伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

タラ・ダンカン6 マジスターの罠 上下

2009-10-06 22:25:34 | 物語・ファンタジー・SF

 魔術が支配する「別世界」の人間の国「オモワ帝国」の世継ぎの14歳の少女タラ・ダンカンが、様々な敵対勢力の陰謀や事件に巻き込まれながら冒険するファンタジー。作者が10巻まで書くと宣言しているシリーズの第6巻。
 基本的に小学校高学年から中高生までの女子を読者層としていると思いますが、ここにきて、奴隷制との闘いをテーマに盛り込み始め、ほんの少しメッセージ性を出してきました。ハリー・ポッターが巻を追うにつれて反ファシズムのメッセージを濃厚にしていったことを意識しているのでしょうけど、それはそれとして評価したいと思います。
 また、リスベス女帝(タラの伯母)とタラのしたたかさというか帝王学・マキャベリズム色も強まってきて、キャラ設定としても楽しめます。女の子の主人公をサメにたとえる(下巻123ページ)ファンタジーなんて、ちょっとないと思いますよ。ただ、日本語版のイラストは本文を無視していつまでも小学生ふうのロリータ顔ですが。
 しかし、1巻からずっとそうなのですが、展開の速さというか敵味方の入れ替わりというか登場人物の言動のブレが大きいのには、ついて行きにくい。この巻でタラの最大の敵のはずのマジスターがタラに語る話は、敵味方が単純ではないことを意味し、重層的な展開を期待させもしますが、本当にきちんと筋立てて最後には、あぁあのときの言動にはこういう裏があったのかと納得させてくれるのか、どうも心配が残ります。どことなく読者の予想を裏切り驚かせることに重きが置かれ場当たり的に展開しているような気がしてならないのですが。
 タラの15歳の誕生日(下巻76ページ)前に15歳のタラと書いてみたり(上巻314ページ)、地球の成層圏は1万2000キロメートル上空と書いてみたり(上巻298ページ:1万2000メートルの間違いですよね。3桁違います)、ケアレスミスが目につくのも気になります。社会派色を出して読者層を拡げる意欲があるならもう少し丁寧に作り込んで欲しいなと思います。


原題:TARA DUNCAN ,DANS LE PIEGE DE MAGISTER
ソフィー・オドゥワン=マミコニアン 訳:山本知子、加藤かおり
メディアファクトリー 2009年7月31日発行 (原書は2008年)
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