次々と人を殺して逃亡生活を続けるアンヘル・アレグリアが、チリの最南端の荒野に住む夫婦を殺して居座り、アンヘルに両親を殺された少年パオロ・ポロヴェルドと暮らすうちに少年に愛着を持ち愛情を感じつつ、変わってゆく現在の自分と自分が背負っている過去との葛藤、愛するパオロのために何が最善かという思いに悩み、他方パオロも現在を見つめながら成長していくという小説。
前半が殺人者アンヘルの視点から、後半がパオロの視点から書かれています。
アンヘルのパオロへの愛の目覚めが、初期にはパオロの周囲に現れる者への嫉妬で歪み、終盤ではパオロへの愛を素直に示しつつさらにパオロのために身を引くという試みが悲劇的な結果を生み、皮肉っぽく描かれています。殺人者は人を愛さない方がいいのか?作者の考えがそうでないことはわかりますが、では過去を気にせずに素直に愛を語ればよいのか?そうもいえないように思えます。そのあたり、どうもほろ苦い感じ。
アンヘルに両親を殺されながら、生きて行くにはアンヘルを選ぶしかなかったパオロが、アンヘルの屈折した愛を感じ自らもアンヘルに愛情を感じていくという流れには、哀感を持ちます。殺人犯でも自分には優しかった、それはそうなのでしょうけど。最果ての農場育ちのパオロの現実に適応してゆく素朴でしぶとい生き方には共感しますが。
ちょっと一筋縄ではいかない少し屈折した絆と人間愛のお話です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kaeru_en3.gif)
原題:les Larmes de l’Assassin
アン=ロール・ボンドゥ 訳:伏見操
小峰書店 2008年12月24日発行 (原書は2003年)
前半が殺人者アンヘルの視点から、後半がパオロの視点から書かれています。
アンヘルのパオロへの愛の目覚めが、初期にはパオロの周囲に現れる者への嫉妬で歪み、終盤ではパオロへの愛を素直に示しつつさらにパオロのために身を引くという試みが悲劇的な結果を生み、皮肉っぽく描かれています。殺人者は人を愛さない方がいいのか?作者の考えがそうでないことはわかりますが、では過去を気にせずに素直に愛を語ればよいのか?そうもいえないように思えます。そのあたり、どうもほろ苦い感じ。
アンヘルに両親を殺されながら、生きて行くにはアンヘルを選ぶしかなかったパオロが、アンヘルの屈折した愛を感じ自らもアンヘルに愛情を感じていくという流れには、哀感を持ちます。殺人犯でも自分には優しかった、それはそうなのでしょうけど。最果ての農場育ちのパオロの現実に適応してゆく素朴でしぶとい生き方には共感しますが。
ちょっと一筋縄ではいかない少し屈折した絆と人間愛のお話です。
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原題:les Larmes de l’Assassin
アン=ロール・ボンドゥ 訳:伏見操
小峰書店 2008年12月24日発行 (原書は2003年)