「人類史上初めて、単一機種で販売台数が1億台を超えた電子機器」といわれるiphone(iphone4S)の部品を受注した日本企業、日本の職人たちが、アップルの経済合理性と都合で翻弄されある日突然受注を切られるなど煮え湯を飲まされる様をレポートした本。
日本の優良企業がアップルからの大量受注のためにしのぎを削りあるいは受注に舞い上がり、アップルのために多額の投資をしてアップルの求める専用工場を作って生産を拡大するやアップルの事情で受注を減らされたり切られ、技術を持ち出されてアジアの企業などに移転される様子が関係者の語りによって記述されています。圧倒的な力関係を利用して取引先には厳しい要求を突きつけ続け、取引先は途方もない巨額の違約金規定でがちがちに縛られるのにアップルは自由にやりたい放題の要求や契約打ち切りができる背景には、アメリカを初めとするビジネスロイヤーたちの辣腕ぶりというか高圧的な仕事ぶりが垣間見えます。あぁいやだ。ipodの裏蓋を手仕事で芸術的に磨き上げた燕の職人たちがその仕事をビデオカメラで3日間にわたり撮影された後受注を切られたという話(37~45ページ)には哀感が漂います。自らの技術や考案については徹底した訴訟姿勢で声高に主張するアップルが、他人の、居丈高には振る舞わない職人たちの技術については平然と踏みにじる姿は、あまりにも醜い。
大企業が自分の都合を最優先し、取引先や下請をいじめ、情け容赦なく切り捨てる姿は、アップルだけではなく、日本でも増えてきていると思いますが、それでもアップルの傲慢さ、強欲さは異常なものと思えます。
家電量販店ですら、iphoneでは儲けが出ないしくみだが、iphoneを置かないと商売にならないのでアップルのいうままの宣伝文句や販促をして大量に商品を並べアップルのいう通りの値段で販売し、マージンの大きいケースや保護フィルムで稼がざるを得ない(72~75ページ)、携帯キャリアはiphone販売にあたりアップルに販売奨励金や上納金を支払わされ利益が出るまでに少なくとも9か月かかり(122~126ページ)、アップルだけが独占的に利益をあげるシステムになっているとか。
この本では触れていませんが、アップルがパソコンメーカーだった時代、DosV(Windows)陣営ではユーザーがパーツを入れ替えて自由にチューニングしたり、そうでなくてもメーカーが好きな構成のパソコンを販売できたのに対し、アップルは提携メーカーにアップルが指定した仕様以外の商品の製造販売を禁止したためユーザーの選択肢がほとんどなく、ユーザーがパソコンの蓋を開けることも固く禁じられて「知らしむべからず寄らしむべし」を地で行く姿勢を取り、OS8からは自由な構成で製造してよいとメーカーに約束していたにもかかわらず97年に遅れていたそのOS8発表時にその約束を反故にした挙げ句に提携メーカーへのライセンス供与を一方的に打ち切った義理人情や商慣習など知ったことじゃない独善的な姿勢とユーザーをバカにした態度を見て、私はアップル製品を結局一度も使う気になれずに来ています(Macも、ipodも、ipadも、iphoneも、私は手にしたことがありません。子どもたちはありがたがって手放せないようですが)。もちろん、マイクロソフトがいい企業だと思っているわけではありませんが。そういう私には、アップルの阿漕さを再認識させてくれる本です。日本企業の受けた仕打ちと凋落についてやや感傷的に過ぎる(アップルに煮え湯を飲まされているのは日本企業だけじゃないと思うんですが)きらいはありますが。
後藤直義、森川潤 文藝春秋 2013年7月15日発行
日本の優良企業がアップルからの大量受注のためにしのぎを削りあるいは受注に舞い上がり、アップルのために多額の投資をしてアップルの求める専用工場を作って生産を拡大するやアップルの事情で受注を減らされたり切られ、技術を持ち出されてアジアの企業などに移転される様子が関係者の語りによって記述されています。圧倒的な力関係を利用して取引先には厳しい要求を突きつけ続け、取引先は途方もない巨額の違約金規定でがちがちに縛られるのにアップルは自由にやりたい放題の要求や契約打ち切りができる背景には、アメリカを初めとするビジネスロイヤーたちの辣腕ぶりというか高圧的な仕事ぶりが垣間見えます。あぁいやだ。ipodの裏蓋を手仕事で芸術的に磨き上げた燕の職人たちがその仕事をビデオカメラで3日間にわたり撮影された後受注を切られたという話(37~45ページ)には哀感が漂います。自らの技術や考案については徹底した訴訟姿勢で声高に主張するアップルが、他人の、居丈高には振る舞わない職人たちの技術については平然と踏みにじる姿は、あまりにも醜い。
大企業が自分の都合を最優先し、取引先や下請をいじめ、情け容赦なく切り捨てる姿は、アップルだけではなく、日本でも増えてきていると思いますが、それでもアップルの傲慢さ、強欲さは異常なものと思えます。
家電量販店ですら、iphoneでは儲けが出ないしくみだが、iphoneを置かないと商売にならないのでアップルのいうままの宣伝文句や販促をして大量に商品を並べアップルのいう通りの値段で販売し、マージンの大きいケースや保護フィルムで稼がざるを得ない(72~75ページ)、携帯キャリアはiphone販売にあたりアップルに販売奨励金や上納金を支払わされ利益が出るまでに少なくとも9か月かかり(122~126ページ)、アップルだけが独占的に利益をあげるシステムになっているとか。
この本では触れていませんが、アップルがパソコンメーカーだった時代、DosV(Windows)陣営ではユーザーがパーツを入れ替えて自由にチューニングしたり、そうでなくてもメーカーが好きな構成のパソコンを販売できたのに対し、アップルは提携メーカーにアップルが指定した仕様以外の商品の製造販売を禁止したためユーザーの選択肢がほとんどなく、ユーザーがパソコンの蓋を開けることも固く禁じられて「知らしむべからず寄らしむべし」を地で行く姿勢を取り、OS8からは自由な構成で製造してよいとメーカーに約束していたにもかかわらず97年に遅れていたそのOS8発表時にその約束を反故にした挙げ句に提携メーカーへのライセンス供与を一方的に打ち切った義理人情や商慣習など知ったことじゃない独善的な姿勢とユーザーをバカにした態度を見て、私はアップル製品を結局一度も使う気になれずに来ています(Macも、ipodも、ipadも、iphoneも、私は手にしたことがありません。子どもたちはありがたがって手放せないようですが)。もちろん、マイクロソフトがいい企業だと思っているわけではありませんが。そういう私には、アップルの阿漕さを再認識させてくれる本です。日本企業の受けた仕打ちと凋落についてやや感傷的に過ぎる(アップルに煮え湯を飲まされているのは日本企業だけじゃないと思うんですが)きらいはありますが。
後藤直義、森川潤 文藝春秋 2013年7月15日発行