蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

古事記から(4)  (bon)

2015-05-21 | 日々雑感、散策、旅行

大国主命(オオクニヌシノミコト)

 スサノオノミコトの六世の孫にあたる子として、オオクニヌシノミコトが生まれるのですが、
またの名をオホナムヂノ神といい、この他計五つの名を持っています。
そして、オホナムヂには大勢の兄弟がいました。

 因幡の白ウサギ

 さて、オオクニヌシのたくさんの兄弟の神さまたちは、この国をオオクニヌシに譲ってしまいました。
その訳は、この神さま(八十神)
たちはみな、イナバ(因幡=鳥取県東部)に住む美しいと評判の
ヤガミヒメに求婚しよう
という下心があって、一緒に連れ立ってイナバに出かけた時に、この神さ
たちは、オホナムヂ(オオクニヌシ)に荷物の袋を背負わせ、従者のように
して連れて行きました。
 やがて、気多の岬にやって来たとき、そこに毛の全くない裸のウサギがふせって泣いていました。
これを見た大勢の神々は、ウサギに言うには、「お前が
その体を治すには、この潮水を浴びて、
風に吹かれて、高い山の上で寝ておれ。」
と教えました。それでウサギは、神々の教えたとおりにして、
山の上に寝ていると、海の潮
水が乾くにつれ、吹く風が皮膚に刺ささるように痛み出し、泣いていた
ところ、
神々の最後についてきたオホナムジがそのウサギを見て、「なぜ、おまえは、泣き伏して
いるのか。」と尋ねると、「はい、わたしは、隠岐の島に住
んでいて、このイナバの地に渡って来たい
と思いましたが、渡る方法がなかっ
たので、海のサメをだまして、こう言ったのです。『私とおまえと
比べて、ど
ちらの仲間が多いかを数えてみたい。で、おまえは、自分の仲間をすべて連れて来て、
この島から気多の岬まで、一列に並ばせてみてくれ。そしたら、私が
その上を踏んで走りながら数を
数えよう。こうして、どちらの仲間が多いかを
知ることにしよう。』 
こうして、サメたちが騙されて一列に並んで伏してい
る時、私はその上を数えながら走って渡って来て、
今や地上に降りようとする
時、うかつにもこう言ってしまったのです。『へっ、へ。お前らは私に
だまさ
れたんだよ。』 言い終わるや否や、一番端に伏していたサメが、私を捉えて私の毛をすっかり
剥いでしまいました。それで困って泣いていたところ、先ほ
ど通りかかった大勢の神々が、「潮水を浴びて、風邪に吹かれて寝ていろ」と教えてくださったので、その通りにしていたら、
わたしの体は全身傷だらけに
なってしまったのです。」
そこで、オホナムジは、そのウサギにこう教えました。「今すぐに、この河口に行って、真水で体を
洗いなさい。そして、その河口
に生えている蒲の黄色い花粉をまき散らして、その上に寝転ろがれば、
お前の
体は、もとの膚のようにきっと治るだろう。」
こうして、ウサギは教えの通りにしたところ、すっかり元どおりに治りました。
これが「因幡の白兎」です。今もこのウサギを「ウサギ神」とも言ってい
ます。

         (ネット画像)
 

 そして、このウサギは、オホナムジにいいました。「あの大勢の神々は、きっとヤガミヒメを娶る
ことはできないでしょう。従者のように袋を背負ってい
ますが、あなた様こそヤガミヒメを娶られるで
しょう。」 
(知恵のある陸の動物が、愚かな水中の動物をだまし、川を渡ることに成功するという筋の話は、
インドネシアや東インド諸島にもあるという。これらの話が伝わってきたと考えられる。また、
このくだりは、オホナムジが医療の神であることを語ってい
る。)

  八十神の迫害

 そこで、ヤガミヒメは、大勢の神々(八十神)に答えて、「わたしは、あなたたちの言う事は聞き
ません。オホナムジさまと結婚します。」といいました。これを聞いた八
十神たちは、怒って、
オホナムジを殺そうと相談をしました。そして、伯耆の国の手間の
山の麓へやってきた時、オホナムジに
向かって、「この山に赤いイノシシがいる。これをわ
れわれが追い出すから、お前は下で待ち受けて
これを捕まえなさい。もし、失敗したら必
ずお前の命をもらうぞ。」と言い、イノシシに似た大石を
まっ赤に焼いて、転がして落とし
たのです。オホナムジは、これを捕えようとして、無惨にもその
焼石に焼きつかれて死ん
でしまいました。
これを知って、オホナムジの御母神は嘆き悲しみ、高天原に昇って、カミムスビノミコトに救いを
乞いました。カミムスビノミコトは、オオクニシを生き返らせるために、キサ
ガイヒメとウムガイヒメを
遣わせました。キサガイヒメは、貝殻を削り、その粉を集め、
ウムガイヒメがそれを待ち受けて
蛤の汁で溶いた母の母乳のような乳汁を、やさしく塗っ
たところ、オホナムジは立派な青年に復活した
のでした。
 これを見ていた、八十神たちは、またオホナムジをだまして山へ連れ込み、大木を切り倒して、
その間にクサビの矢を打って、その中にオホナムジを入らせるや否や、そのクサビの矢を引き抜いて、
打ち殺してしまいました。それで、また御母神は、泣きながらオホナムジを探し求めて、ようやく
見出すことが出来、ただちにその木を裂いて助け出し再び蘇らせわが子オホナムジに言いました。
「あなたは、ここにいたら、ついには八十神たちによって滅ぼされてしまうでしょう。」 そして、
紀伊の国のオオヤビコノカミのところへ避難させたのでした。ところが八十神たちが、なおも追いかけて
来て、弓に矢をつがえてオホナムジを引き渡せと求めた時、オオヤビコノカミは、木の又のところから
逃がして、言いました。「あなたのご先祖のスサノオがいる根の堅州国へ行きなさい。必ずや、
その大神(スサノオノ)が、あなたにいい知恵を授けてくれるでしょう。」と。

 根の国訪問  (オホナムジノ命から大国主命へ)

 こうして、オホナムジは、仰せに従って、スサノオノのところへやってきました。そこで、
その娘のスセリビメと出会い、二人は、男女の交わりをして、結婚しました。スセリビメは、帰って
父のスサノオに、「たいそう立派な神様がおいでになりました。」といいました。しかし、スサノオは、
一目見て、「これは、アシハラシコオノミコト(オホナムジの別名)だな。」と言い、ただちに
宮殿の中に呼び入れて、蛇がいる部屋に寝させられたのでした。それで、スセリビメは、蛇よけの
魔力がある布を、夫のオホナムジに授けて、「その蛇たちが、あなたを噛もうとしたら、その布を
三回振れば、逃げ出すでしょう。」といった。 そこで、オホナムジは、妻のいう通りにすると、
蛇は鎮まりゆっくりと寝て その部屋を出ました。しかし、また翌日の夜には、ムカデと蜂のいる
部屋に入れられました。そこで、スセリビメは、今度もムカデと蜂よけの布を授けて、前のように
教えました。それで、無事にそこから出ることが出来ました。 スサノオは、今度は、音の鳴りひびく
矢(鏑矢)を広い野原の中に放ち、それを探してこいと命令しました。 オホナムジが、野原に入ると、
その回りに火を放ち野原を周囲から焼いたのです。 どこから逃げ出せばいいのか、オホナムジが
迷っていると、一匹の鼠が現れて 「内はほらほら、外はすぶすぶ」(外から見ると穴はすぼまってる
けど、中はほら穴だよ。)と教えました。そう鼠が言うので、そこを踏んでみると、地面に穴が空いて
落ちてしまいましたが、そのままその穴に隠れていたので、火は上を通り過ぎていきました。また、
その鼠は、鏑矢をくわえて、オホナムジに差し出しました。その矢の羽は、鼠の子どもたちがみな
食いちぎっていました。

 一方、妻のスセリビメは、オホナムジが死んでしまったと思い込み、葬式の道具を持ってきて、
泣きながら現れ、父の大神も、もう死んだはずだと思って、その野原に出てきましたが、なんと
オホナムジは無事な姿であらわれ、その矢をスサノオに差し出したのでした。 スサノオは、今度は、
宮殿に連れて入り、大きな部屋に呼び入れ、その頭の虱を取ることを命じました。しかし、その頭には、
ムカデがたくさんいました。妻のスセリビメは、椋の木の実と赤い土を夫に授けました。そこで、
その椋の実を噛み砕き、赤土も口に含んで一緒につばを吐き出しました。それを見たスサノオは、
ムカデを噛み砕いてツバを吐いているものと思い込み、心の中でかわいいやつだと思って、寝てしまい
ました。

 そこでオホナムジは、スサノオの髪をつかんで、その部屋の垂木に結び付けて、大きな岩で、
部屋の出口を塞ぎ、妻のスセリビメを背負い、スサノオの宝物である大刀と弓矢と美しい琴を持って
逃げ出そうとしましたが、その琴が木に触れてしまったため、地面が鳴り響くような大きな音が出て
しまいました。眠っていたスサノオは、その音にハッと目をさまし、その部屋ごと引き倒してしまい
ましたが、垂木に結ばれた髪の毛をほどいている間に、オホナムジとその妻は遠くまで逃げのびたのです。 
しかし、スサノオは、黄泉比良坂まで二人の後を追って来て、はるか遠くにいるオホナムジに向かって、
「お前の持っている、その太刀と弓矢で、おまえの兄弟たちを山や河に追い払い、お前が大国主神となり、
また現し国魂の神(オオニヌシの別名)となり、わしの娘スセリビメを正妻とし、御埼山(島根県
出雲市の山)のふもとに宮柱を深く掘り立て、天高く千木を聳やかした宮殿に住め!こやつよ!」と
言いました。

 そこで、その太刀と弓で、兄弟の八十神たちを追い払い、この出雲の国を作られたのです。 
 さて、あのヤガミヒメは、かつての約束通りに、大国主神と結婚されて連れてこられました。
しかし、正妻のスセリビメを恐れて、自分の生んだ子を木の又に差し挟んだまま、因幡の国に帰って
しまいました。そこで、この子を名付けて、キノマタノカミまたは、ミイノカミ(御井の神)といいます。

八千矛神の妻問い物語

 その後、八千矛神(ヤチホコカミ=大国主命)は、越の国に住むヌナカワヒメを第二の妻にしようと
して出かけて、ヌナカワヒメの家に行き、次のような恋の歌をよみました。

「八千矛神の命は 八島国 妻枕きかねて 遠々し こしの国に かしこし女を ありと聞かして 
麗(くわ)し女を ありと聞こして さ婚(よば)ひに あり通はせ 太刀が緒も いまだとかずて 
襲(おすひ)をも いまだ解かねば おとめの 寝すや板戸を 押そぶらひ わが立たせれば 
引こづらひ わが立たせれば 青山に ヌエは鳴きぬ さ野つ鳥 雉はとよむ 庭つ鳥 鶏は鳴く 
うれたくも 鳴くなる鳥か この鳥も 打ち止めこせぬ いしたふや 天馳使(あまはせづかい) 
事の 語りごとも こをば」

 ヤチホコノカミは、日本国中で思わしい妻を娶ることが出来なくて、遠い遠い越の国に 賢明な
女性がいると聞き、美しい女性がいると聞き、”よばい”(結婚を申し込むために夜に女性の家へ行く
こと)をしに通い続け、 太刀の緒もまだ解かず、上着もまだ脱がないまま ヒメの寝ている窓の板戸を
 押しゆさぶって、立ちすくんでいると、しきりに引きゆさぶって立っていると、青山ではもう鵺
(ぬえ)が鳴いた。野の雉はけたたましく鳴き、庭の鶏は鳴いて夜明けを告げている。 ああ、
いまいましい鳴く鳥よ お願いだから鳴くのをやめさせてくれ、空を飛ぶ使いの鳥よ。
・・・これを語り言としてお伝えします。
と、歌われたとき、ヌナカワヒメは、まだ戸を開けずに、家の中からこう歌で答えました。

「八千矛の 神の命 ぬえ草の 女にしあれば わが心 浦渚の鳥ぞ 今こそは 我鳥にあらめ 
後は 汝鳥にあらむを 命は な死せたまひそ  いしたふや 天馳使 事の語りごとも こをば

 青山に 日が隠らば ぬばたまの 夜は出でなむ 朝日の 笑み栄えきて たくづのの 白き腕
(ただむき) 沫雪の 若やる胸を そだだき たたきまながり 真玉手(またまで) 玉手さしまき
 股(もも)長に 寝(い)は宿(な)さむを あやに な恋ひ聞こし 八千矛の 神の命 
 事の語りごとも こをば 」


 八千矛の神様よ 私は、なよやかな女のことですから、 わたしの心は、浦洲にいる水鳥のように、
いつも夫を慕い求めています。 ただ今は、自分のことしか考えていない鳥でも、やがては、あなたの
お心のままになるでしょうから、鳥どもの命を殺さないでください。空を飛びかける使いの鳥よ。
・・・これを語り言としてお伝えします。

 青山の向こうに日が沈んだら、夜にはきっと出て、あなたをお迎えしましょう。その時、朝日が輝く
ように、明るい笑みを浮かべて、あなたがおいでになり、白い私の腕や、雪のように白くて柔らかな
若々しい乳房を そっと愛撫したり絡み合ったりして、玉のように美しい私の手を手枕にして 
脚を長々とのばして お休みになることでしょうから、あまりひどく恋い焦がれなさいますな、
八千矛の神の命よ。 ・・・これを語り言としてお伝えします。

と歌い、その夜は会わないで、翌晩お会いになり、結婚しました。

 スセリビメのヤキモチ

 八千矛の正妻のスセリビメは、たいそう嫉妬深い神でした。そのため夫の八千矛は、心配して、
出雲から大和の国に出発しようとして、旅支度をしていた時に、片手を馬の鞍にかけ、片足を鐙
(あぶみ)に踏み入れて、歌った歌は、

「ぬばたまの 黒きみ衣(け)しを まつぶさに とり装ひ 沖つ鳥 胸見るとき 羽たたぎも 
これはふさわず 辺つ波 そに脱ぎ棄て そに鳥の 青きみ衣しを まつぶさに 
とり装い 沖つ鳥
 胸見るとき 羽たたぎも こもふさわず 辺つ波 そに脱ぎ棄て
 山県に まきし あたねつき 
染木が汁に 染衣を まつぶさに とり装い 沖つ鳥 胸見るとき 羽たたぎも こしよろし
 いとこやの 妹の命 むら鳥の わが群れ往なば 引け鳥の わが引け往なば 泣かじとは、
汝は言ふとも 山跡の 一本すすき うなかぶし 汝が泣かさまく 朝雨の さ霧に立たむぞ 
若草の 妻の命 事の語り言も こをば」

 黒い衣装を丁寧に着込んで、沖の水鳥のように胸元を見ると、鳥が羽ばたくように、袖を上げ下げ
してみると、これは似合わないので、岸に寄せる波が引くように後ろに脱ぎ棄て、今度は、カワセミの
羽のように青い衣装を丁寧に着込んで、 沖の水鳥のように胸元を見る時、羽ばたくように袖を上げ
下げしてみると、これも似合わない。岸に寄せる波が引くように後ろに脱ぎ棄て、 山畑に蒔いた
「あかね草」を臼で挽き、その汁で染めた藍色の衣を丁寧に着込んで、沖の水鳥のように胸元を見ると、
鳥が羽ばたくように袖を上げ下げしてみると、これはよく似合う。 いとしい妻よ、群鳥が飛び立つ
ように、私が大勢の供人を連れて行けば、引かれて行く鳥のように、私が大勢の供人を連れて行けば 
あなたは泣かないと強がって言ってはいるが、きっと山のふもとの一本の薄のように、うなだれて
あなたは泣くことだろう。そのあなたの嘆きは、朝の雨が霧となって立ち込めるように、嘆きの霧が
中に立ち込めるであろうよ。いとしい妻の君よ。 ・・・これを語り言としてお伝えします。

 そこで、スセリビメは、大きな酒杯を取って、夫の神の側に立ち寄り、杯をささげて歌った歌は、

「八千矛の 神の命や 吾が 大国主 汝こそは 男にいませば うち廻る 島のさきざき かき廻る
 磯のさきおちず 若草の 妻持たせらめ 吾はもよ 女にしあれば 汝を除て 男はなし
 汝を除て 夫はなし 綾垣の ふはやが下に むし衾 柔が下に  たく衾 さやぐが下に 
沫雪の 若やる胸を たくづのの 白き腕(ただむき) そだたき たたきまながり 真玉手
(またまで) 玉手さし枕き もも長に 寝をしなせ 豊御酒(とよみき) たてまつらせ」  

 八千矛の神様 わが大国主神よ、あなたは男ですから、うち廻る島の岬々に、うち廻る磯の崎ごとに、
どこにも美しい妻を持っているのでしょうが、わたしは女性の身ですから、あなた以外に夫はおり
せん。 綾垣の帳がふわふわと垂れている下で、絹の夜具の柔らかな下で、コウゾで作った夜具が 
こすれてさやさやと鳴る下で 沫雪のように白い若やかなわたしの乳房を、コウゾの綱のように白い
腕で愛撫しからませ合って、私の美しい手を手枕として、脚を長々と伸ばして おやすみください。
さあ、
おいしい御酒を 召し上がれ。

 こう歌って、お二人はただちに杯を取りかわし、夫婦の契りを固め、互いに首に手をかけて、
今日まで睦まじく鎮座しておられる。以上の五首を神語りという。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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