伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

存在のすべてを

2024-07-22 23:16:04 | 小説
 1991年に横浜市で発生し警察が犯人を取り逃がした4歳児の誘拐事件で3年後に被害児童が祖父母の元に戻ったものの事件の真相も犯人も解明できないまま時効となった後、2021年に担当刑事が死亡したのを契機に、当時取材を進めていた新聞記者が改めて調査をして行くというミステリー小説。
 いかにものミステリー小説の体裁で開始しつつ、次第に画家の苦しみと美術業界の闇に焦点が当てられ、人の生き方、人間愛を考えさせるという方向になっていきます。最初のテンポと中盤の間延び感に少しギャップがあり、つかみで生じる期待で読んでいると失速感が生じます。また、ミステリーとしては、事件後被害児童の復帰までは描かれるものの犯人グループや事件当日の詳細などについては欲求不満が残りました。基本、ミステリーよりもヒューマンドラマと受け止めた方が、読後感がよくなると思います。


塩田武士 朝日新聞出版 2023年9月30日発行
「週刊朝日」連載
2024年本屋大賞第3位

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