伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

小さな大国ルクセンブルク

2010-08-07 09:38:18 | 人文・社会科学系
 面積は神奈川県程度、人口約50万人の小国でありながら、EUで相当な発言力を確保し1人あたりGDP世界一というルクセンブルクの政治や社会のシステムと歴史を解説した本。著者は元駐ルクセンブルク日本大使。
 ドイツとフランスという大国の狭間で占領を受け翻弄されてきたルクセンブルクが生き残るために平和と欧州統合に向けて積極的に発言し続けることは必然ではありますが、その中で得たマルチリンガルな国民の能力と小国故の迅速な意志決定が武器となっていることは興味深いところです。
 経済力も鉄鋼資源を活かした製鉄主体の産業構成からヨーロッパの中央に位置し通貨がベルギーフランと連動していたために独自の通貨政策を要しないという中立性を活かして短期間に金融センターとしての発展を勝ち取ったことなど、小国の発展のモデルとして注目に値します。
 比較的低い税率や移民政策も含めた自由主義的な政策と政労使協議による協調的な労使関係をベースに発展を勝ち得ていることは、保守側の人たちにとっての希望の星という性格を持つわけですが。
 それを置いても小国故の職住近接なども含め生活面での豊かさはうらやましく、学ぶ点の多いところです。


建部和仁 かまくら春秋社 2010年3月31日発行
コメント
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