日本の潮間帯、特に干潟に住むカニについて、生息場所別(淡水、汽水域、干潟、塩性湿地、マングローブ湿地、砂浜海岸、転石海岸、岩礁海岸、川と海を往来)に、これまでの様々な研究者の研究をレビューしつつ著者の研究を紹介した本。
海中に住むカニが除外されているので、食べるカニが含まれていないのが残念ですが、こんなにいろいろな種類のカニがいて、それぞれに特徴があるのだと知ること自体、驚きがありました。
コメツキガニでの研究で、複数の雄と交尾した場合最後に交尾した雄の子だけが生まれる(放射線投与により不妊にした雄と健康な雄とを順番を変えて交尾させて、その順番に応じて受精卵がどうなるかを見たのだそうです:10ページ)、観察しているとわずか14分で3個体の雄と4回交尾した例があった(57~58ページ)とか、アシハラガニでは雄が雌に近づいてそのまま両者が対面姿勢となり、雌が上位になって交尾する(81~82ページ)とか・・・感心してるのは交尾の話ばかりかって (^^ゞ
チゴガニは、近隣個体の巣穴の横に砂泥を積み上げてバリケードを作ったり巣穴を砂泥で塞いだりといった嫌がらせをし、嫌がらせをされた側は加害者を避けるようになるという行動をとるのだそうですが、著者は、チゴガニがこのような狡猾な行動をとることに気がついたのは、チゴガニを野外で研究対象にしてから実に10年もたってからであった、研究のためにデータをとるときにはその研究目的に縛られ対象となるもの以外には目がいかなくなるのだろう、何の目的もなくチゴガニを見に干潟に出たときにこの行動の存在に気がついた、ある目的のためにその対象を見続ければその目的に合う面しか見なくなり新たな現象の発見を得る機会は失われると、反省しています(62ページ)。ほかの場面にも通じることだと思います。心しておきたい。
著者は、理論先行ではなく、現場記載から始まる研究をしてきたことが成果を生んできたと自負し、近年の成果対応型の研究費支給体制の下では現場記載から始まる研究は生き残りが困難になっていると嘆いています(162ページ)。研究や大学というもののあり方も含め、世知辛くおおらかさがなくなった日本社会/政治の現状の方を見直すべきだろうと思います。

和田恵次 東海大学出版部 2017年3月20日発行
海中に住むカニが除外されているので、食べるカニが含まれていないのが残念ですが、こんなにいろいろな種類のカニがいて、それぞれに特徴があるのだと知ること自体、驚きがありました。
コメツキガニでの研究で、複数の雄と交尾した場合最後に交尾した雄の子だけが生まれる(放射線投与により不妊にした雄と健康な雄とを順番を変えて交尾させて、その順番に応じて受精卵がどうなるかを見たのだそうです:10ページ)、観察しているとわずか14分で3個体の雄と4回交尾した例があった(57~58ページ)とか、アシハラガニでは雄が雌に近づいてそのまま両者が対面姿勢となり、雌が上位になって交尾する(81~82ページ)とか・・・感心してるのは交尾の話ばかりかって (^^ゞ
チゴガニは、近隣個体の巣穴の横に砂泥を積み上げてバリケードを作ったり巣穴を砂泥で塞いだりといった嫌がらせをし、嫌がらせをされた側は加害者を避けるようになるという行動をとるのだそうですが、著者は、チゴガニがこのような狡猾な行動をとることに気がついたのは、チゴガニを野外で研究対象にしてから実に10年もたってからであった、研究のためにデータをとるときにはその研究目的に縛られ対象となるもの以外には目がいかなくなるのだろう、何の目的もなくチゴガニを見に干潟に出たときにこの行動の存在に気がついた、ある目的のためにその対象を見続ければその目的に合う面しか見なくなり新たな現象の発見を得る機会は失われると、反省しています(62ページ)。ほかの場面にも通じることだと思います。心しておきたい。
著者は、理論先行ではなく、現場記載から始まる研究をしてきたことが成果を生んできたと自負し、近年の成果対応型の研究費支給体制の下では現場記載から始まる研究は生き残りが困難になっていると嘆いています(162ページ)。研究や大学というもののあり方も含め、世知辛くおおらかさがなくなった日本社会/政治の現状の方を見直すべきだろうと思います。

和田恵次 東海大学出版部 2017年3月20日発行