伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

卒業生には向かない真実

2023-11-20 23:54:37 | 小説
 前作(「優等生は探偵に向かない」:邦題)でレイプ犯であることを暴いたマックス・ヘイスティングスに無罪判決が出て、マックスの代理人弁護士から名誉毀損だと調停を起こされたピップが、匿名の者から脅迫を受け、その犯人を捜すうちに…という展開のミステリー小説。「自由研究には向かない殺人」(邦題)シリーズの第3巻にして完結編。
 作者は「謝辞」で自らの経験に基づく刑事司法への失望と怒りを述べていますが、それを前提としても、この結末に爽快感や共感を持つかには疑問があります。最初の作品の明るさから、遠くダーク・ノワールのトーンになってきたことと合わせて、そのあたりの価値観で作品の評価が分かれるだろうと思います。
 この作品でピップがマックスから申し立てられた手続が「仲裁」と訳されている(20ページ)のですが、仲裁は仲裁人の判断に従う手続で不服申立もできませんので、この内容だったら「調停」じゃないかと思います。原書がどう書かれているのか確かめる余裕はありませんが、英語の arbitration が日本語では仲裁とも調停とも訳され、混乱を来すことが多いのが実情です。法律ものを訳すときには翻訳者は気をつけて欲しいと思うのですが。


原題:AS GOOD AS DEAD
ホリー・ジャクソン 訳:服部京子
創元推理文庫 2023年7月14日発行(原書は2021年)
「自由研究には向かない殺人」は2023年9月12日の記事で紹介しています。
「優等生は探偵に向かない」は2023年9月13日の記事で紹介しています。



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