郊外のベッドタウン「図図川町」で、釣れた鯉の点数に応じて景品と交換する釣り堀「カープ・キャッチャー」でアルバイトをしながら人気の黒人歌手「ムキダス」が話すアフリカの少数言語「ヒツギム語」のレッスンに夢中の春日明、健康ランド「ジョイフル図図川」に寝泊まりしつつ「何でも屋」で何とか食べてる明の父大洞真実、「カープ・キャッチャー」で神と呼ばれる釣りの名手だがボロアパートで年金暮らしの河原塚ヨネトモ、量販店でバイト中の対人恐怖症のフリーター内山賢史と心霊ものDVDファンの妹智、裕福な中年女柏手市子らが、「カープ・キャッチャー」周辺で織りなす群像コメディ。
プロローグでバラバラに羅列される登場人物が、「カープ・キャッチャー」で出会い、実は他の人物を介して現在や過去の関係があり、という形で収斂してゆくという、舞台が「図図川」「図図川町」なる特定の場所ですから、最初からそうなるだろうという展開で、ドタバタして進みます。
登場人物中、柏手市子という中年女性が、裕福なのに物欲しげで意地悪で身勝手な共感ができないキャラで、しかもプロローグの紅葉の「手品」「奇跡」がまったく回収されないままに終わり、どうしてこの人物を登場させたのかもよくわからない印象です。他の話は、かなり無理してつなげているのに、性格の悪い柏手市子とその息子はいかにも浮いたままで、全体のドタバタ感(登場人物とエピソードのつなぎ方がスムーズでない)とあわせて、あまりうまくないなぁという読後感です。
架空の言語「ヒツギム語」が終盤で爆発しますが、これも、こういうのを好む読者には「面白い」のかもしれませんが、私はあまりついていけない思いです。とりわけ、終盤まで、なぜ「カープ・キャッチャー」の話が「サーモン・キャッチャー」なの?という疑問を持たされ(ふつう、終盤はもうそこが読者の関心/疑問になると思います)た挙句、ラストは、それはないだろうと思います。ヒツギム語で「兄」が「タツヤ」、「弟」が「カズヤ」(314~315ページ)というのに、ああこの作者「タッチ/あだち充」で育ったんだという感慨は持ちましたが。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kaeru_shock2.gif)
道尾秀介 光文社 2016年11月20日発行
プロローグでバラバラに羅列される登場人物が、「カープ・キャッチャー」で出会い、実は他の人物を介して現在や過去の関係があり、という形で収斂してゆくという、舞台が「図図川」「図図川町」なる特定の場所ですから、最初からそうなるだろうという展開で、ドタバタして進みます。
登場人物中、柏手市子という中年女性が、裕福なのに物欲しげで意地悪で身勝手な共感ができないキャラで、しかもプロローグの紅葉の「手品」「奇跡」がまったく回収されないままに終わり、どうしてこの人物を登場させたのかもよくわからない印象です。他の話は、かなり無理してつなげているのに、性格の悪い柏手市子とその息子はいかにも浮いたままで、全体のドタバタ感(登場人物とエピソードのつなぎ方がスムーズでない)とあわせて、あまりうまくないなぁという読後感です。
架空の言語「ヒツギム語」が終盤で爆発しますが、これも、こういうのを好む読者には「面白い」のかもしれませんが、私はあまりついていけない思いです。とりわけ、終盤まで、なぜ「カープ・キャッチャー」の話が「サーモン・キャッチャー」なの?という疑問を持たされ(ふつう、終盤はもうそこが読者の関心/疑問になると思います)た挙句、ラストは、それはないだろうと思います。ヒツギム語で「兄」が「タツヤ」、「弟」が「カズヤ」(314~315ページ)というのに、ああこの作者「タッチ/あだち充」で育ったんだという感慨は持ちましたが。
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道尾秀介 光文社 2016年11月20日発行