才能を感じられない独りよがりの新人画家朝比奈達二の作品展示を拒否した画廊経営者新宮歩美と元カノを呼び出して復縁を迫る歩美の夫明良、セクハラヤジ問題で知らぬ顔を続け事業者との癒着を深める都議赤岩広貴と広貴をセクハラヤジの犯人と疑いつつもそれを聞けずマスコミがほかのニュースを大きく報道してセクハラヤジ問題が忘れられればいいと願い続ける妻篤子、人造人間の研究者佐山教授を取材しつつ和太鼓サークルのリーダーだった既婚者の結城と不倫を続けていた薫子を結城から奪って婚約にこぎ着けたジャーナリストの里見謙一郎、そして人造人間たちが便利に使われている70年後の日本の4話からなる小説。
全体を通じて、あそこで流されないで自分の志を保ち続けていれば、あそこでほんの少しの勇気を持ち正しいと思える行いをしていれば、という思いを描き、ほんの小さなことであっても、流されずに実践・実行しようというメッセージを発しています。
しかし、都議会のセクハラヤジ問題を始め現実の事件を多数書き連ね、70年後の世界から振り返って2014年を「平成の新政」としつつ(330ページ)、集団的自衛権を容認する閣議決定等にはまったく言及せず、日本社会が悪化/劣化したエポックメイキングなできごとをぼかしているところが腰砕け感があります。
吉田修一 文藝春秋 2016年3月20日発行
「週刊文春」2014年8月14日・21日号~2015年7月30日号連載
全体を通じて、あそこで流されないで自分の志を保ち続けていれば、あそこでほんの少しの勇気を持ち正しいと思える行いをしていれば、という思いを描き、ほんの小さなことであっても、流されずに実践・実行しようというメッセージを発しています。
しかし、都議会のセクハラヤジ問題を始め現実の事件を多数書き連ね、70年後の世界から振り返って2014年を「平成の新政」としつつ(330ページ)、集団的自衛権を容認する閣議決定等にはまったく言及せず、日本社会が悪化/劣化したエポックメイキングなできごとをぼかしているところが腰砕け感があります。
吉田修一 文藝春秋 2016年3月20日発行
「週刊文春」2014年8月14日・21日号~2015年7月30日号連載