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伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

1985年のクラッシュ・ギャルズ

2014-04-20 22:35:00 | ノンフィクション
 女子プロレス界のスーパースターだったクラッシュ・ギャルズの2人、長与千草とライオネス飛鳥の生い立ちとプロレスデビュー、クラッシュギャルズの結成と絶頂期、解散と2人の悪役としての再登場をとりまとめた本。
 「1985年のクラッシュギャルズ」というタイトルはアイドルとしてのクラッシュ・ギャルズが絶頂期にあった時であり、また第1章の語り手の女子プロレスファンたちにとって印象深い試合となった1985年8月28日の長与千草がダンプ松本に負けた髪切りマッチの時を示していますが、この本の白眉はむしろその後のクラッシュ・ギャルズというか、長与千草とライオネス飛鳥の悩みと引退、悪役としての復活だろうと思います。貧しく不幸な生い立ちで体格にも恵まれない長与千草が、受けの美学を持ち、プロレスというショーで観客に「見せる」才能を存分に発揮して試合を作り、絶大な人気を博したのに対して、体格に恵まれたスポーツエリートで実際に格闘させれば圧倒的に強いライオネス飛鳥が、歌を歌うことや相手に勝っても観客の注目を浴びないことに戸惑い反発して悩む姿、しかし悪役になって初めて、試合を作り観客を満足させる喜びを知るという過程が、一番の読みどころのように、私には思えました。
 長与千草サイドからの語り、ライオネス飛鳥サイドからの語りに加え、当初は匿名の一女子プロレスファンの少女(その後ライオネス飛鳥の親衛隊を経てプロレス雑誌の編集者となっていく)の語りが交互に配置される構成になっています。第1章が、長与千草でもライオネス飛鳥でもない一少女から始まるところが、戸惑いを呼び、ファンからの語りのところだけいかにも一人称っぽい語りでですます調になるなど文体も変わるのが浮く感じもしますが、著者があとがきで語っているように、確かにこの一ファンの語りがあることで間が取られ語りが広がるようにも思えます。


柳澤健 文春文庫 2014年3月10日発行 (単行本は2011年9月)
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