経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

輸出 12か月連続で減少中!

2019-12-19 08:45:33 | 貿易
◇ 全地域向けで縮小している = 輸出の減少が際立ってきた。財務省が18日発表した11月の貿易統計によると、輸出は6兆3800億円で前年比7.9%の減少。輸入は6兆4600億円で15.7%の減少だった。この結果、貿易収支は821億円の赤字となっている。これで輸出は12か月連続の減少を記録した。世界経済の停滞を反映したものとはいえ、日本の輸出は異常な状態に陥っている。

輸出の状況を地域別にみると、ほとんど全地域向けで減少した。アメリカ向けは1兆2000億円で12.9%の減少。アジア向けは3兆6000億円で5.7%の減少。うち中国向けは1兆3100億円で5.4%の減少。EU向けは7000億円で6.1%の減少だった。全世界を見渡しても輸出が増加したのは台湾、カナダ、スイス、それに中東諸国ぐらいなもの。これも異常な現象だ。

この1年間、円の為替レートは小動きに終始した。したがって為替相場の影響は、そんなに大きくない。しかし11月の輸出をみると、数量で5.0%、価格で3.1%減っている。やはり相手先の景気が鈍化し、値引きをしても売りにくくなっていることを示しているようだ。特に景気がいいとされるアメリカ向けが落ち込んできたことは、どう解釈するべきなのだろう。

かつての日本経済なら、これだけ輸出が減退すると景気はすぐに悪化した。しかし現在は製造業の比重が2割強に減っているから、景気はすぐには下降しない。しかし輸出の停滞が長く続けば、その影響はじわじわと現われてくる。すでに製造業の求人は低調になってきた。輸出はいつ回復に向かうのか。来年の焦点になってくる。

       ≪18日の日経平均 = 下げ -131.69円≫

       ≪19日の日経平均は? = 下げ≫

“部分合意”は 中国の遠謀深慮 (下)

2019-12-18 08:32:22 | 中国
◇ 本当の勝負はこれから = 米中両国には、それぞれの思惑があった。アメリカの場合は、何といっても来年11月に迫った大統領選挙。仮に15日に予告通り中国製品2500億ドル分に40%の関税をかけたら、日用品や玩具の値段が大幅に上昇する。すると消費者や小売業界の票を減らすかもしれない。関税を据え置くことで中国の農産物輸入を増やせれば、農村地帯の支持を確実なものとすることが出来る。これがトランプ氏の思惑だったに違いない。

一方の中国では、景気の鈍化が止まらない。来年は成長率が6%を割る危険性まで出てきた。同時に物価は4.5%の上昇に。これにはアフリカ豚コレラの流行が大きく影響している。5億頭といわれる豚が4割も減ったためだ。アメリカ産の豚を大量に輸入すれば、物価の上昇と国民の不満を抑えられる。その見返りでアメリカの輸入関税が下がれば、景気にとってもプラスになる。これが習主席の思惑だったに違いない。

さらに中国側は、トランプ氏は大統領選挙が近づくにつれて焦りを濃くするだろうと洞察している。たとえば養豚の数が激減しているから、大豆の需要は減っている。そこで大豆の輸入を減らし、ほかの農産品を増やしたら、アメリカは混乱するだろう。大豆農家に「大型トラクターを買え」と言ったトランプ氏は、票を失うかもしれない。

押したり引いたり、手段はいくらでもある。これからは中国が、交渉のペースを握る。そして国家政策の根幹に関わる補助金の問題や技術開発政策については、絶対に譲らない。習政権はこう考えているが、アメリカはそれでは納得しないだろう。したがって、米中間の経済戦争はこれからが本番と見ておく方が賢明だ。

       ≪17日の日経平均 = 上げ +113.77円≫

       ≪18日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

“部分合意”は 中国の遠謀深慮 (上)

2019-12-17 08:17:53 | 中国
◇ 足元を見られたトランプ大統領 = 米中両国政府は13日「経済協議が部分合意に達した」と発表した。今回の合意を“第1段階の合意”と位置づけており、その内容は知的財産権、技術移転、食品・農産物、金融サービス、為替レート、貿易の拡大などの項目に及んでいる。中国がアメリカからの輸入を大幅に拡大する見返りに、アメリカは15日に予定していた中国製品2500億ドル分に対する追加の関税引き上げを見送る。また9月に発動した1200億ドル分に対する関税率を、15%から7.5%に引き下げることになった。

米中両国による関税引き上げ競争は18年7月に始まったが、関税が下げられるのはこれが初めて。これにより米中関係が改善に向かうのではないかという見方も出て、世界中の株価が高騰した。ダウ平均株価は史上最高値を更新、日経平均も1年2か月ぶりに2万4000円を回復している。だが、これは少し喜び過ぎだろう。

たとえば中国は、アメリカからの輸入をどれだけ増やすのか。アメリカ側の発表では「2年間に2000億ドル。農産物は現在の年間240億ドルを500億ドルに増やす」と明示した。トランプ大統領は農民層に向けて「大型トラクターを早く買い入れないと、チャンスを逃すぞ」とハッパをかけ、とにかく上機嫌だった。

ところが中国側の発表では、全く輸入数量には触れていない。また今回の合意には含まれなかった中国の国有企業に対する補助金やファーウェイを巡る問題など。トランプ大統領は、これらを協議する“第2段階”の交渉を「すぐにでも始める」と言明した。しかし中国政府は「今回の合意による結果をよく見極めてから」と、そっけない。

                               (続きは明日)

       ≪16日の日経平均 = 下げ -70.75円≫

       ≪17日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

今週のポイント

2019-12-16 07:12:14 | 株価
◇ 「13日の金曜日」は吉日だった = 先週「13日の金曜日」はイギリス労働党には厄日だったが、世界中の投資家にとっては吉日となった。まずイギリスの総選挙で保守党が圧勝、そのあと米中両国が経済交渉での「第1段階の合意」を確認した。このため将来に対する不安が薄れ、世界の株価は一斉に上昇した。特に日経平均は600円近くも跳ね上がり、年初来高値を更新している。

日経平均は先週669円の値上がり。終り値では、1年2か月ぶりに2万4000円を回復した。一方、ダウ平均は週間120ドルの値上がり。こちらは史上最高値を更新した。しかし世紀の大問題が、これで解決したわけではない。イギリスはEUとの困難な条件交渉を控えているし、米中交渉も“第2段階”へ進める可能性はきわめて小さい。市場がこの辺の評価を、どう下すか。

先週の株価からみる限り、東京市場の方がニューヨークより楽観的なようにみえる。東京では「年末にかけて一段高」の見方も増えているが、ニューヨークの方は警戒感も残っている。しかも実体経済は、アメリカよりも日本の方が悪い。今週は東京市場の楽観ムードが、なお持続するかどうか。世界が注目している。

今週は18日に、11月の貿易統計と訪日外国人客数。20日に、11月の消費者物価。アメリカでは16日に、12月のNAHB住宅市場指数。17日に、11月の工業生産と住宅着工戸数。19日に、11月の中古住宅販売とカンファレンス・ボード景気先行指数。20日に、7-9月期のGDP確定値。また中国が16日に、11月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額を発表する。

       ≪16日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

大英帝国の 波高き船出 (下)

2019-12-15 08:20:37 | イギリス
◇ ノー・サイドで結束できるのか = 総選挙で圧勝したから、ジョンソン内閣は議会の運営には困らなくなるだろう。しかし問題は、スコットランドと北アイルランドの抵抗。ラグビー発祥の地ではあるけれど、ノー・サイドというわけにはいかなさそうだ。このうちスコットランドは、もともとウイスキーや機械類の輸出先としてEUへの依存度が高い。このため残留派が多く、スコットランド民族党は「独立のための住民投票」を掲げて総選挙を戦い、議席を大幅に増やしている。

スコットランドでは、14年に独立の賛否を問う住民投票が実施された。このときは独立が否定されている。ただ当時は、イギリス全体のEU離脱などは考えられていなかった。しかし今回は、離脱が現実のものとなった。おそらく住民投票が行われれば、こんどは独立派が勝つだろう。したがってジョンソン首相が、いかにしてスコットランドの住民投票機運を抑えるか。なかなか難問であることに違いはない。

北アイルランドの問題は、もっと微妙である。ジョンソン首相がEU側と合意した案によると、イギリスがEUを離脱した場合、北アイルランドとイギリス本島との間には関税などの境界線が敷かれる。これは「北アイルランドを差別する措置だ」と、現地では怒りの声が強い。また独立国アイルランドとの間は自由往来のまま。それに賛成する人たちと反対する人たちの対立。宗教問題もからんで、不穏な様相を呈している。ジョンソン首相は、その衝突を回避できるのだろうか。

イギリスは1927年に、イングランド、ウエールズ、スコットランド、それに北アイルランドが加わって、現在の連合王国となった。正式名称は「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国」である。もしイギリスのEU離脱がきっかけとなってスコットランドあるいは北アイルランドが独立すれば、大英帝国は分解することになる。               

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