アメリカは大洋に囲まれ、ヨーロッパ諸国のように安全確保だけで疲れ切ってしまうことがなかったために楽観的な特徴を持っていた。アメリカが受けた3度の奇襲、1824年8月24日のイギリス軍の攻撃によるワシントンの炎上、1941年12月7日の真珠湾攻撃、そして2001年9月11日を機にそのナショナルアイデンティティが危機に瀕した。アメリカの19世紀における安全保障の基本は、先制・単独行動・覇権であった。先住民の拠点がある地域や現在は敵対していなくてもやがては敵対勢力に奪われるかもしれない地域を、安全確保のために占領する、アメリカの安全確保を他国の行動に決定的に依存しない(同盟はしない)、勢力均衡ではなくアメリカに近接する場所には他の大国の主権を持たせない。この行動原理に従いアメリカはアメリカの西海岸まで征服し(フィリピンまで占領したが)西半球の覇者となった。しかし、20世紀のアメリカは、戦争が避けられなくなっても最小限の犠牲で覇権を確立するために、同盟を用い、第2次世界大戦では戦闘はできるだけ他国にさせ、最初の一撃は相手にさせ、また戦後復興を提供することで、道徳的に、他国の同意の下に覇権を確立した。その背景には、他の「より悪い者」の存在が他国にアメリカを支持させたこともあった。9.11後のブッシュの戦略は、19世紀の行動原理への先祖返りで新しいものではない。「衝撃と畏怖」の効果は永続しない。ビスマルクに見られるように新たな現状の強化と周囲を安心させる再保証、つまり新たに押し付けたシステムの中で安住することの説得が重要である。「無能な戦略家はこの転換をいつ行うべきかをわきまえていない。彼らは衝撃と畏怖に魅了されるあまりそれだけで終わってしまうのである。」(102頁)・・・著者は概ねこのようなことを述べています。
先制・単独行動主義では、19世紀のアメリカが、結局その行動原理の下にアメリカ全土を征服していったように(さらにはフィリピンまで征服したように)、理論的にはアメリカが世界制覇するまで戦闘が続きかねません。そのような行動原理は、帝国主義戦争が倫理的に許容されていた時代の、しかもアメリカ大陸に強国がなかったという事情の下でのみ可能なものでしょう。侵略戦争が許されない時代の、しかも他国の主権が確立されている世界で、このような野蛮な原理に復帰したアメリカは、むしろ世界の不安定化要因となっています。アメリカ政府は、そしてそれに追従する日本政府は、いつになったら目が覚めるのでしょうか。
原題:SURPRUSE,SECURITY,AND THE AMERICAN EXPERIENCE
ジョン・ルイス・ギャディス 訳:赤木完爾
慶應大学出版会 2006年11月2日発行 (原書は2004年)
先制・単独行動主義では、19世紀のアメリカが、結局その行動原理の下にアメリカ全土を征服していったように(さらにはフィリピンまで征服したように)、理論的にはアメリカが世界制覇するまで戦闘が続きかねません。そのような行動原理は、帝国主義戦争が倫理的に許容されていた時代の、しかもアメリカ大陸に強国がなかったという事情の下でのみ可能なものでしょう。侵略戦争が許されない時代の、しかも他国の主権が確立されている世界で、このような野蛮な原理に復帰したアメリカは、むしろ世界の不安定化要因となっています。アメリカ政府は、そしてそれに追従する日本政府は、いつになったら目が覚めるのでしょうか。
原題:SURPRUSE,SECURITY,AND THE AMERICAN EXPERIENCE
ジョン・ルイス・ギャディス 訳:赤木完爾
慶應大学出版会 2006年11月2日発行 (原書は2004年)