伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

今日のハチミツ、あしたの私

2017-04-08 23:34:02 | 小説
 売上の悪いカフェにテコ入れに行って回る塚原碧29歳が、相性の悪い店長との確執があり仕事に行き詰まりを感じているとき、職場に1年も勤められずに職を転々とする同棲相手安西渉29歳が父の会社を継いだ兄の下で働くと言い出して故郷に帰るのを機にプロポーズされて、仕事をやめてついていくが、安西の父から怒鳴りつけられてダメ出しされ結婚も拒否されて、近くでアパートを借り、いじめられていた中学生時代に通りがかりの女性からハチミツを渡されて励まされた思い出に惹かれて養蜂を習い始め…という青春小説。
 金持ちの安西の父が離婚し再婚相手とも別居しつつ若い女を転々とした挙句お手付きの息子の同級生を息子に押し付けようとするとか、その息子は根気も覇気もないダメダメ男で、大地主令嬢の羽島麻子は浮気をして離婚し娘に嫌われと、わがままな金持ちたちが描かれるのと対照的に、養蜂一筋に取り組む不器用な黒江、黒江に養蜂を習いながら自活の道を探る碧、スナックをカフェに改装するあざみらの庶民層の逞しさ・粘り強さが書き込まれていることに好感を持ちました。
 世の中は、わがままで嫌な金持ちたちが我が物顔して不条理ではあるけれども、懸命に生きてればいいことあるさと、背中を押してくれるようなほのぼのとした爽やかさを感じさせてくれる作品です。


寺地はるな 角川春樹事務所 2017年3月18日発行
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