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伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル

2014-04-09 00:18:14 | 実用書・ビジネス書
 インターネット上の書き込み等による名誉毀損・侮辱に対する対抗手段となる削除請求や発信者情報の開示請求(その後発信者に対する損害賠償請求等)の手順を解説した本。
 この種の本には珍しいくらい、著者が読者にわからせようと気を配っていることが感じられ、読んでいるだけで実際の手続がイメージできるところがうれしい。東京地裁保全部(民事9部)の待合室の呼出アナウンスまできちんと再現されていて臨場感がありますし、仮処分の発令の時に積んだ担保の取消手続までちゃんと説明されていて、かゆいところで手が届く感じがします。そういう感想を抱くのは、同業者だけだろうとは思いますけど。
 書き込みをした者に対する損害賠償請求となると、サイト管理者に対する発信者情報開示の仮処分、アクセスプロバイダに対するアクセスログ保存請求ないし消去禁止仮処分、アクセスプロバイダに対する発信者情報開示請求訴訟を経てようやく発信者が特定でき(できない時もある)、それから発信者に対する損害賠償請求で、これも発信者に差し押さえ対象財産もなければ判決は取れても回収できないという、手間と費用はかかるけど取れるとは限らない話なので、現実的には企業・お金持ちでないとやる気にもなれない手続ですが、この本を読んでいると、少し明るい気持ちでできそうに感じます。


中澤佑一 中央経済社 2013年11月10日発行
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読んでやめる精神の薬

2014-04-08 20:22:02 | 実用書・ビジネス書
 抗うつ剤や睡眠剤、統合失調症の薬として処方されている薬についてその危険性を論じる本。
 薬の問題の前にうつ病や統合失調症の原因についての説明が興味を引きます。過剰なストレスや虚血に曝されたとき、人体はそれに対応するために筋肉や脳に多くの血液を供給するため心臓を速く強く動かし、それはアドレナリンやグルタミン酸、ノルアドレナリン、ドパミンの分泌により行われるのですが、興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸やドパミンが必要以上に出るとその興奮毒性によって脳の神経細胞が傷つけられる、その防止のために抑制系の神経伝達物質のGABAが分泌される仕組みだが、経験したことがないような強いストレス、本人の対処できる程度を越えたストレスに曝されると十分なGABAが分泌できず、神経細胞が傷つくことがうつ病の原因と考えられると説明されています(12~20ページ)。統合失調症についても、ドパミンやセロトニン、グルタミン酸など興奮系の神経伝達物質とそれらと拮抗する作用のある抑制系の神経伝達物質のGABAやアセチルコリンなどの分泌を調整しているNMDA受容体の機能が低下する病気だという考え方が有力になっているのだそうです(129~130ページ)。
 抗うつ剤や統合失調症の薬はドパミンやセロトニンの量や効果を人為的に調整(増減)させるものが多いのですが、著者は、急性期にはこれらの薬で症状を抑える必要があるがその後はできるだけ薬を用いずに十分な休養を取って一時的に傷ついた神経細胞を回復させることの方がいいという考えのようです。
 抗うつ剤として広く用いられている選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI。著者は、試験管内ではセロトニン濃度のみを高める効果があるが人体ではセロトニンのみではなくドパミンも増やすので「選択的」ではなくセロトニン再取り込み阻害剤:SRIと呼ぶべきだと主張していますが)のパキシルの服用による譫妄に伴う攻撃性や衝動性(傷害・殺人、自殺等)の危険に相当なページを割いて説明がされています。日本では裁判所や行政が認める可能性は低そうですが、頭に置いておきたいところです。特に子どもに対しては大うつ病、不安障害、強迫性障害に用いたランダム化比較試験でパキシルの治療効果は証明されず、「効かない」のに害だけは確実にあると著者は声を大にして訴えています(97~100ページ)。
 統合失調症についても、統合失調症用薬剤クロルプロマジンが治療に導入され始める1955年以前は、初めて発症して入院した人の半数以上が抗精神病薬なしで1年以内の入院で自然治癒して退院していたし、クロルプロマジンとプラセボを比較したランダム化比較試験の追跡調査をみると薬剤を用いなかった方が予後がよかったとされています(131~132ページ)。
 薬に頼りがちな風潮に警鐘を鳴らす報告として、気に留めておきたい本だと思います。


浜六郎 金曜日 2014年1月20日発行
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事例からわかるモンスター社員への対応策[改訂版]

2014-04-06 22:52:53 | 実用書・ビジネス書
 経営者にとって望ましくない労働者の要求に対して、経営者がどのように対応すべきか、特に就業規則や労働契約、社内の規定や制度の作り方のレベルでの予防策について解説する本。
 後半になるにつれ、労働者側が悪質なケースが増えて、モンスター社員と呼んでも差し支えないかなと思えますが、前半は法律上当然の権利を行使した労働者に対して経営者にとって気に入らないからモンスター社員とレッテル貼りしているケースが散見されます。例えば事例3の退職時に過去に遡って未払残業代の請求をする社員がなぜ「モンスター社員」なのでしょうか。法律上支払義務がある残業代を支払わない経営者が法律違反をしているわけですし、在職中請求できないような威圧的な労使関係だったからこそ退職時に請求するのだと思います。それを「モンスター社員」呼ばわりする経営者こそ労働法を知りもしないし知ろうともしない原始的な経営者であり「ブラック企業」と言うべきでしょう。
 事例6では社内貸付がある社員が破産したケースについて「会社勤めを継続したいのであれば、会社への債務は清算債務から除外するのが通常ですが、モンスター社員となれば平気で会社の借入金も免除対象の債務に計上してきます」(34ページ)としています。破産申立の際に特定の債権者(貸主)を債権者一覧表から意図的に除外することは免責不許可事由となります(免責が得られなければ破産する意味がありません)し、破産法に違反する行為です。こういった違法行為を強要し、他の債権者が支払を受けられない中で勤務先の会社だけが給料から天引きするなどして回収を続けるという身勝手で強欲な経営者がいて弁護士としては大変困ることがありますが、この本はそういう違法行為を強要しそれに応じない労働者を「モンスター社員」と決めつける感性で書かれています。
 そういった意味で、労働者の権利を守る弁護士の立場からは、極めて不愉快な本です。
 もっとも、防御策として書かれていること自体は、実は比較的穏当で、気に入らない労働者を「モンスター社員」と決めつけたがる原始的な経営者を対象に、「気持ちはよくわかります」「そういう労働者はとんでもない奴でモンスター社員です」と媚びを売り取り入って、しかしそれでも裁判所に行ったら勝てないからそうなる前にこういう対策をといって、社内の実情を調べる「労務監査」をした上で規則類の整備修正をしましょうとコンサルタント業務を売り込み結論的には法規を守りましょうというのがこの本の本質であるようにも見えます。裁判所で通らない主張ならば、その主張をする経営者が間違っており、労働者側の主張が正しいと言うべきなのですが、そう言うと相手にもしてくれない感情的で身勝手な経営者に聞く耳持たせるためにこういう「モンスター社員」の決めつけをしている、またそういう経営者がこの本のターゲットだということなのでしょう。経営者側のコンサルタントも営業が大変だよねということかもしれません。
 未払賃金(残業代)請求の時効が2年というのを「民法の請求時効」(16ページ)、「賃金請求権の2年時効などは、民法を参考としています」(112ページ)は、あまりにお粗末。民法上は月単位かそれより短い単位の賃金の請求権の時効は1年とされており(民法174条)、労働基準法が賃金請求権の時効を2年と定め(労働基準法115条)、特別法である労働基準法が優先する結果、2年となっていて、労働者の賃金の時効について民法が適用される場面はありません。
 2013年12月1日発行のこの「改訂版」で2012年8月施行の労働者派遣法の改正が反映されず「日雇い派遣の原則禁止など、今秋の臨時国会で改正案が提出される予定である」(111ページ)とされたままだったり、2013年4月施行の高年齢者雇用安定法の改正も反映されず、「一定の条件」を満たす者だけの再雇用でよいように書かれていたり(58ページ、138ページ)します。この時期に改訂するなら、何はともあれこれらの重要法令の改正点だけは書き直そうとするのが普通の著者の姿勢だと思うんですが。


河西知一 泉文堂 2013年12月1日発行 (初版は2010年11月15日)
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妻と女と雨が好き

2014-04-05 20:43:38 | 小説
 勤務先のホテルの同僚の阿漕な小遣い稼ぎを上司に指摘したら逆に嫌がらせされて退職し無職となった水川浩史と3度目の流産でうちひしがれた妻汐里が、夫婦がふさぎ込む部屋をのぞき込むように表れた「春風先輩」と自称する詐欺師に誘われて、浩史が妻のあることを知らせつつ女性を落としてハメ撮りした上で妻からの訴訟をちらつかせて金を払わせる商売を始めるという小説。
 女性経験の少ない平凡なアラフォー男が、「春風先輩」のアシストを受けながらも、次々と美女を落としていくという展開は、作者が私と同い年のおじさんであることを知ると、いかにも男の妄想炸裂という感じの設定。
 しかし、それを通じて、3度も流産した妻の失意を思い、今やセックスレスだった妻を恋しく思い妻に欲情していく、しかしそれを素直に言い出せず悶々とする浩史の姿は、微笑ましいような身につまされるような…
 いかにも飄々としあっけらかんとしつつも非常識で異星人感覚の「春風先輩」を狂言回しにしながら、夫婦の関係にある男女の、機微とか綾とか言うほど繊細ではないものの、募り交錯する思いをテーマとして読ませる作品だと思います。


一色伸幸 角川書店 2013年12月30日発行
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アナウンサーが教える愛される話し方

2014-04-04 20:18:59 | 実用書・ビジネス書
 表紙見返しのキャッチによれば「話し方で損をしていませんか。声の出し方を工夫するだけで、新しい『あなた』が生まれます!友だちから敬遠された、仕事で相手を怒らせた……間違えた言い方や表現の仕方で失敗した人に、アナウンサー歴37年のカリスマ女性アナウンサーが、『愛される話し方』を伝授します。スピーチやプレゼンテーションが見違えるように上手になり、自分の声に対するコンプレックスも解消されます。自分を変えたい方、必読です!」という本。
 著者がアナウンサーを志望した動機・経緯や女性アナウンサーの草分けとしての努力や意地、エピソード、80年代に入り「女子アナ」がタレント扱いされるようになったことへの苦々しい思い等を語る第1章とアナウンサーのあり方を主にアナウンサー志望の学生を対象として語る第5章は、アナウンサー論と昨今の風潮への苦言で構成されています。この部分は「今どきの若いもんは」というフレーズこそ避けられていますが、そういう心証がひしひしと伝わってきます。他方、声の印象の重要性、声の個性や発声法について語る第2章、日本語表現の誤りを指摘する第3章、スピーチ等の作法と技法を述べる第4章が、タイトルにある「愛される話し方」を論じています。ここでは、自然体でリラックスして声を出すこと、内容を理解しその情景を思い浮かべながら相手を見て意識して話す、つまり相手を思いやり心を込めて話すことで相手に通じるのだということが語られています。
 この2つの柱が、あまり脈絡なく合体され、「愛される話し方」として語られることも筋道立てて論じていくというまとまったものではなく、エピソード的な断片が積み重ねられているように思えます。日本語の不適切な表現など、例えばら抜き言葉や、目上の人に「ご苦労様」は使うなとか、力不足と役不足の勘違いとか、今どきどこでも言われていることが大半で、これで本を作るかなぁと思います。全体としては中途半端な印象を強く持ちました。表紙見返しのキャッチからすれば、第1章と第5章はまったく不要と言っていいでしょう。ありきたりで気むずかしい年寄りの小言を聞かされているような第3章も、いらないように思えます(間違えた言い方や表現の仕方で失敗した人という観点では、気むずかしい目上の人に嫌われないように必要かもしれませんけど)。アナウンサーが教えると銘打つならば、発声法と話し方に特化して(この本で言えば第2章と第4章の内容を)掘り下げて欲しかったと思います。
 この内容でもスピーチやプレゼンテーションが見違えるように上手になる人も中にはいるかもしれませんが、そういう人はたぶん何を読んでも取り入れて上達できるタイプの人で、この本でなくても何かかにかをつかめるのだと思います。


吉川美代子 朝日新書 2013年12月30日発行
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快挙

2014-04-03 21:26:09 | 小説
 写真家志望だった主人公山裏俊彦がバツイチの小料理屋の女将みすみを見初めてともに暮らすうちに、小説家志望に切り替え「快挙」という小説を書いて雑誌社の新人賞に応募していきなり最終選考まで残るがギリギリで落選し、阪神大震災を契機に神戸のみすみの実家に移り住みラジオ番組の台本を書きつつ、編集者から期待されて小説を書き続けるが編集者の交代などの事情で日の目を見ず、東京に戻り週刊誌の原稿とりまとめなどをして暮らして行くうちに、それぞれの病気や浮気など夫婦関係でも紆余曲折を経ていくという展開の小説。
 主人公の小説家を目指しつつ身過ぎ世過ぎをする部分では、「闇の決算書」なるいかにも週刊新潮の「黒い報告書」を示唆する実際の事件を題材にしながら当事者の男女関係とかを勝手に想像して書き飛ばす無責任な「実話小説」もどきの執筆を担当したなど、実在の作家をモデルにしているような印象を受けます。作者自身の経験ではないようですが、この主人公は実在の作家をモデルにしているのでしょうか。実在のモデルがいるのでなければ、こういう書き方はやめて欲しいなと、私は思います。
 この小説の読みどころは、小説家としてのストーリーよりも、夫婦関係の紆余曲折、気持ちの綾の部分だろうと思います。「そして何より、彼女の感度は抜群だった。指でさんざんいき、舌で際限なくいき、挿入するとたびたび白目を剥いて意識を失くした」(16ページ)という小料理屋の経営の才がある姉さん女房というのは、ある種の男性には理想的かも。若い頃の私はそういう人に憧れたと思います。それはさておき、主人公夫婦が紆余曲折を経て40代になり、手をつないで歩ける流れにどこかホッとします。今ひとつ爽やかでもほのぼのでもない感じではありますが、不倫や破綻ばかりが小説じゃない、しみじみする夫婦の話があっていいじゃないかという思いに答える作品なのかなと感じました。


白石一文 新潮社 2013年4月25日発行
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美しい心臓

2014-04-02 22:21:25 | 小説
 勤務先の不動産屋の所長の友人の40代の商店主と不倫の関係を続ける三十路近い「わたし」が、地方公務員の暴力夫の追跡をかわし、不倫相手の海外長期出張に付いていくために勤務先も辞め、帰国後は不倫相手の知り合いの医師の子どもたちの家庭教師をしながら不倫相手の借りたアパートに囲われ爛れた性生活を送るが、不倫相手の妻に第三子が生まれたことを知り壊れていくという不倫恋愛小説。
 冒頭の「願っていたのは、死だった」の出だしが印象的でした。あまりにも愛するが故にと、「わたし」は思うが、その実は愛するが妻の元へ帰ってしまう愛人が最終的に自分のものにならないならばむしろ死んでいなくなってくれれば美しい思いのままでいられるから、という身勝手でしかし切ない思い。「忘れじの行く末までは難ければ今日を限りの命ともがな」(君を忘れないという約束が先々まで守られるとは考えられないから、いっそのこと今日を限りに死んでしまえばとも思う:儀同三司母)のように自分が死んでしまえばというのではなく、相手が死んでしまえばというのが現代的ですが。あるいは「世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」でしょうか。
 恋愛小説量産作家と評価できる作者の近年の作品は、主人公の女性(こちらにも夫がいることも)が妻子あるなぜか関西弁の中年男との間の不倫で性の悦びを見いだしその男がテクニックで狂おしいばかりの快感を与え絶倫ぶりを見せつけて二人して甘美で爛れた性生活を送り、それが何らかの障害により挫折するというパターンが多くなっているように感じられます。読書日記を愛読していただいている方は感じていると思いますが、私はこの作者の作品を、短編集はパスして、長編の新作が出る度に読んできていますが、さすがにちょっと食傷気味です。
 後半は、元々妻子ある相手とわかって不倫関係を続けてきたのに、そしてこう言っては何ですが、相手が暴力男とはいえ自分も夫がいてW不倫で始めているのに、不倫相手の妻の住所氏名を知り、不倫相手が妻とも肉体関係を続けていたことを知ると精神的に壊れていくという、ある意味身勝手であるとともにそれ以上に何というか不倫小説ではありきたりなパターンに落とし込まれて展開していくのが、読み物としては残念に思えます。「わたし」の悲劇のヒロインのような陶酔感を覚まさせるエンディングを見ると、作者は意外に不倫恋愛に否定的なのかもとも感じられます。こういう作りならむしろ「わたし」がもっとしたたかさ・底力を発揮して開き直る展開の方がおもしろいのではないかと、私は思ってしまうのですが。


小手鞠るい 新潮社 2013年5月20日発行
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性の悩み、セックスで解決します。900人に希望を与えた性治療師の手記

2014-04-01 00:38:06 | ノンフィクション
 セックスについて、うまくできない等の悩みやコンプレックスを持つクライアントの悩みを聞きカウンセリングをし鏡で自分の体を見て知り互いに体を触りマッサージしたりしてセックスへの心と体の準備をし抵抗感をなくし必要に応じてセックスの相手となってクライアントがパートナーと容易にセックスができるように治療指導する「サロゲート・パートナー」の仕事をする著者シェリル・T・コーエン-グリーンの経験をフリーライターの共同著者が手記にまとめた本。
 シェリルが扱ったクライアントのケースの紹介と、シェリルのこれまでの主として性的・家庭的な経歴が1章ごとに交代で進んでいきます。ページと章題がケース紹介の章では下側、シェリルの経歴の章では上側と、形式上も区分されていて、わかりやすい形になっています。読んだ印象としてはシェリルの自叙伝的な色彩の方が強い感じがします。私としては、クライアントのケースの方に比重を置いてくれた方がよかったと思うのですが。
 セックスについてさまざまな悩みがあること、それが人に話しにくいだけに他人の目からはたいしたことではないと思えても本人には深刻になりがちであることに、まず気がつきます。そういうクライアントの悩みを、シェリルがどのようにクライアントに寄り添い、クライアントの気持ちをなだめいやしながら解決していくのか、そちらに引き込まれます。どちらかというと、最初の方の会話の持って行き方、心のほぐし方、クライアントのためらいへの対応などが、参考になります。人にあからさまに言いにくい問題を抱えたクライアントから話を聞きながら問題の解決を考えていくという意味で、私も類似点を持つ仕事をしていますので。また、そういう意味で、困ったクライアントへの対応やクライアントと密室で向かい合うことの難しさや危険という問題も、考えさせられるところです。
 個人的には、第7章の70歳で童貞というラリーの話に勇気づけられました。70歳で新たな世界に足を踏み出すこともですが、結果的に70歳で何の問題もなくセックスできているということに (^^ゞ


原題:An Intimate Life : Sex, Love, and My Journey as a Surrogate Partner
シェリル・T・コーエン-グリーン、ローナ・ガラーノ 訳:柿沼瑛子
イースト・プレス 2014年2月20日発行 (原書は2012年)
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