企業の幹部へのコーチングを業とする著者母娘が、企業幹部が部下に接する際に感情的になり一方的に命令するのでは部下に無能だというメッセージを発して部下のやる気をそぐことになる、否定的で相手を責める接し方ではなく、相手に好奇心を持ち理解しようとする姿勢を持つことで部下とのコミュニケーションをとりましょうと薦める本。
第2章で論じられる「今、ここ」に集中するということ、つまり話す相手に何かほかのことをやりながらとかほかのことで心ここにあらずの状態で接するのではなく、ほかのことを中断して相手に向き合うということは、著者が母親としての経験で述べている、子どもとの接し方で実感できるように、対人コミュニケーションの上でとても重要なことだと思います。
著者は、責めるのではなく「好奇心にあふれたオープンな質問は、困難な状況を乗り越える際に役立つ」としていますが、その例として挙げられている年間5日以上休まないように部下に徹底するように言い渡された上司が、過去1年間に25日休んだ部下に「これから1年間、休みを大幅に減らす方法を考えることができますか?」と聞き、部下が「自信がありません。風邪を引いてなかなか治らなかったり、息子が風邪を引いて、夜の間私が看病をしなければならず、疲れきって仕事に来れなかったりしたときもありました。それ以外に、何があったのかは思い出せません。」と答えたら、「息子さんの世話で大変なときもあるようですね。年間の休みを減らすためにどんな方法が考えられますか?」と聞く(108~110ページ)というように、自分の望む答えが出るまで聞き続ける(問い詰める)のでは、「責めている」のと同じで、嫌がらせと見えます。企業の幹部側のコーチングはどちらにしても部下を企業の意向に沿わせられればいいということなんでしょうけど、これでは自己満足の域を出ないのではないかと、私には思えます。
著者自身は、これまで相手の仕事が忙しいときにその子どものお迎えをしてあげていたママ友が今日はあなたの子どもの迎えをするというので喜んで仕事を入れたところお迎えをドタキャンされてしまいその日の夕方に入れた仕事をキャンセルして自分の子どものお迎えに行ったという経験をして、その際に家族のニーズを第一にするという「限度」を設定し、数日後にそのママ友が子どものお迎えを頼んできた際にはその日はお迎えをすることも可能だったが自分の子どもと学校帰りにアイスクリームを食べる約束をしていたのでそのママ友に「ノー」ということに躊躇しなかった、そうしたことでとてもよい気分になったとしています(165~168ページ)。自分の子どもとの約束を優先したと言っていますが、裏切ったママ友への復讐/意趣返しをするのが快感だと言っているようにしか思えません。感情を抑えて相手に敬意を払い好奇心を持てというこの本の全体のメッセージとはそぐわないように思えます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kaeru_shock2.gif)
原題:THE POWER OF CURIOSITY
キャシー・タバナー、カーステン・スィギンズ 訳:吉田新一郎
新評論 2017年2月10日発行 (原書は2015年)
第2章で論じられる「今、ここ」に集中するということ、つまり話す相手に何かほかのことをやりながらとかほかのことで心ここにあらずの状態で接するのではなく、ほかのことを中断して相手に向き合うということは、著者が母親としての経験で述べている、子どもとの接し方で実感できるように、対人コミュニケーションの上でとても重要なことだと思います。
著者は、責めるのではなく「好奇心にあふれたオープンな質問は、困難な状況を乗り越える際に役立つ」としていますが、その例として挙げられている年間5日以上休まないように部下に徹底するように言い渡された上司が、過去1年間に25日休んだ部下に「これから1年間、休みを大幅に減らす方法を考えることができますか?」と聞き、部下が「自信がありません。風邪を引いてなかなか治らなかったり、息子が風邪を引いて、夜の間私が看病をしなければならず、疲れきって仕事に来れなかったりしたときもありました。それ以外に、何があったのかは思い出せません。」と答えたら、「息子さんの世話で大変なときもあるようですね。年間の休みを減らすためにどんな方法が考えられますか?」と聞く(108~110ページ)というように、自分の望む答えが出るまで聞き続ける(問い詰める)のでは、「責めている」のと同じで、嫌がらせと見えます。企業の幹部側のコーチングはどちらにしても部下を企業の意向に沿わせられればいいということなんでしょうけど、これでは自己満足の域を出ないのではないかと、私には思えます。
著者自身は、これまで相手の仕事が忙しいときにその子どものお迎えをしてあげていたママ友が今日はあなたの子どもの迎えをするというので喜んで仕事を入れたところお迎えをドタキャンされてしまいその日の夕方に入れた仕事をキャンセルして自分の子どものお迎えに行ったという経験をして、その際に家族のニーズを第一にするという「限度」を設定し、数日後にそのママ友が子どものお迎えを頼んできた際にはその日はお迎えをすることも可能だったが自分の子どもと学校帰りにアイスクリームを食べる約束をしていたのでそのママ友に「ノー」ということに躊躇しなかった、そうしたことでとてもよい気分になったとしています(165~168ページ)。自分の子どもとの約束を優先したと言っていますが、裏切ったママ友への復讐/意趣返しをするのが快感だと言っているようにしか思えません。感情を抑えて相手に敬意を払い好奇心を持てというこの本の全体のメッセージとはそぐわないように思えます。
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原題:THE POWER OF CURIOSITY
キャシー・タバナー、カーステン・スィギンズ 訳:吉田新一郎
新評論 2017年2月10日発行 (原書は2015年)