市場統合、単一通貨を始め国境を越えた統合をめざす歴史的実験のさなかのEUについて、統合や意思決定の実情、歴史等を解説した本。
各国の利害と国民感情を抱えながらEUが合意を作っていく枠組みには、国際社会のあり方を考える上でも、通常の組織論としても大変興味を持ちます。合意形成の枠組み自体が、当初は理論でつくられ、交渉での妥協により種々の段階・例外が作られていく様は、理論的にはスッキリしませんが、実務的には納得できる、そういう世界です。理論を貫くとわかりやすいけど、きっと合意できずに、連合自体が崩壊していくのでしょう。
拡大の過程で、加盟の条件として民主主義、法の支配、人権を含むコペンハーゲン基準の達成を求め、加盟が認められない場合にも同様の基準を要求しつつ欧州経済領域協定(EEA)等を通じて域内市場への参加を認める等の交渉を進め、それによって周辺の国を同一の価値を持つ国に変えていくというEUの戦略には、平和の確保のために軍事ではなく経済・外交を優先する着実さ・したたかさを感じます。こういうことが大人の政治だと思うんです。
共産主義が崩壊し、北欧の高福祉社会も今ひとつ元気がない状況で、自由競争・弱肉強食に突き進むアメリカとそれに追随する日本という色あせた国際情勢の下で、ねばり強く人権の尊重を主張し続けるEUの姿勢には共感を覚えます。もちろん、うまくいかない現実も多々ありますが。
欧州議会の事務局の所在地が「ルクセンブルク(ドイツ)」となっている(26頁)のは、たぶん単純なミスでしょう(ルクセンブルクはドイツの植民地と主張したい訳じゃないでしょう)が、岩波新書にしてはお粗末。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kaeru_en1.gif)
庄司克宏 岩波新書 2007年10月19日発行
各国の利害と国民感情を抱えながらEUが合意を作っていく枠組みには、国際社会のあり方を考える上でも、通常の組織論としても大変興味を持ちます。合意形成の枠組み自体が、当初は理論でつくられ、交渉での妥協により種々の段階・例外が作られていく様は、理論的にはスッキリしませんが、実務的には納得できる、そういう世界です。理論を貫くとわかりやすいけど、きっと合意できずに、連合自体が崩壊していくのでしょう。
拡大の過程で、加盟の条件として民主主義、法の支配、人権を含むコペンハーゲン基準の達成を求め、加盟が認められない場合にも同様の基準を要求しつつ欧州経済領域協定(EEA)等を通じて域内市場への参加を認める等の交渉を進め、それによって周辺の国を同一の価値を持つ国に変えていくというEUの戦略には、平和の確保のために軍事ではなく経済・外交を優先する着実さ・したたかさを感じます。こういうことが大人の政治だと思うんです。
共産主義が崩壊し、北欧の高福祉社会も今ひとつ元気がない状況で、自由競争・弱肉強食に突き進むアメリカとそれに追随する日本という色あせた国際情勢の下で、ねばり強く人権の尊重を主張し続けるEUの姿勢には共感を覚えます。もちろん、うまくいかない現実も多々ありますが。
欧州議会の事務局の所在地が「ルクセンブルク(ドイツ)」となっている(26頁)のは、たぶん単純なミスでしょう(ルクセンブルクはドイツの植民地と主張したい訳じゃないでしょう)が、岩波新書にしてはお粗末。
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庄司克宏 岩波新書 2007年10月19日発行