伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

司法通訳だけが知っている日本の中国人社会

2007-12-12 08:12:07 | ノンフィクション
 研修生・実習生という形で実質的には低賃金単純労働者として来日している中国人たちの実情と送り出し側の中国の実情などをレポートした本。
 著者は日本人ルポライターで、司法通訳もしている中国人組合活動家の話を聞いてそれをまとめたもの。経験談の多くは、司法通訳としてのものではなく、中国人労働者の日本での受け入れ組織としての組合を作りそこでの活動によるもの。主人公とも言える中国人の立場は、基本的には中国人労働者の権利を守るための代理人・活動家ですが、日本人経営者側寄りの行動もしてみたり、ちょっと微妙。司法通訳としての経験談も、事件について独自の立場で調べたり説得したり、通訳としての仕事をかなりはみ出しています。司法通訳が本業ではなくて、組合活動家がたまたま司法通訳もしているという感じだからなんでしょうね。まあ、中国語でしゃべってたら被疑者・被告人と何話してるのかわからないんですが、本当に日本語訳しない部分でこういう話してるとしたら、法律家業界としてみれば困りものです。
 都市と農村で激しい格差のある中国人社会、研修生・実習生から中間搾取する違法・合法の送り出し組織、労働基準法も最低賃金法も無視して低賃金長時間労働させる日本の経営者たち、夢と日本の現実の落差に失踪したり犯罪組織に飲み込まれていく来日中国人たち。やるせない現実が綴られています。
 ちょっとストーリーというか本の流れはごちゃごちゃしている感じですが、一つ一つのエピソードは興味深く読めると思います。


森田靖郎 祥伝社新書 2007年11月5日発行
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