死刑執行の標準的な手順をドキュメンタリーふうに綴る第1部と、死刑判決があった5つの事件の関係者への取材に基づく事件と裁判の概要とその後の加害者の状況や被害者・遺族の状況を語る第2部からなる死刑をめぐる関係者の思いをレポートした本。
死刑執行に関わる人々の苦悩や、反省を重ね遺族から恩赦請求まで出されながら死刑執行された死刑囚や、無罪を主張し続けながら死刑執行された後ほぼ同時期のほぼ同じ技官によるDNA鑑定の信用性が足利事件で否定された死刑囚の例を読んでいると、死刑という制度自体への疑問と、それ以上に昨今の厳罰化を求める「世論」とそれを煽り続けるマスメディア、激増している死刑判決への強い疑問を感じます。
もちろん、いわれなく殺害された被害者やその遺族の悲しみ・悔しさを軽視することも問題だと思います。しかし、昨今の激しく加害者を糾弾し極刑を求める遺族の映像を全く無批判に正しい姿として延々と垂れ流すマスメディアによって、加害者に極刑を求めることがスタンダード化されて被害者・遺族にそのような態度を取るべくかけられたプレッシャーにより、ステレオタイプ化した被害感情がエスカレートしているようにも感じられます。
この本で登場する死刑囚と遺族は、どちらかというと死刑制度と死刑執行に疑問を感じさせる側の事例に寄っているとは思いますが、マスメディアではその反対側ばかりが見られることを考えると、バランスが取られているのかなとも思います。
タガが外れたように厳罰化に突き進む現在の日本の刑事司法を少し冷静に議論するための材料として有益な本だと思います。
青木理 講談社 2009年7月24日発行
死刑執行に関わる人々の苦悩や、反省を重ね遺族から恩赦請求まで出されながら死刑執行された死刑囚や、無罪を主張し続けながら死刑執行された後ほぼ同時期のほぼ同じ技官によるDNA鑑定の信用性が足利事件で否定された死刑囚の例を読んでいると、死刑という制度自体への疑問と、それ以上に昨今の厳罰化を求める「世論」とそれを煽り続けるマスメディア、激増している死刑判決への強い疑問を感じます。
もちろん、いわれなく殺害された被害者やその遺族の悲しみ・悔しさを軽視することも問題だと思います。しかし、昨今の激しく加害者を糾弾し極刑を求める遺族の映像を全く無批判に正しい姿として延々と垂れ流すマスメディアによって、加害者に極刑を求めることがスタンダード化されて被害者・遺族にそのような態度を取るべくかけられたプレッシャーにより、ステレオタイプ化した被害感情がエスカレートしているようにも感じられます。
この本で登場する死刑囚と遺族は、どちらかというと死刑制度と死刑執行に疑問を感じさせる側の事例に寄っているとは思いますが、マスメディアではその反対側ばかりが見られることを考えると、バランスが取られているのかなとも思います。
タガが外れたように厳罰化に突き進む現在の日本の刑事司法を少し冷静に議論するための材料として有益な本だと思います。
青木理 講談社 2009年7月24日発行