伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

全検証 コロナ政策

2023-10-04 20:33:23 | 人文・社会科学系
 主として公的な機関の発表資料と統計に基づいて、コロナ禍の実情と推移、ワクチン・マスク・行動制限・PCR検査の感染・死亡抑止効果、医療崩壊の実態と原因、コロナ予算の規模と使途、無駄と使い残し、コロナ対策・コロナ予算の日本経済への影響・後遺症について評価し論じた本。
 著者は私の同業者で、「はしがき」で「私の本業は弁護士であり、『門外漢』と揶揄されることが多いのですが、門外漢であるからこそ、このような分析が可能になりました」(4ページ)と述べています。私は、証拠資料に基づいてどのような事実があったか/認定できるかを論じるのはまさしく弁護士の本業で、弁護士が専門的力量とセンスを示せる場であると考えています。もちろん、論証に用いる資料の取捨選択、資料の読み方は幅があるものですし、見落としている資料の存在、資料の読み方の誤り、資料の性質についての知識などで対象分野の専門家から異なる指摘があり得るでしょうし、別のより説得力のある見解が提示されることもあり得るでしょう。そういう意味で、弁護士が提示する議論・意見は唯一のものとか確実なものとは限らず、その論旨の説得力を評価して読むべきものです。そういう限界があることを前提として、資料に基づいて弁護士が提示するものは、対象分野について専門家でないとしても一定の価値があるものと思います。
 著者の評価は、ワクチンは接種後一定期間は死亡・重篤化予防効果があり、デルタ株までは感染予防効果もあったがオミクロン株では感染予防効果はなかった、マスクは特に感染者がマスクをすることに周囲の感染を予防する効果が見られ、行動制限にも感染予防効果があった、日本で医療崩壊が顕著に起きたのはほとんどが民間中小病院という日本ではしかたがなかったなどで、ブラック企業被害対策弁護団事務局長が書いたものとしてはずいぶんと穏健なものに思えます(財政問題とかアベノミクスは批判していますが)。
 2022年は2020年と比べて感染者も死亡者も圧倒的に増えているのに、2023年5月からは感染拡大防止に一定の効果が見られたマスクも行動制限もなされなくなりました。このまま元々感染が拡大する冬を迎えたら感染が確実に拡大する(106~107ページ、175~176ページ)という著者の指摘には同感します。


明石順平 角川新書 2023年8月10日発行

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