伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。今年も目標達成!

ランプコントロール

2010-12-10 23:58:57 | 小説
 出版社の編集者の高林直人が、27歳の時にフランクフルト赴任を命じられて、大学時代から5年間つきあい週末同棲の関係を続けてきた銀行員山本理沙と結婚を決断できずにしかし未練を残して別れ、フランクフルトで落ち込んでいたところを慰め合った同僚のステファニーと関係を結ぶが、3年後に日本に戻り、理沙のその後を知り・・・という筋立ての恋愛官能小説。
 日本を発つときも、フランクフルトを発つときも、恋人との将来を約束するでなく肉体を重ねる関係に終始して距離が離れることで壊れる関係を、どうしようもなかったと振り返り、結局すぐに思い出にしてゆく主人公の姿勢が、安易で無責任で情けない。転勤・海外赴任を命じる企業の冷酷さも、もちろん大きいのですが。
 情景や心象風景の描写・言い回しが小じゃれて巧みなところがあり、それで救われているとは思うのですが、失恋への感傷と、感傷に浸る自分へのナルシシズムと、そしてあまりの都合良さが、ちょっと読んでいて恥ずかしい。それにたぶん連載1回に1度はという感じの頻度の濡れ場シーンがかなり露骨で、これは恋愛小説じゃなくて官能小説と分類するしかないと思いますが、通勤電車で読むのがかなり恥ずかしい。
 これほどまでに男目線の男に都合のいい展開の官能小説が、「婦人公論」連載というところがまた驚きです。官能小説がということじゃなくて、こんな男に都合良く書かれた話を女性読者が喜んで読むんだろうかって。まぁ、ラストが「君に読む物語」っぽくて、そこだけは女性受けしそうな気はしますけどね。


大崎善生 中央公論新社 2010年7月25日発行
「婦人公論」2008年7月7日号~2010年2月7日号連載
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