伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

ニッポンの海外旅行 若者と観光メディアの50年史

2010-08-21 09:28:30 | 人文・社会科学系
 1996年をピークに若者の海外旅行が減少していることの原因を若者の変化ではなく海外旅行の変化にあるとして、若者向けの海外旅行事情の変遷を解説した本。
 長期滞在・低予算・周遊型の旅行として始まった若者向けの海外旅行が、当初の現地への溶け込み目的から低予算の旅行自体が目的、さらには海外での自分探し目的に変化し、低予算バックパッカーの貧乏旅行が「進め電波少年」の猿岩石ブームで頂点を極めるとともに自分がやってみたい旅行ではないと判断されてバックパッカーバブルが終焉を迎え、他方「ab-road」の成功で価格競争が激化して格安航空券販売から航空券+宿泊のスケルトンツァーに目玉商品が移行して短期・低予算・1か所滞在型が若者の海外旅行の中心となり、安く作れるのはアジアの都市とリゾートの3泊程度までのツァーなので結局ガイドブックで事前学習した忙しい旅行で現地の人々との接触や「歩く」機会のないパターン化したものとなって何度も行こうと思わない魅力のないものとなったというのが著者の論旨です。
 その傾向は、インターネットが「ab-road」に取って代わった今もさらに進むだけとなっています。さらにいえば、旅行の目的が現地の人々の生活や文化への接触から、自分探しか食事と買い物に変わってしまったら、行き先が海外であることの必然性もなくなってしまったということでしょう。
 ただ昔より旅行者の数が増え旅行商品も増えたために相対的に長期・低予算・周遊型がメインでなくなったということで、今でもそういう人は少数派として生き残ってはいると思いますが。


出口誠 ちくま新書 2010年7月10日発行
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