日本労働弁護団の中心メンバーによる労働法・労働事件の実務解説書シリーズの解雇と退職関係の部分。
2008年に刊行された「問題解決労働法」シリーズの改訂版です。
労働事件で現実に裁判等の法的手続を取ることになる場合が多い解雇について様々な問題を手際よく解説しています。特に整理解雇(使用者側の経営上の都合による解雇)についての裁判例の整理(62~76ページ)は素晴らしい。解雇事件での損害賠償についての説明と裁判例の整理(193~205ページ)も参考になりました。
他方、普通解雇、懲戒解雇についてはもう少し書き込んで欲しいと思いました。整理解雇の判例の紹介の中で、企業全体の経営不振ではなく一部門の閉鎖の場合の整理解雇(74ページ)を有効とした裁判例について、シンガポールデベロップメント銀行事件や専修大学(北海道短大)事件では他部門での希望退職募集等を要しないとした理由の中で相当程度の上積み退職金等の優遇条件があったことが重視されておりそれがないと別の結論となり得ると私は思います(二弁労働問題検討委員会編の「労働事件ハンドブック」ではそう書きました)のでそういう言及もあった方がいいかなと思います(著者の見方は違うということかもしれませんが)。派遣切りの際の派遣先に対する損害賠償請求を認めた裁判例の紹介(113ページ)で、三菱電機ほか事件で2審(高裁)では棄却としているのは、1審では原告3名について認容していたが2審では2名について棄却1名のみ認容です。登録型派遣で有期契約の更新を繰り返した場合の雇い止めについて雇用継続の合理的期待が認められるか(111ページ)については、2006年の2つの高裁判決で否定されていることだけを紹介しています。裁判例の紹介としてはその通りなのですが、労働側の弁護士の主張としては、その後の労働契約法の改正で通算契約期間5年超で無期転換権が認められたことや派遣法改正で雇用安定措置が定められてていることなどを足がかりに闘う意志も見せて欲しかったなとも思います(そういうのは期待の持たせすぎと言われるかもしれませんが)。
君和田伸仁 旬報社 2010年2月10日発行
2008年に刊行された「問題解決労働法」シリーズの改訂版です。
労働事件で現実に裁判等の法的手続を取ることになる場合が多い解雇について様々な問題を手際よく解説しています。特に整理解雇(使用者側の経営上の都合による解雇)についての裁判例の整理(62~76ページ)は素晴らしい。解雇事件での損害賠償についての説明と裁判例の整理(193~205ページ)も参考になりました。
他方、普通解雇、懲戒解雇についてはもう少し書き込んで欲しいと思いました。整理解雇の判例の紹介の中で、企業全体の経営不振ではなく一部門の閉鎖の場合の整理解雇(74ページ)を有効とした裁判例について、シンガポールデベロップメント銀行事件や専修大学(北海道短大)事件では他部門での希望退職募集等を要しないとした理由の中で相当程度の上積み退職金等の優遇条件があったことが重視されておりそれがないと別の結論となり得ると私は思います(二弁労働問題検討委員会編の「労働事件ハンドブック」ではそう書きました)のでそういう言及もあった方がいいかなと思います(著者の見方は違うということかもしれませんが)。派遣切りの際の派遣先に対する損害賠償請求を認めた裁判例の紹介(113ページ)で、三菱電機ほか事件で2審(高裁)では棄却としているのは、1審では原告3名について認容していたが2審では2名について棄却1名のみ認容です。登録型派遣で有期契約の更新を繰り返した場合の雇い止めについて雇用継続の合理的期待が認められるか(111ページ)については、2006年の2つの高裁判決で否定されていることだけを紹介しています。裁判例の紹介としてはその通りなのですが、労働側の弁護士の主張としては、その後の労働契約法の改正で通算契約期間5年超で無期転換権が認められたことや派遣法改正で雇用安定措置が定められてていることなどを足がかりに闘う意志も見せて欲しかったなとも思います(そういうのは期待の持たせすぎと言われるかもしれませんが)。
君和田伸仁 旬報社 2010年2月10日発行