人口の変化とその社会経済等の要因との関係を研究する人口学についての解説書。
かつては人口爆発が心配されていたのが嘘のように、今や世界人口の43%を占める国・地域で出生率は人口置換え水準を下回り少子化が進行しているそうです(109~110頁)。
他産他死社会から少産少死社会への転換は、ヨーロッパでは産業革命により途上国では衛生教育の普及によりまず死亡率が下がるという形で進んだそうです(116~117頁)。乳幼児死亡率が下がることでたくさん産む必要がなくなり、長生きすることになりよき計画的な人生を考えるようになって出産をコントロールする(120~121頁)って、わかりやすいけど、人間ってそんなものなんでしょうか。
戦後の少子化の原因についてはいろいろ論争中だそうですが、伝統的な家族志向の制度を維持して男女役割分業制が残っている国ほど出生率が低い、ヨーロッパで出生率が高いのは自由主義的・個人主義的志向を持つ国で、出生率が低いのは全体主義を経験した国、1980年代以降世界で非常に出生率の低い国は日独伊三国同盟の国で現在の低出生率は女性のリベンジ(これは小話)なんて話(203~207頁)は、考えさせられます。東アジアでは受験競争の厳しさが教育費負担の増大等から出生率低下を招いているのではという著者の仮説(207~210頁)も興味深いところです。
OECDの研究で、日本については育児費用の負担を減らすために減税や児童手当の増額をするとか正規の保育施設を増加するという施策で合計特殊出生率を2.0くらいまで回復できる可能性があるという指摘がされている(258~260頁)ことは初めて知りました。是非ともそういう施策はケチらないで実行して欲しい。

河野稠果 中公新書 2007年8月25日発行
かつては人口爆発が心配されていたのが嘘のように、今や世界人口の43%を占める国・地域で出生率は人口置換え水準を下回り少子化が進行しているそうです(109~110頁)。
他産他死社会から少産少死社会への転換は、ヨーロッパでは産業革命により途上国では衛生教育の普及によりまず死亡率が下がるという形で進んだそうです(116~117頁)。乳幼児死亡率が下がることでたくさん産む必要がなくなり、長生きすることになりよき計画的な人生を考えるようになって出産をコントロールする(120~121頁)って、わかりやすいけど、人間ってそんなものなんでしょうか。
戦後の少子化の原因についてはいろいろ論争中だそうですが、伝統的な家族志向の制度を維持して男女役割分業制が残っている国ほど出生率が低い、ヨーロッパで出生率が高いのは自由主義的・個人主義的志向を持つ国で、出生率が低いのは全体主義を経験した国、1980年代以降世界で非常に出生率の低い国は日独伊三国同盟の国で現在の低出生率は女性のリベンジ(これは小話)なんて話(203~207頁)は、考えさせられます。東アジアでは受験競争の厳しさが教育費負担の増大等から出生率低下を招いているのではという著者の仮説(207~210頁)も興味深いところです。
OECDの研究で、日本については育児費用の負担を減らすために減税や児童手当の増額をするとか正規の保育施設を増加するという施策で合計特殊出生率を2.0くらいまで回復できる可能性があるという指摘がされている(258~260頁)ことは初めて知りました。是非ともそういう施策はケチらないで実行して欲しい。

河野稠果 中公新書 2007年8月25日発行