10-12月期に6.4%まで下がっているからだ。習政権の真意は、下限の6%を死守することにあるとみるべきだろう。

この6%成長を死守するために、中国政府は大々的な景気対策を打ち出した。李首相によると、まず企業に対する優遇措置。減税と社会保険料の負担軽減で、計2兆元(33兆円)を還元する。また地方特別債を2兆1500億元発行し、鉄道建設8000億元を中心にインフラ投資を促進する。同時に金融面からも預金準備率の引き下げなど、いっそうの緩和を図る方針だ。

習近平国家主席は、かねてから「20年のGDPを10年の2倍に拡大させる」と公約してきた。そのためには19年の成長率を6%以上にすることが、絶対条件となる。また仮に6%を割るようだと、失業率が急激に高まって国民の不満が爆発しかねない。このため財政・金融面から総力を挙げて、“6%の川”を渡って後退することがないよう万全の体制を構築したのだろう。

問題は、その効果である。上海市場の株価は、政策内容を評価して上昇した。また専門家のなかにも「これで中国経済は年央から回復に向かう」と楽観する人が出ている。その半面「いまの中国経済は病根が深く、こうした対策では治癒しない」とみる人も多い。たしかに背水の陣は敷いても、戦いに勝てないこともないではない。

                               (続きは明日)

       ≪6日の日経平均 = 下げ -129.47円≫

       ≪7日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

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