最近、フレイルという言葉がちょくちょく目に止まるようになり、改めて調べてみる
ことにしました。
厚労省の定義によれば、『 フレイルとは、加齢とともに、心身の活力(例えば筋力や
認知機能等)が低下し、生活機能障害、介護状態、そして死亡などの危険性が高くなった
状態。』とありました。
日本老年医学会からの解説では、欧米で使用されている「Frailty」の日本語訳として
使用された言葉であり、これまで日本語では「虚弱」「衰弱」などが使われ ネガティブ
な印象が強かったが、むしろ、超高齢社会において、高齢者の健康長寿を実現するために
も「フレイル」という名にして、これを広く国民に周知する必要があるとされていました。
つまり、フレイルは、体がストレスに弱くなっている状態のことですが、早く介入を
すれば元に戻る可能性があるということなので、早期に認識し、対処しようということ
なんですね。
フレイルの基準(判定)について、長寿科学振興財団のHPでは、次のように定義して
いました。 以下の5項目中、3項目以上該当するとフレイル、1または2項目だけの場合は
プレフレイル(フレイルの前段階)と判断されます。
- 体重減少:意図しない年間4.5kgまたは5%以上の体重減少
- 疲れやすい:何をするのも面倒だと週に3-4日以上感じる
- 歩行速度の低下
- 握力の低下
- 身体活動量の低下
ここで、体重減少や筋力低下などの身体的な変化だけでなく、気力の低下などの精神的
な変化や社会的なものも含まれるといっています。
フレイルの概念を顕わした図を、ネット画像から引用しましたが、図の三角形で示され
ている、「健康」→「プレフレイル」→「フレイル」→「要介護」→「死」に至るプロセ
スの中間に位置していて、そして、その内容について、3つの円に示されているように
「身体的虚弱」「こころの虚弱」そして「社会性の虚弱」と広範囲にわたっていることが
分かります。
フレイルの概念
(健康長寿ネットより)
フレイルの状態になっていると、風邪をこじらせて肺炎を発症したり、怠(だる)さ
のために転んで打撲や骨折をする可能性があったり、入院したりすると環境の変化に対
応できなかったりします。 一時的に自分存在が判然としなくなったり、自分の感情を
コントロールできなくなることもあるそうです。このような事がきっかけで、フレイル
から寝たきりになってしまうことがあるといいます。
したがって、フレイルの状態にあることを、家族や医療者がいち早く気付いて対応し
て、フレイルの状態から健常に近い状態へ改善したり、要介護状態に至る可能性を減ら
したりすることが重要なんですね。
また、フレイルと同じように加齢によって、サルコぺニアと呼ばれる症状があります。
サルコペニアとは、加齢や疾患によって、筋肉量が減少することで、握力や下肢筋・体
幹筋など全身の「筋力低下が起こること」を、または、歩くスピードが遅くなる、杖や
手すりが必要になるなど、「身体機能の低下が起こること」をいう、とありました。
サルコぺニアの診断基準として、以下の3項目が揚げられていました。
1、筋肉量の低下
2、筋力の低下
3. 身体機能の低下
そのメカニズムとして、同財団の「健康長寿ネット」から下図を引用しました。
サルコぺニアのメカニズム
(健康長寿ネットより)
上図から、歩行速度が0.8m/秒以下で、握力が男性26㎏以下、女性で18㎏以下になると、
サルコぺニアの可能性があると言っています。 歩行速度は、だいたい加齢とともに
減少し、一般に下図のように表されています。
歩行速度
(ネット画像より)
80歳くらいで、だいたい0.9~1.1m/秒が平均的な歩行速度のようです。
フレイルもサルコぺニアも、加齢に伴う機能低下を意味していますが、サルコぺニア
は、筋肉量減少を主体として、筋力、身体機能の低下を主要因としているのに対して、
フレイルは、移動能力、筋力、バランス、運動処理能力、認知機能、栄養状態、持久力、
日常生活の活動性、疲労感など、広い要素が含まれているのです。
歳をとるということは、無事にその年齢まで社会に存在し、活動して、それなりに
役立ってきていることに自信と誇りに満たされている訳ですけれども、反面、身体的な
加齢による衰えは万人に等しく、その差はあれ、必ず到来する現象であります。
悲しくもあり、寂しいことですが、不可避ならば、これを素直に受容して、フレイル
やサルコぺニアにいち早く気付いて処置し、少しでも快適な時間を長く持ちたいものです。