伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

労働法実務解説11 ユニオンへの加入・結成と活用

2016-03-22 00:05:05 | 実用書・ビジネス書
 日本労働弁護団の中心メンバーによる労働法・労働事件の実務解説書シリーズの労働組合関係の部分。
 2008年に刊行された「問題解決労働法」シリーズの改訂版です。
 近年とみにその存在感を増している地域合同労組とその主要な武器となる団体交渉について、労働者側の弁護士が説明した実務書は、あまりみられません。使用者側は、潤沢な資金を有して地域合同労組対策を弁護士に相談したり、団体交渉の場に社会保険労務士や弁護士を立ち会わせることが割とあるのに対して、地域合同労組側が弁護士を団体交渉に立ち会わせることはほとんどないようです。弁護士費用が払えない/払いたくないという事情か、あるいは弁護士が立ち会うと交渉が「お行儀よく」なりがちなことを嫌うのかは、よくわかりませんが。
 そういうことから、地域合同労組への加入、あるいは仲間を募って自ら労働組合を結成してみようかと考えている労働者を第1の念頭にという(3ページ)この本が団体交渉にほぼ半分の紙幅を割いていることには大変期待をしました。
 しかし、この本が項目別に解説を加えている第3章の「団体交渉」の記述は、その交渉事項となる法律関係(理由別の解雇、雇い止め、退職勧奨等)についての裁判例等の解説で、要するに裁判所で法的解決を求めるとこうなるよということで、弁護士にとっては団体交渉特有のものでは全然ありません。依頼者に対しては、相談されればそういうことを説明はするでしょうけど。そういう面では、団体交渉の解説として弁護士が読むのには、期待外れ感があります。著者の使用者に対する闘う意欲は、その表現の中に強く感じられるのですが。
 労働組合側の争議行為の活用方法として、不当配転に対して配転命令を受けた労働者の指名スト戦術とそれを配転以外にも活用を検討できるということが書かれています(143~144ページ)。こういうところをもっと詳しく過去の裁判例を紹介し、より具体的にどのような応用ができそうか述べてくれると、実務的に参考になると思うのですが。


鴨田哲郎 旬報社 2016年1月25日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする