うつ病のさまざまな種類に応じて典型例を挙げて説明し、治療法の進展(多様化)とうつ病の原因についての著者の見解を説明する本。
生真面目で几帳面な性格の人が発症して全面的に落ち込み気力(エネルギー)がなくなり自分を否定し追い込んでいくこれまでの典型的なうつ病(著者は「メランコリー型うつ病」と呼ぶ)が、周囲の同情を集めるのに対し、近年は仕事の場では元気がなく出社できないがレジャーはできてその時は元気、自分を責めることはなく周囲に責任があると主張する新しいタイプのうつ病(世間では「新型うつ病」、著者は「現代うつ病」と呼ぶ)は欠勤/休職をめぐり使用者(企業)側からは詐病を疑われ、労働者側の弁護士から見ても悩ましいところですが、著者は、こだわりを持つ凝り性のところは同じでかつてのような儒教道徳的な倫理観ではなく西洋的な合理主義のもとで育った者が学校で甘やかされ企業で厳しく扱われる落差に適応したのが現代うつ病ではないかと説明しています(62~64ページ)。挙げられている症例のようにリワーク活動にもともと凝り性の性格ということもあって熱心に参加し復職できた(62ページ)というようなことだと、なるほどやはりうつ病だったのねと理解しやすいところでしょうけど。
「気分変調症」として挙げられている症例で、アドバイスが欲しいというのでアドバイス的なことを言うと「そんなことは自分にもわかっている。でも、できないから仕方がない。」と居直り、次回の予約を決めるときにも朝は起きれないから夕方にとか平日は道が混むから土曜日になどと要求が多く、そのくせしばしば予約の無断キャンセルをするというケース(71~72ページ)、法律相談の相談者にも時々います。そういうのは、病気と考えるべきなんですね。とっても困ったちゃんですが。
治療法で、生活療法(休養→日常生活記録、運動)を優先するとしたうえで、薬物療法のさまざまな薬を紹介し、次いで通電療法(電気ショック)を紹介しています。通電療法は効果があるのに感情的に否定されてきた、通電療法が残酷な感じがするからやるべきではないというのは、人間の体をメスで切り刻むなど残酷だとすべての手術を禁止するようなもの(165~169ページ)、と著者はいうのですが…
うつ病の原因を、ゆううつになり行動を止める(強敵に無意味に戦いを挑まない)ことが生き残り上有利、負けたときにあきらめることで復讐の連鎖が回避され安心して子孫が残された、落ち込むことが周囲の援助を誘い生き残り上有利という進化生物学的見地から、ゆううつになる者の遺伝子が残されてきたが、それが社会の変化により意味が変わったために病気と評価されるに至った(198~207ページ)としています。興味深い主張ではあります。
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野村総一郎 講談社現代新書 2017年2月20日発行(旧版は2004年)
生真面目で几帳面な性格の人が発症して全面的に落ち込み気力(エネルギー)がなくなり自分を否定し追い込んでいくこれまでの典型的なうつ病(著者は「メランコリー型うつ病」と呼ぶ)が、周囲の同情を集めるのに対し、近年は仕事の場では元気がなく出社できないがレジャーはできてその時は元気、自分を責めることはなく周囲に責任があると主張する新しいタイプのうつ病(世間では「新型うつ病」、著者は「現代うつ病」と呼ぶ)は欠勤/休職をめぐり使用者(企業)側からは詐病を疑われ、労働者側の弁護士から見ても悩ましいところですが、著者は、こだわりを持つ凝り性のところは同じでかつてのような儒教道徳的な倫理観ではなく西洋的な合理主義のもとで育った者が学校で甘やかされ企業で厳しく扱われる落差に適応したのが現代うつ病ではないかと説明しています(62~64ページ)。挙げられている症例のようにリワーク活動にもともと凝り性の性格ということもあって熱心に参加し復職できた(62ページ)というようなことだと、なるほどやはりうつ病だったのねと理解しやすいところでしょうけど。
「気分変調症」として挙げられている症例で、アドバイスが欲しいというのでアドバイス的なことを言うと「そんなことは自分にもわかっている。でも、できないから仕方がない。」と居直り、次回の予約を決めるときにも朝は起きれないから夕方にとか平日は道が混むから土曜日になどと要求が多く、そのくせしばしば予約の無断キャンセルをするというケース(71~72ページ)、法律相談の相談者にも時々います。そういうのは、病気と考えるべきなんですね。とっても困ったちゃんですが。
治療法で、生活療法(休養→日常生活記録、運動)を優先するとしたうえで、薬物療法のさまざまな薬を紹介し、次いで通電療法(電気ショック)を紹介しています。通電療法は効果があるのに感情的に否定されてきた、通電療法が残酷な感じがするからやるべきではないというのは、人間の体をメスで切り刻むなど残酷だとすべての手術を禁止するようなもの(165~169ページ)、と著者はいうのですが…
うつ病の原因を、ゆううつになり行動を止める(強敵に無意味に戦いを挑まない)ことが生き残り上有利、負けたときにあきらめることで復讐の連鎖が回避され安心して子孫が残された、落ち込むことが周囲の援助を誘い生き残り上有利という進化生物学的見地から、ゆううつになる者の遺伝子が残されてきたが、それが社会の変化により意味が変わったために病気と評価されるに至った(198~207ページ)としています。興味深い主張ではあります。
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野村総一郎 講談社現代新書 2017年2月20日発行(旧版は2004年)