中高一貫の私立女子校に通う中学生小川有夢と木明瑤子、2人と仲良しだったがクラスのボスのルエカに刃向かったためにいじめに遭い転校して少し離れた町の公立中学に通う野方海が、脳腫瘍で死んだ歌手リンド・リンディが最後に作ったアルバム「ペルー」を偲んで、死んだリンディのいるペルーに行くを合い言葉に、つらさを耐え忍ぶ様子を描いた小説。
有夢、瑤子、海の3人を中心に、瑤子の父孝、担任の奈緒、いじめっ子のルエカ、海の母和子らの回を交えていますが、そこはやや連載用に行き当たりばったりに振った感もあります。
いじめ抜いて海を転校させた後に、海と仲良しだった有夢と瑤子を使って転校先まで嫌がらせを続けるルエカの執念深い底意地の悪さを描きつつ「ルエカ」の章というか回を中間に置いて、そこでルエカにもこういう境遇があったんだということを、読者がなるほどと思えるほどのルエカに同情/共感できるくらいの悲劇を書き込むのではなく、中途半端な、そりゃ人それぞれにさまざまな事情はあるだろうけど、それでこれほど残忍になれるかねという程度のエピソードにとどめた作者の意図は今ひとつ読めませんでした。世の中は、それほど劇的ではなく、いじめは不条理で救いがたいよね、と、そういうことでしょうか。

井上荒野 新潮社 2019年11月25日発行
「小説新潮」連載
有夢、瑤子、海の3人を中心に、瑤子の父孝、担任の奈緒、いじめっ子のルエカ、海の母和子らの回を交えていますが、そこはやや連載用に行き当たりばったりに振った感もあります。
いじめ抜いて海を転校させた後に、海と仲良しだった有夢と瑤子を使って転校先まで嫌がらせを続けるルエカの執念深い底意地の悪さを描きつつ「ルエカ」の章というか回を中間に置いて、そこでルエカにもこういう境遇があったんだということを、読者がなるほどと思えるほどのルエカに同情/共感できるくらいの悲劇を書き込むのではなく、中途半端な、そりゃ人それぞれにさまざまな事情はあるだろうけど、それでこれほど残忍になれるかねという程度のエピソードにとどめた作者の意図は今ひとつ読めませんでした。世の中は、それほど劇的ではなく、いじめは不条理で救いがたいよね、と、そういうことでしょうか。

井上荒野 新潮社 2019年11月25日発行
「小説新潮」連載