海に近い城のあるひなびた地方都市(と思われる)の一軒家に住む45歳の引きこもり作家坂下宙ぅ吉の自傷行為と奇矯な行動を軸に、関わり巻き込まれた周りの人々の野次馬ぶりや戸惑いのエピソードを交えた小説。
ゴミと腐臭と汚物、見苦しさを感じさせる裸体といじましい性欲の描写が、露悪的で、しかしときおりことさらに観念的で小難しくなる文体で綴られ、しかも前半はバラバラの登場人物の細切れのエピソードが収束せず、読み進むのがかなり辛い代物です。ただ、そういう文章にもかかわらず、半分を過ぎる頃には、それなりに入り込んで読めるようになったのは、筆力なんでしょうね。単に慣れと、ストーリーが坂下宙ぅ吉とその信奉者堤龍介を中心に収束して読みやすくなったというだけかも知れませんが。
寡作のアナーキーな作家坂下宙ぅ吉の孤高というか他人のことは顧みない姿と、自傷行為のなれの果てには、私自身はほとんど感じるところはありませんでした(この部分は単に不気味というかB級ホラーというか)。しかし、そういった人物に対する周囲の人々の反応とその変化の描き方には巧みさを感じました。
吉村萬壱 文藝春秋 2009年9月25日発行
ゴミと腐臭と汚物、見苦しさを感じさせる裸体といじましい性欲の描写が、露悪的で、しかしときおりことさらに観念的で小難しくなる文体で綴られ、しかも前半はバラバラの登場人物の細切れのエピソードが収束せず、読み進むのがかなり辛い代物です。ただ、そういう文章にもかかわらず、半分を過ぎる頃には、それなりに入り込んで読めるようになったのは、筆力なんでしょうね。単に慣れと、ストーリーが坂下宙ぅ吉とその信奉者堤龍介を中心に収束して読みやすくなったというだけかも知れませんが。
寡作のアナーキーな作家坂下宙ぅ吉の孤高というか他人のことは顧みない姿と、自傷行為のなれの果てには、私自身はほとんど感じるところはありませんでした(この部分は単に不気味というかB級ホラーというか)。しかし、そういった人物に対する周囲の人々の反応とその変化の描き方には巧みさを感じました。
吉村萬壱 文藝春秋 2009年9月25日発行