経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

大英帝国の 波高き船出 (上)

2019-12-14 08:06:11 | イギリス
◇ EU との厳しい条件交渉 = イギリスの総選挙は、ジョンソン首相が率いる保守党の圧勝に終わった。多くの有権者は3年間にわたる堂々巡りの政局に嫌気がさしており、離脱一本で臨んだ保守党に決着を託したように思われる。労働党は国民投票の再実施を公約したが、これでは再び混迷状態に陥ると懸念されたようだ。もし労働党が残留一本で戦っていたら、結果は違っていたかもしれない。

この結果、イギリスが来年1月31日にEUを離脱することは確実となった。進むべき航路が決定したわけである。だが「よかったね、おめでとう」とは言いにくい。これから乗り出す海路には、暴風が吹き荒れていると予想されるからである。その最大の難関は、EUとの条件交渉。イギリスとEUは来年2月から年末までの移行準備期間のうちに、数多くの協定を結ばなければならない。

イギリス側にとっての理想は、これまで通りEUとの間で「ヒト、モノ、カネ」の行き来が自由に出来ることだ。しかしEU側としては、EUの政策に従わず分担金も支払わない国に、そんな待遇を与えるわけにはいかない。ここで甘い顔を見せれば、加盟国のなかから離脱を希望する国が出てくる可能性を生みかねない。

たとえばFTA(自由貿易協定)を結ぶにしても、ヒトの往来は自由にする。しかしモノの出入りには、関税をかける。カネの移動も全く自由にはさせないという具合に。すると品目別の関税率をどう決めるか。カネの移動をだれが監視するかなど、おそらく1000を超える項目について交渉しなければならない。その結果によってイギリス経済への影響が変化し、ロンドンの経済的地位が変動する。

                               (続きは明日)

       ≪13日の日経平均 = 上げ +598.29円≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】   

寒波襲来 : 10-12月期の景況感

2019-12-13 08:27:27 | 景気
◇ 世界経済・消費増税・悪天候が重なって = 内閣府と財務省は11日、10-12月期の法人企業景気予測調査を発表した。それによると、大企業・全産業の景況判断指数はマイナス6.2。前期のプラス1.1から一挙にマイナスへ落ち込んだ。このうち製造業はマイナス7.8、非製造業はマイナス5.3となっている。世界経済の減速で、自動車などの輸出が減ったほか、消費増税による需要の反動減、それに台風や大雨の影響が重なった。

この調査は全国1万1000社以上を対象に、11月15日時点で実施された。景況判断指数は「前期より景況が上昇した」という回答の比率から「下降した」という回答の比率を差し引いた数字。中堅企業はマイナス10.7、中小企業はマイナス16.3で、規模が小さい企業ほど景況感の悪化が激しい。

注目されるのは、来年1-3月期の見通し。大企業・全産業はプラス2.0で、急速に回復する予想となっている。非製造業がプラス2.6となる一方で、製造業もプラス0.7と再び水面上に顔を出す。ただ中堅企業はマイナス0.9、中小企業はマイナス9.6で、改善はするものの、まだ水面下の状態が続く見通しだ。

ここで消費増税や悪天候の影響が大きかった非製造業が、年明けにプラスとなるのは理解できる。しかし世界経済の低迷が大きな原因となって景況感が悪化した製造業は、どうだろう。米中経済戦争が解決に向かうと予想しているのか。それとも政府の景気対策に期待をかけているのか。やや楽観的に過ぎるという感じがする。

       ≪12日の日経平均 = 上げ +32.95円≫

       ≪13日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

イギリスは 分解の危機?

2019-12-12 08:10:26 | イギリス
◇ 運命を決めるきょうの総選挙 = イギリスではきょう12日、EU離脱の是非を問う総選挙が行われる。最近の調査では、EU離脱を掲げるジョンソン首相が率いる保守党が43%、離脱には反対で国民投票の再実施を主張する労働党が33%の支持率。年配層は保守党、若年層は労働党といった傾向が明確になってきた。特に若年層の労働党支持が急速に増えているので、結果は予断を許さないという。

考えられる結果は次の3通りだ。①保守党が過半数を制し、イギリスは来年1月31日にEUから離脱する②保守党が過半数を獲れず、現状のままの混迷が続く③労働党が勝って、国民投票が実施される。このうち③のケースは、きわめて確率が小さい。残るのは①と②だが、そのどちらの場合でも、新しく2つの大問題が発生する可能性がある。イギリスが分解するかもしれない大問題だ。

1つはスコットランド。ウイスキーや機械類の輸出で、EUへの依存度が高い。このため残留派が圧倒的に多い。イングランドとの対抗意識も強く、最大の地域政党であるスコットランド民族党は「大英帝国からの独立を目指す住民投票の実施」を掲げている。保守党が過半数を上回っても下回っても、スコットランドでは独立運動が盛んになるという見方が強い。

もう1つは北アイルランド。ジョンソン首相の離脱案では、英本国との間に関税などの境界線が敷かれる。これは「北アイルランドの切り捨てだ」という批判が急速に高まった。同時に、プロテスタント系とカトリック系の対立が再燃する危険性も指摘されている。スコットランドや北アイルランドが独立すれば、大英連合帝国は分解する。だがイングランド南部地方では「それでもEU離脱を強行すべきだ」という世論が強まっている状態だから、イギリスは歴史的な危機に立たされたと言えるだろう。

       ≪11日の日経平均 = 下げ -18.33円≫

       ≪12日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

景気対策としては 力不足 (下)

2019-12-11 08:20:16 | 景気
◇ 補正予算を隠れ蓑にする悪弊 = たとえば高速道路を造れば、鉄鋼やセメントなどの需要も増加する。だがポイント還元では、消費者が全体の支出を増やすとは限らない。だから景気に対する浮揚効果は小さくなってしまう。今回の景気対策では、こういう事業が多くなりすぎた。というのも政府自身が、景気の現状をそれほど心配していないからかもしれない。政府の公式見解である月例経済報告では、いまだに「景気は回復中」という判断を続けている。

したがって、この程度の“おせち料理”対策でも、景気は維持できると考えているのだろう。しかし輸出の停滞から、製造業は苦境に陥っている。景気動向指数は、明確に「景気の後退」を告げている。本当にこの対策で、世界不況やオリンピック後の需要減少を乗り切れるのかどうか。ここが最大の疑問点になってくる。

もう1つの問題点は、補正予算の組み方である。総額13兆2000億円の財政支出のうち、19年度補正予算の規模は4兆3000億円に達する。台風や大雨の被害を復旧するための財政支出は、不可欠である。だが今回の補正予算をみると、畜産農家への奨励金や小中学校へのパソコン配備、それにポイント還元予算の増額までが組み込まれた。

補正予算は本来、想定外の緊急事態に対処するための方策である。そこに緊急でない対策を盛り込むのは、本予算の規模をできるだけ小さく見せようとする、政府の巧妙な手口に他ならない。また国会での審議を免れるための手段ともなっているようだ。安倍内閣は毎年のように補正予算を組み、この方策を活用してきた。防衛予算を紛れ込ませたことさえある。いい加減にしてほしい。

       ≪10日の日経平均 = 下げ -20.51円≫

       ≪11日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

景気対策としては 力不足 (上)

2019-12-10 08:23:06 | 景気
◇ “おせち料理”型の財政支出 = 政府は先週5日の閣議で、新しい景気対策を決定した。国と地方の財政支出は13兆2000億円。事業規模は約26兆円。19年度補正予算と20年度本予算に分けて執行される。①災害からの復旧と復興②海外経済の下振れ対応③オリンピック後の活力維持――の3点を目標としており、政府はこれによりGDPを21年度までに1.4%引き上げる効果があると試算している。

財政難の折から、この程度の財政支出が精一杯だろう。だが事業規模が支出の2倍に増えるという推計は、どう考えても大きすぎる。事業規模というのは、民間などからの支出を当て込んだ計算。たとえば中小企業の設備投資や畜産農家の事業拡大に、補助金を出す。すると企業や畜産農家が、同額の支出をすると期待するわけだ。経済の先行き見通しが不透明な現在、そんなに甘くはないだろう。

事業規模が2倍にならなければ、GDPの押し上げ効果も小さくなる。仮に押し上げ効果が1%強だとすると、果たして海外経済の下振れやオリンピック需要の消滅に耐えられるのか、という問題が出てくるわけだ。この点については、かなり心もとない。しかも景気対策の中身をみると、規模の小さい事業の寄せ集めになっている。これでは景気浮揚力も弱い。

まとまった支出は、公共事業の6兆円ぐらい。堤防補強やダムのカサ上げ、高速道路の車線増加、成田空港の滑走路整備、無電柱化、送電線の整備などに使われる。あとは半導体技術の開発、畜産農家への奨励金、小中学校で1人1台のパソコン配備、ポイント還元予算の増額など実に細かい。感じとしては“おせち料理”だ。1品1品は美味しくても、主菜にはならない。

                              (続きは明日)

       ≪9日の日経平均 = 上げ +76.30円≫

       ≪10日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

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