伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

世界の果てまで

2009-05-10 21:52:52 | 小説
 日中戦争中の上海を舞台に、人間嫌いのイギリス人富豪が死期を前にして全財産を阿片に換えてビリヤードの名人の美女4人を競わせて1位の者に全財産を与え、2位の者は苦力の娼婦とし、3位の者は四肢を切断して見せ物とし、4位の者はその場で射殺するというビリヤード競技を実施し、日本軍と中国共産党とロマノフ王家から期待を背負った3人の女性が派遣されイギリス人富豪の娘が父への反感から参加するという枠組みで、関係者の愛憎を描いた小説。
 戦時中にしてしまえば何でもありと考えているのかも知れませんが、それにしても設定がいかにも荒唐無稽で、そこがどうにもお話に乗り切れません。女が一人で生きて行くには娼婦になるしかないという条件を強調することで、薄幸の美女たちの運命やいかにというドラマにしやすい舞台作りを考えているのがいかにも目につきます。主人公の女性の立場での語りなのに、その女性の性的な運命に向くスケベオヤジ的な視点で話が展開する感じがします。戦争中の話だというのに、生活には困っていないか、困っていたはずがうまく乗り切れて余裕のある美女たちが子どもの頃から手慰みに覚えたビリヤードの腕を持ち、ちょっとしたことから命を賭けたビリヤードゲームをやるハメになり、しかしその運命を簡単に受け入れるというストーリー展開も現実感に欠けます。
 無理無理創り上げた舞台の中での極限状況での人間間の愛憎の部分が読みどころというところでしょうか。


鎌田敏夫 角川春樹事務所 2008年12月28日発行
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