刑事事件で精神鑑定を行ってきた精神科医である著者が精神鑑定の現状とあり方について語った本。
刑事事件での精神鑑定が責任能力(心神喪失なら無罪、心神耗弱なら減刑、いずれでもなければ通常の刑)に偏っており、むしろ責任能力がある場合にも訴訟能力(裁判手続を理解し的確に防御する能力、弁護人との意思疎通能力)や情状の鑑定(精神病や過去の来歴等の心理学的要素の犯行への影響等の量刑に反映すべき事情)や受刑能力(刑罰を認識し、また矯正されうる能力)について鑑定すべきことや、責任能力の鑑定でもマニュアルに頼りすぎる傾向や臨床経験に乏しい者による鑑定への批判が語られています。
現実に刑事事件で検察に依頼されて起訴前鑑定を行ったり裁判所からの依頼で鑑定を行っている医師が、現実に使用されているマニュアルとマニュアル頼りの鑑定を批判していることは、目を引きます。アメリカ精神医学会の診断マニュアルDSM-4について、列挙された症状項目のうち一定数以上の症状が認められれば○○障害と診断するような簡便な方法で「素人のアルバイトが統計調査を行うぶんには便利だが、臨床医学ではおよそ役立たない」(102ページ)と述べ、裁判員裁判を意識して作成された「刑事責任能力に関する精神鑑定書作成の手引き」についても「この7項目に従うだけで弁識制御能力がわかるというなら、精神科医が鑑定を行う必要はない。この『手引き』にのみ依拠する精神鑑定は、そういう意味で、鑑定医としての自殺行為だと思う」(108ページ)と述べているのは注目に値します。
本の作り方として、無理に一定行数ごとに見出しを立てていて、話の流れが切れてないのに不自然な見出しがつけられていたりします(同じケースの話が続いているのに「○○(2)」とか)。読んでいて新聞のコラムかなんかの短文の連載かなと思いましたが、「あとがき」で見ると書き下ろしだというのでびっくりしました。
高岡健 明石書店 2010年11月5日発行
刑事事件での精神鑑定が責任能力(心神喪失なら無罪、心神耗弱なら減刑、いずれでもなければ通常の刑)に偏っており、むしろ責任能力がある場合にも訴訟能力(裁判手続を理解し的確に防御する能力、弁護人との意思疎通能力)や情状の鑑定(精神病や過去の来歴等の心理学的要素の犯行への影響等の量刑に反映すべき事情)や受刑能力(刑罰を認識し、また矯正されうる能力)について鑑定すべきことや、責任能力の鑑定でもマニュアルに頼りすぎる傾向や臨床経験に乏しい者による鑑定への批判が語られています。
現実に刑事事件で検察に依頼されて起訴前鑑定を行ったり裁判所からの依頼で鑑定を行っている医師が、現実に使用されているマニュアルとマニュアル頼りの鑑定を批判していることは、目を引きます。アメリカ精神医学会の診断マニュアルDSM-4について、列挙された症状項目のうち一定数以上の症状が認められれば○○障害と診断するような簡便な方法で「素人のアルバイトが統計調査を行うぶんには便利だが、臨床医学ではおよそ役立たない」(102ページ)と述べ、裁判員裁判を意識して作成された「刑事責任能力に関する精神鑑定書作成の手引き」についても「この7項目に従うだけで弁識制御能力がわかるというなら、精神科医が鑑定を行う必要はない。この『手引き』にのみ依拠する精神鑑定は、そういう意味で、鑑定医としての自殺行為だと思う」(108ページ)と述べているのは注目に値します。
本の作り方として、無理に一定行数ごとに見出しを立てていて、話の流れが切れてないのに不自然な見出しがつけられていたりします(同じケースの話が続いているのに「○○(2)」とか)。読んでいて新聞のコラムかなんかの短文の連載かなと思いましたが、「あとがき」で見ると書き下ろしだというのでびっくりしました。
高岡健 明石書店 2010年11月5日発行