大学時代の友人の伝手で大手商社での中央アジアのレアアース資源の開発プロジェクトを主導し成功直前で会社を辞めることになった藤木花織32歳が、一転して、父親が金庫番を務める与党の大物政治家久富隆一の秘書となり、久富の息子の幼なじみ隆宏とともに与党政治の世界に飛び込んでいくという政治小説。
主人公の藤木花織が頭角を現して行くお話ですが、中盤で父親から実現したい理想を聞かれて、「わたしは――。個人が社会の犠牲にならない世の中にしたい」と言いつつ、「そのためには……金庫番として久富に仕える以外の具体案が思い付かない」(245ページ)というのは、これは何なんだ?と思います。そして、藤木花織・久富事務所と並行して2~3割くらいの頻度で東京地検特捜部が出てくるのですが、これが小原という検察事務官の視点で赤レンガ派と現場派の対立にこだわりながら小原がそれを見通せていないために何とももやっとした描写に終始してこのパート、なくてもいいんじゃない?と思えます。しかし、最後に切れ者の有馬検事にバトンタッチして、その有馬検事を藤木花織が翻弄するということで、最終的に力をつけた藤木花織の切れ者ぶりが強調されるというしくみになっていて、最後まで読むとあぁなるほどと思いました。
伊兼源太郎 講談社文庫 2022年7月15日発行(単行本は2019年7月)
主人公の藤木花織が頭角を現して行くお話ですが、中盤で父親から実現したい理想を聞かれて、「わたしは――。個人が社会の犠牲にならない世の中にしたい」と言いつつ、「そのためには……金庫番として久富に仕える以外の具体案が思い付かない」(245ページ)というのは、これは何なんだ?と思います。そして、藤木花織・久富事務所と並行して2~3割くらいの頻度で東京地検特捜部が出てくるのですが、これが小原という検察事務官の視点で赤レンガ派と現場派の対立にこだわりながら小原がそれを見通せていないために何とももやっとした描写に終始してこのパート、なくてもいいんじゃない?と思えます。しかし、最後に切れ者の有馬検事にバトンタッチして、その有馬検事を藤木花織が翻弄するということで、最終的に力をつけた藤木花織の切れ者ぶりが強調されるというしくみになっていて、最後まで読むとあぁなるほどと思いました。
伊兼源太郎 講談社文庫 2022年7月15日発行(単行本は2019年7月)
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