伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

ズームーデイズ

2009-10-26 23:10:04 | 小説
 父親が高名な作家で自分も小説家だが1冊単行本を出したきり書けないなど限りなく作者自身を示唆する設定の主人公(あだなの「アームー」だって「あ」の付く名前を想定してますしね)が、8歳年下の比較的純真な青年と同棲して弄びながら、自分は仕事もせずに高齢の母親に寄生してグータラ過ごしながら、妻子ある男との不倫を続けるという、身勝手ダメ女だった日々を、どこか甘い思いを込めつつ回想する小説。
 あれこれ言い訳をしつつも自分が仕事をしないためにすることもなく時間をもてあました日々、明らかに性欲処理のためだけに都合のいい女としてキープしている不倫男に勝手な夢想をして呼ばれればいそいそと出かける日々、文句をいわずに付き合う青年「ズームー」に不満をつのらせ無意味な喧嘩を仕掛ける日々、主人公のそういう生活を、それを許容してきたズームーが原因であるかのように「ズームーデイズ」などと名付ける感性には、ちょっと呆れてしまいます。自分に都合の悪いというか客観的には人聞きの悪い過去が、いつか美化されて甘いあるいは甘酸っぱい想い出に変えられてしまう、そういうことは、まぁありがちなことではありますが。
 34歳の設定なのが、突然「大リーグボール養成ギプス」なんていうのが出てきてビックリ。慌てて作者のプロフィールを見たら私と1歳違い。同じ世代なのねと思って読むとさらに考え込まされます。


井上荒野 小学館文庫 2008年11月12日発行(単行本は2007年)
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長井健司を覚えていますか

2009-10-26 22:18:37 | ノンフィクション
 2007年9月27日、民衆のデモに対するミャンマー軍の発砲を撮影していて銃殺された日本人ジャーナリスト長井健司のジャーナリストとしての足跡を辿ったノンフィクション。
 バラエティ番組の制作会社のアシスタント・ディレクターからテレビ業界でのキャリアを開始した長井健司は、ニュースステーションの取材記者、テレビ東京の報道番組の特集担当ディレクターを経て、フリージャーナリストになり、戦場へと向かうことになります。JCOの臨界事故でもまだ臨界が続く現場に向かおうとしたように現場にこだわる長井は、タイのエイズ孤児院やアフガン、パレスチナ、イラクを経て、タイに流れてきたミャンマーからの難民の話を聞いてミャンマー取材へと向かいます。
 この本では、報道へのこだわりというか頑固さ、バラエティ番組から始めたためにカメラを固定して撮影するスタイルや住民の目線・「地を這うような取材」へのこだわりなどが、長井の特徴として指摘され、それが危険を高めたと示唆されています。
 戦争や進行中の事件を取材するジャーナリストが曝される危険とその中でのジャーナリストの志といったものを、改めて考えさせられます。


明石昇二郎 集英社 2009年9月9日発行
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