姫川玲子シリーズの長編第5作。
長編第4作「ブルーマーダー」の後、警視庁本庁の捜査1課に復帰し、元姫川班のメンバー菊田とともに主任(警部補)として殺人犯捜査第11係に所属する姫川が、家族3人がいずれも股間に銃弾を数発撃ちこまれその銃創から手を突っ込まれて内蔵を破壊された無残な死体で発見された祖師谷一家殺人事件の捜査を担当するお話です。
以前から続く人間関係は、そのまま維持されて展開していますが、この作品では、姫川玲子の特徴的な部分(人柄、特異な直感とか、引きずっている過去)はあまり発揮されておらず、独断専行するところはあるもののふつうの刑事っぽい印象です。
「硝子の太陽N-ノワール」と2冊セットで、姫川玲子シリーズと「ジウ」シリーズというべきか「歌舞伎町セブンシリーズ」というべきかあるいは「東弘樹シリーズ」というべきかよくわからなくなっていますが、その2つのシリーズの「コラボ」として売られ、この作品自体のラストは、いかにもまだ続編を書くぞという意思表示で終わっています。作品自体の中身でよりもシリーズを続けることでファンを維持しようという売り方が強まり、いやらしさが感じられます。
この作品でも、「武士道ジェネレーション」に続き、「自虐史観」批判が登場し(206~207ページ)、「GHQによって作られた憲法」をいまだに一字一句変えないとは驚きだなどと述べ(205ページ)、沖縄の反米軍基地闘争を左翼がでっち上げたデマに煽動されたものという設定をし(172~175ページ)、作者は右翼の伝道師のような姿勢を取り続けています。この作品では、米軍兵士に「自虐史観」批判をさせた挙句に、日本人は実に勤勉で自ら規律と秩序を守る、尊敬に値する、自衛隊は世界最高水準、「本気で戦争になったら一番怖い民族」などと言わせ(80~81ページ)、アメリカ人にとって日本人は尊敬に値するし、むしろアメリカ人は日本人を怖がっていると印象付けています。日本人が自尊心/誇りを持つために過去の過ちを直視することを避けようとする姿勢はそれ自体誤りだと思いますが、そこは置いても、日本人の誇りは自らの努力と実績に基づいて実感すべきことで、外国人/アメリカ人に日本人をほめさせて(小説なのですから、架空の、幻想/妄想によって)自己満足するというのは、むしろあまりにも卑屈でいじましいと思います。
誉田哲也 光文社 2016年5月15日発行
長編第4作「ブルーマーダー」の後、警視庁本庁の捜査1課に復帰し、元姫川班のメンバー菊田とともに主任(警部補)として殺人犯捜査第11係に所属する姫川が、家族3人がいずれも股間に銃弾を数発撃ちこまれその銃創から手を突っ込まれて内蔵を破壊された無残な死体で発見された祖師谷一家殺人事件の捜査を担当するお話です。
以前から続く人間関係は、そのまま維持されて展開していますが、この作品では、姫川玲子の特徴的な部分(人柄、特異な直感とか、引きずっている過去)はあまり発揮されておらず、独断専行するところはあるもののふつうの刑事っぽい印象です。
「硝子の太陽N-ノワール」と2冊セットで、姫川玲子シリーズと「ジウ」シリーズというべきか「歌舞伎町セブンシリーズ」というべきかあるいは「東弘樹シリーズ」というべきかよくわからなくなっていますが、その2つのシリーズの「コラボ」として売られ、この作品自体のラストは、いかにもまだ続編を書くぞという意思表示で終わっています。作品自体の中身でよりもシリーズを続けることでファンを維持しようという売り方が強まり、いやらしさが感じられます。
この作品でも、「武士道ジェネレーション」に続き、「自虐史観」批判が登場し(206~207ページ)、「GHQによって作られた憲法」をいまだに一字一句変えないとは驚きだなどと述べ(205ページ)、沖縄の反米軍基地闘争を左翼がでっち上げたデマに煽動されたものという設定をし(172~175ページ)、作者は右翼の伝道師のような姿勢を取り続けています。この作品では、米軍兵士に「自虐史観」批判をさせた挙句に、日本人は実に勤勉で自ら規律と秩序を守る、尊敬に値する、自衛隊は世界最高水準、「本気で戦争になったら一番怖い民族」などと言わせ(80~81ページ)、アメリカ人にとって日本人は尊敬に値するし、むしろアメリカ人は日本人を怖がっていると印象付けています。日本人が自尊心/誇りを持つために過去の過ちを直視することを避けようとする姿勢はそれ自体誤りだと思いますが、そこは置いても、日本人の誇りは自らの努力と実績に基づいて実感すべきことで、外国人/アメリカ人に日本人をほめさせて(小説なのですから、架空の、幻想/妄想によって)自己満足するというのは、むしろあまりにも卑屈でいじましいと思います。
誉田哲也 光文社 2016年5月15日発行