蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

ハエが作る有機肥料  (bon)

2023-02-15 | 日々雑感、散策、旅行

 来るべき世界食糧危機に向けたスターアップについて先の拙ブログ「昆虫食」
(2023.2.9)では、昆虫を良質蛋白源として生産するとの記事でしたが、今回は、
同じ目的で農作物用有機肥料をイエバエ(学名: Musca domestica、英名:Housefly)
を媒介として、畜産糞尿から堆肥を生産するというスタートアップです。

 2/11のNHKニュースで取り上げられていましたので、ネット検索によって具体的
なその実態の概略をまとめてみました。

 もう30年近く前のことになりますが、畜産糞尿から発電および肥料生産の実証実験
を四国の徳島農協に見学に行ったことを想い出しました。私の見学目的は、「多目
的ケーブルテレビにおける活用」の実験内容の調査でした。詳細は失念しましたが、
発電事業化のためには、最低でも牛だと〇頭、豚だと〇頭必要、肥料用コンポストは
成分調査中だが有効とのことでした。

             

 話は脱線しましたが、ここでは、2016年に設立したスタートアップ、㈱ムスカ
Musca Inc.(東京都中央区)が実施する内容を取上げています。

          イエバエ
          (ネット画像より)

 

 どこにでも見かけるイエバエを、これまで50年にわたって1200世代以上、選別交配
して能力の高い種(競走馬でいえばサラブレッド)を育て、このイエバエの生態を
活用して畜産廃棄物(糞尿)から1週間という短期間で、堆肥(肥料)と飼料を生産
するというのです。

 年間8000万トンに及ぶ畜産廃棄物の処理は、堆肥化することを法律で義務付けら
れていますが、その過程で排出するメタンガスと亜酸化窒素はCO₂の25倍、100倍に
及ぶ温室効果ガスが地球温暖化への影響を与えているのですが、イエバエを使う
処理方法では、温室効果ガスの発生量を大幅に減少させることが出来るとあります。

 さらに、近年畜産農家の経営を圧迫している飼料の高騰がありますが、このイエ
バエ方法では、肥料生成と同時に飼料も生成できる優れモノなんですね。

    生成図 (SMART AGRIより)
   

 一般に、畜産や農業から出た有機廃棄物を堆肥化するのに、微生物を使うと数か月
以上かかるところを、このイエバエは、1週間で済むというのです。そして、肥料
と同時に飼料も出来上がるのです。

 ムスカ肥料             ムスカ飼料
      
                (共にSMART AGRIより)

 

 ハエは長くて3カ月生きるそうですが、卵を産み続けられる期間は一世代2週間く
らいで、この卵を畜産廃棄物に接種するのです。 一般(普通)のハエは密集した
空間で人工的に飼育すると、卵が孵化しなかったり、成長しなかったりするが、サ
ラブレッド化したイエバエは、限られた空間にまとまった数の卵を接種しても、効
率的に成育するのです。このようなサラブレッド・イエバエを作るところがポイ
ントで50年もかけてきたのですね。
 

 畜産廃棄物の中で卵が孵化し、幼虫がさなぎへと変わる過程で、幼虫は消化酵素
を出し、これが畜ふんなどを分解する役目を果たすのです。幼虫は分解された有機
物を捕食することで成長します。 そして、幼虫がさなぎになろうとするとき、ふ化
のために廃棄物の上に這い上がってきますが、それをキャッチして飼料化するのです。
 具体的には、下図のように堆肥のトレイから這い出した幼虫たちは、自ら下に落
ちてボイルされ飼料となるのです。

      イエバエが堆肥を作るトレイの写真(白いのが幼虫)
         (SMART AGRIより)

 工場内で管理の下で実施されるので大気汚染物質や温室効果ガスの回収も可能で
あり、さらに、有機廃棄物が含有する窒素分は、イエバエ幼虫が吸収してしまうため、
排泄物は低窒素有機肥料となり、農地の地下水汚染リスクも非常に少なくできる利
点がある。また、一年以上の発酵期間をかけた完熟堆肥よりも収穫量を15%も引き
上げる効果と、栽培植物に対して抗菌作用をもたらすことも確認されたとあります。

 また、飼料の方も、通常の餌に混ぜると40%の増体効果が確認され、家畜にとって
も餌の魅力が高く通常の餌に混ぜるだけで5%の誘引効果(餌摂取効果)が得られた
とあります。加えて、この家畜飼料を摂取したマダイはエドワジエラ病に対する耐性
が上がり病気にも強くなることがわかったそうです。

               

 ㈱ムスカは、2020年に特許を取得し、1週間で有機廃棄物を飼料と肥料に分解する
超効率バイオマスリサイクルシステムを開発。生成される飼料は、魚類による実験
により耐病性付与及び増体効果が、肥料については、主要な植物病原菌に対する抗菌
作用が確認されており、価値の低い廃棄物から高い機能性を持つ飼料及び肥料を効
率的に生成するこのシステムをいち早く商業化して、究極の持続可能な循環型社会
の実現を目指したい・・とされていました。

 

 

バイオリンじゃありませんが・・

Zigeunerweisen Op.20 guitar duel The Commander-In-Chief feat. Thomas Valeur (2013)

 

 

 

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