ヴォーリズ記念病院見学後、ランチして、吉田悦蔵邸へやって来た。
吉田悦蔵は、ヴォーリズの近江八幡の商業学校時代の教え子であり、
片腕として、生涯ヴォーリズを支えたといわれる人物。
現在、四代目のご夫婦がこちらの邸宅を保存維持されていて、
お住まいされながら、一般公開もされている。
ご当主さん案内の元、見学させて頂いた。
玄関には、ヴォーリズらしい造り付けの収納兼ベンチが設置されている。
収納部分も引き出しが三段もあったりと、細やかな造り。
玄関ポーチのタイルは、布目で、泰山タイルだといわれていた。
まずは1階のリビングへお通し頂く。
南向きの窓からは、明るい光が入る。
うっすらとミントグリーン系の壁紙が上品。
壁は土壁だそうだが、特殊な加工で、現在では再現するのは難しいものだとか。
リビングには暖炉があり、白いタイルが貼られてた。
上部は、絵画がはめ込まれた形に。
その白いタイル部分の上中央には、みにくいアヒルの子を描いたタイルが貼られていた。どこのタイルかは不明らしいが、
アール・ヌーヴォーぽい、、外国製?!
こちらは暖炉に置かれていたもの。
庭から出てきたものだそうだけど。
モザイクで作られていて、辰砂釉がきれいな発色。
こちらは風景を描いたものだけど、アヒル同様アール・ヌーヴォーぽいライン。
暖炉の内側には、耐火煉瓦が使われていて、いくつかの会社の刻印が見られる。サンプルを使ったのでは、とのこと。
座り心地よさそうなソファ。
ソファも文化財指定されているもので、
最近修理されたという。
リビングは二間続きになっていて、
こちらのスペースは、ピアニストであるお母さまの演奏会などにも使われている。
家具調度品がとても素敵で、代々、骨董品などを集める趣味を持たれていたとのこと。
机の上にはランプのついた裁縫道具入れなども。
これらの椅子も文化財指定されたもの。
可愛い形の椅子。
そしてリビングから出られるテラスには、タイルがあしらわれた壁泉跡があった。
布目のタイルがよい味わい。
中にはモザイクタイルも。
こんなオウムのタイルは、初めて見た。
貝殻を焼き付けたようなタイルも貼られていた。
テラスの先に見えるのは、離れの茶室。
こちらは非公開。
次に和室へ。
入口は、このような扉がついていた。
こちらの茶室は、日牟禮八幡から移築された江戸中期の建物だそう。
舟板が再利用されている。
茶室では、お茶のお稽古などもされていたそうだが、
人気の教室で、手狭になった為、後ほど離れにも茶室を建てられたのだそう。
襖の引手は竹の節が使われていた。
そして、ダイニングルーム。
ミントグリーンが素敵なダイニングルームだったが、
壁の色は、何度も塗り替えられているそうで、
最初からこの色ではなかったもよう。
造り付けの戸棚は、収納力もばっちりだそう。
ダイニングを出た所にあるスペースは、コート掛けなど
収納の為のスペースに。
隅にあるのは、2階へつながる糸電話的なもの。
いろいろと工夫が凝らされているなあ。
階段を上がって2階へ。
階段途中にある洗面所兼トイレ。
アメリカ製のホーローのシンクが二つ。
コロンとした形が可愛い。
2階の書斎兼居間。
細かく彫り込まれた軽井沢彫りの家具が美しい。
書斎の奥の部屋には、おばあさまが嫁入り道具として持って来たのでは、というクローゼットが、ワンポイントに薔薇の寄木細工が施されていておしゃれだった。
部屋の片隅には、座面がメッシュな小ぶりの椅子。
あちこちにさりげなく置かれてる家具がいいなあ。
家具は全部で23点が文化財として登録されているという。
そして、寝室。
実際にこちらで寝起きされているというが、生活感が全くなく、美しい。
寝室にはこの部屋の中で、身支度が完結できるようにと
洗面台が備わっていて、その両脇には、夫婦それぞれのクローゼットが造り付けで設置されている。
グレー味を帯びたホーローの洗面台、シックで素敵。
鏡は収納を兼ねている。
歯磨きのコップ置きと、歯ブラシ立てが一体となり、用の美を感じるデザイン。
階段ホールにぶら下がる照明は、ローズがモチーフでモダンな雰囲気。
廊下の隅にぴたりと収まっていたのは、ランドリーボックスとのこと。
竹製のようだけど、なんておしゃれなランドリーボックスなんだろう。
和室の入口に使われている杉戸絵の描かれた戸は、別の武家屋敷から持ってこられたものだそう。
その扉を開けると和室
ヴォーリズ直筆の絵とサインが残されている。
3階にも客室として使われていた部屋があり、そちらには、昔の旅行鞄が並べられていた。
昔の旅行鞄、、なんと大きいのか、、歴代の旅行鞄が並べられていたが、
やはり、この一番大きなものが最も古いそう。
カバンだけでも相当な重量があるという。
3階の部屋の床だけが、建築当時のまま残されているとのこと、
何ともいえない良い艶があった。
そして、金物のドアノブ。
ヴォーリズといえば、クリスタルのドアノブだけど、
初期の頃は、この金物のドアノブをアメリカから輸入して使用していたそう。
こちらは、ヴォーリズが建てた最初期の住宅なので、残されていたようで、
後ほど衛生面や耐久性などからクリスタルに変わっていったという。
部屋の隅には、ぽっかり穴のあいた造り付けのチェストがあった。
この穴は、室内で身支度を整える為に、水を張った洗面器を置いて使用したそう。
以上、いろいろと解説をして頂きながら一通り見学させて頂いた。
実際に住まわれている中での建物が見学できるという機会はなかなかないことで、使われている家具と共に建物が生き生きしているのを感じた。
公開する側にとっても勇気がいることだと思うけど、建物が大切に保存維持されて、活かされていて更にそれを見学できる機会を与えて頂けるのは、とても有難いことだなと感じた。