伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

最高裁判所は変わったか

2009-10-23 23:51:07 | 人文・社会科学系
 2002年から2006年にかけて最高裁判事だった著者が、最高裁の実情を語るとともに、司法制度改革審議会意見書以後の最高裁の変化を検討・分析した本。
 最高裁の実情を語る部分は最初の2割弱で、もちろん慎重な抑えた書き方ではありますが、これまでに最高裁判事経験者が書いたものとしては一番率直というかざっくばらんなように思えました。
 残りは、著者自身が関与したものも含めたここ10年ほどの最高裁判決の検討・分析です。行政事件、民事事件、刑事事件に分けて、まず著者が判例の流れや目についた判決を分析し、その次に知人の弁護士2名との座談会形式で、感想や自分が関与した事件については若干の背景説明などをしています。
 ここ10年の最高裁の判決は、行政事件については、立法・行政へのチェック機能について司法制度改革審議会で注文を付けられたことも影響してか、以前とは相当変わってきており、民事事件についても相当な変化が見られ、刑事事件についてはあまり変化は見られないとされています。
 弁護士にとっては、日頃自分が担当していない分野も含めて最高裁判決のトレンドや新判例の勉強になりますし、最高裁での審議の実情の部分なども含めれば、必読書と言ってもいいでしょう。しかし、著者の関心のためか、判例分析の最初に行政事件が置かれ、分量的にもかなりの部分が行政事件に割かれていて、行政事件特有の法律概念・用語が続くので、弁護士以外には読み通すのはかなりハードルが高い(弁護士でも行政事件を全くやっていない人にはかなりきついかも)。


滝井繁男 岩波書店 2009年7月29日発行
コメント
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