表紙見返しのキャッチによれば「話し方で損をしていませんか。声の出し方を工夫するだけで、新しい『あなた』が生まれます!友だちから敬遠された、仕事で相手を怒らせた……間違えた言い方や表現の仕方で失敗した人に、アナウンサー歴37年のカリスマ女性アナウンサーが、『愛される話し方』を伝授します。スピーチやプレゼンテーションが見違えるように上手になり、自分の声に対するコンプレックスも解消されます。自分を変えたい方、必読です!」という本。
著者がアナウンサーを志望した動機・経緯や女性アナウンサーの草分けとしての努力や意地、エピソード、80年代に入り「女子アナ」がタレント扱いされるようになったことへの苦々しい思い等を語る第1章とアナウンサーのあり方を主にアナウンサー志望の学生を対象として語る第5章は、アナウンサー論と昨今の風潮への苦言で構成されています。この部分は「今どきの若いもんは」というフレーズこそ避けられていますが、そういう心証がひしひしと伝わってきます。他方、声の印象の重要性、声の個性や発声法について語る第2章、日本語表現の誤りを指摘する第3章、スピーチ等の作法と技法を述べる第4章が、タイトルにある「愛される話し方」を論じています。ここでは、自然体でリラックスして声を出すこと、内容を理解しその情景を思い浮かべながら相手を見て意識して話す、つまり相手を思いやり心を込めて話すことで相手に通じるのだということが語られています。
この2つの柱が、あまり脈絡なく合体され、「愛される話し方」として語られることも筋道立てて論じていくというまとまったものではなく、エピソード的な断片が積み重ねられているように思えます。日本語の不適切な表現など、例えばら抜き言葉や、目上の人に「ご苦労様」は使うなとか、力不足と役不足の勘違いとか、今どきどこでも言われていることが大半で、これで本を作るかなぁと思います。全体としては中途半端な印象を強く持ちました。表紙見返しのキャッチからすれば、第1章と第5章はまったく不要と言っていいでしょう。ありきたりで気むずかしい年寄りの小言を聞かされているような第3章も、いらないように思えます(間違えた言い方や表現の仕方で失敗した人という観点では、気むずかしい目上の人に嫌われないように必要かもしれませんけど)。アナウンサーが教えると銘打つならば、発声法と話し方に特化して(この本で言えば第2章と第4章の内容を)掘り下げて欲しかったと思います。
この内容でもスピーチやプレゼンテーションが見違えるように上手になる人も中にはいるかもしれませんが、そういう人はたぶん何を読んでも取り入れて上達できるタイプの人で、この本でなくても何かかにかをつかめるのだと思います。

吉川美代子 朝日新書 2013年12月30日発行
著者がアナウンサーを志望した動機・経緯や女性アナウンサーの草分けとしての努力や意地、エピソード、80年代に入り「女子アナ」がタレント扱いされるようになったことへの苦々しい思い等を語る第1章とアナウンサーのあり方を主にアナウンサー志望の学生を対象として語る第5章は、アナウンサー論と昨今の風潮への苦言で構成されています。この部分は「今どきの若いもんは」というフレーズこそ避けられていますが、そういう心証がひしひしと伝わってきます。他方、声の印象の重要性、声の個性や発声法について語る第2章、日本語表現の誤りを指摘する第3章、スピーチ等の作法と技法を述べる第4章が、タイトルにある「愛される話し方」を論じています。ここでは、自然体でリラックスして声を出すこと、内容を理解しその情景を思い浮かべながら相手を見て意識して話す、つまり相手を思いやり心を込めて話すことで相手に通じるのだということが語られています。
この2つの柱が、あまり脈絡なく合体され、「愛される話し方」として語られることも筋道立てて論じていくというまとまったものではなく、エピソード的な断片が積み重ねられているように思えます。日本語の不適切な表現など、例えばら抜き言葉や、目上の人に「ご苦労様」は使うなとか、力不足と役不足の勘違いとか、今どきどこでも言われていることが大半で、これで本を作るかなぁと思います。全体としては中途半端な印象を強く持ちました。表紙見返しのキャッチからすれば、第1章と第5章はまったく不要と言っていいでしょう。ありきたりで気むずかしい年寄りの小言を聞かされているような第3章も、いらないように思えます(間違えた言い方や表現の仕方で失敗した人という観点では、気むずかしい目上の人に嫌われないように必要かもしれませんけど)。アナウンサーが教えると銘打つならば、発声法と話し方に特化して(この本で言えば第2章と第4章の内容を)掘り下げて欲しかったと思います。
この内容でもスピーチやプレゼンテーションが見違えるように上手になる人も中にはいるかもしれませんが、そういう人はたぶん何を読んでも取り入れて上達できるタイプの人で、この本でなくても何かかにかをつかめるのだと思います。

吉川美代子 朝日新書 2013年12月30日発行