伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

しろいろの街の、その骨の体温の

2017-08-01 23:52:38 | 小説
 「光が原ニュータウン」に住む谷沢結佳が、習字教室で一緒のサッカー好きのうぶな少年伊吹を「おもちゃにしたい」と思い、戸惑いためらう伊吹に強引なキスを繰り返し、屈折した思いを募らせてゆく青春小説。
 小学4年時のクラスの中で光る同級生「若葉ちゃん」への憧れと仲良し3人組の中で少し疎ましく思っている信子ちゃんよりも若葉ちゃんに好かれているという優越感を持ち、奥手の伊吹を支配していることへの満足感に満ちていた結佳が、中2になり、貧乳で下半身はぶくぶく太ったことに強いコンプレックスを持ち、クラス内での女子の厳しい人間関係と序列の下で下から2番目のグループに甘んじ、かっこよくなって女子の人気を集める伊吹に対しては屈折した/ねじくれた思いを持つ様子が対照的に描かれています。トップグループの女子のご機嫌取りに励む若葉ちゃん、一番下のグループに位置づけられて空気を読まずに我が道を行く信子ちゃんと、分断された3人組の変容も描かれ、クラス内の陰湿な人間関係が強烈に印象に残ります。
 あっけらかんとしたうぶな伊吹から交際を求められながら、容姿への強いコンプレックスとクラス内の序列からいじめを恐れて否定的な態度をとり続ける結佳の姿には、哀れと人間関係・いじめの恐ろしさ・凄まじさを感じます。少女漫画的な、「ふつう」の少女がモテモテ男子から好かれて顔を赤らめてみたいな、白馬の王子様が迎えに来るような妄想の世界を、夢見ることさえ許されぬ厳しさに、少しおののきます。
 少女の性の目覚めを描いた作品ではあるのですが、どちらかというとそれよりもクラス内での人間関係の陰湿さ・厳しさの方が目につき、そちらに気圧されてしまいました。


村田沙耶香 朝日文庫 2015年7月30日発行 (単行本は2012年9月)
三島由紀夫賞受賞作
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする