夜明け前のホーチミン市
ベトナムは初めて訪れた。外国旅行自体が、韓国についで2国目でしかない。実に貧弱な外国体験である。
ネットや案内書で調べたところ、ハノイ市は15から18度位、ホーチミン市は30度位が最高気温ということであった。それで東京・横浜よりは温かいと判断し、長袖とTシャツとメッシュのベスト、そしてごく薄いダウンの上着、半ズボンと薄手の長ズボンを用意した。成田空港までは多少薄手でも我慢できるとふんでいた。
ところがハノイ空港についてびっくり、気温は10度で霧雨。出発した成田とほぼ同じ気温。薄いダウンの下にはせめて薄いセーターを1枚持ってきた方がよかった。
車で空港から街中に入ってまずびっくりするのが膨大なバイクの群れ。東南アジアの各都市は皆、バイクが道路上に氾濫しているとは聞いていたが、これほどとは思わなかった。みんながマスクをしている。50㏄のバイクに2人、時には3人・4人が乗っていて、自動車の横や前後をお構い無しにすり抜けていく。とても怖ろしい光景である。
ここで旅行会社のガイドから次の3点の注意があった。
ア、バイクは50㏄は無免許でも乗れる。2人まで乗れるが、守る人は少ない。道を歩いて横断するときは十分注意をすること。反対車線・歩道も区別なく走り回るので危険。また排気ガス対策としてマスクを着用すること。
イ、歩道上の店は、市民の多くが利用しており、観光客もなれた人は利用するが、初めての人は衛生上の問題があり絶対に避けること。食器も満足に洗ってはいないし、ミネラルウォーターの瓶に入っている水も水道水を充たしたものが多い。消化器系の感染症の恐れが大。
ウ、水道水は手洗いやうがいまでは利用できるが、絶対に飲用しないこと。
このバイクの群れはとてもすごい。車の後部座席に座っていてもとても緊張する。警笛が鳴らされ続けている。直進優先などもまったく守られていない。右折にしろ左折にしろ隙間があればどんどん入ってくる。車はその間をどんどん突っ切っていく。車と車の間に挟まれるのではないかと心配してしまうほどである。しかもほとんどバックミラーがついていない。
信号の無視は当たり前。横断歩道を青で渡っていても、人の前方をバイクが走り抜けるし、警笛をならして人を止めて走っていく。
日本の交通事情が当たり前で世界スタンダードだと考えているととんでもないことになる。
その上、警察官の車両や救急車が平然と歩道の上に乗り上げて停車している。
道路のインフラ整備も遅れている。側溝は大きく深く削られようやく水が流れている。路面はいたるところかめのこ状になっており、歩道はほとんど敷石だが、大きくえぐられたり大きな段差は当たり前である。
また街路樹が異状に大きく成長しており、歩くスペースが街路樹に占められている。信号も少ないし、低い位置で小さいので見にくい。
説明では、
・ベトナムでは地下鉄や鉄道などの都市の中での公共交通が整備されていないし、バスも限られている。まずバイクをつかう。
・政府は、ハノイもホーチミンも軟弱地盤で地下鉄が作れない、といっている。
(確かにハノイとは「河の中」の意味で紅(ホン)河のデルタにある。ホーチミンもメコンデルタ地帯に出来た都市である。)
・それにベトナムの人は200~300メートルでも歩くのを嫌いバイクを使う。
といわれた。
ホテルにも警笛やバイクの走行音が聞こえるが、早朝日の出前から深夜までひっきりなしにバイクが走っている。
その上、電気・通信線も手の届く低い位置にあり、何本もの線が一抱えもありそうな束になって電柱にかかっている。電柱などもとても古いものが使われ続けている。
この都市のインフラ、特に交通網や道路についての未整備はベトナム戦争の傷跡がいかに大きいものであったか、というのがよくわかる。見聞は出来なかったが、水道・下水道・通信・電力等々いづれのハードな面のインフラ整備は大変遅れているように見えた。
ホーチミンでのガイドも「ベトナムの人は会社勤めや工場での勤務を極端に嫌う傾向がある。時間に縛られて勤めるよりも、店を出して商売をするほうを選ぶ。またバイクは終日走っているが、ベトナム人自身なんでそんなに走るまわる必要があるのか、何を目的に走っているのか理解できないでいる」と自嘲的に話していた。
ハノイに比べ、ホーチミン市の方が交通事情は多少はよいが、バイクの量はハノイよりも多い。信号も多くあり、信号無視はそれほどでもない。バイクのミラーは大体が装着はしている。それでも一家3人、4人がまとまって乗っている。
歩道にはホーチミン市も店が多く出ているが、歩くスペースは残っている。
しかし私はこのバイクの膨大な群れに巨大な、とぐろを巻いているエネルギーも同時に感じた。ある種無秩序で混沌とした世界だ。型にはまってなどいない。それでいて何となく全体としては秩序が保たれている。
そして次に人の群れを見て感じたことは、若い世代が多いということだ。少子高齢化社会の歪にあえぎ、見通しの聞かない日本社会に較べれば、数倍の活気がある。その活気はまだ方向の定まらない何物なのかでしかないような混沌とした状態といえる。
歩道上の、日本で言えばプラスチック製の風呂用の椅子に座って食事をしているベトナムの人々、しかし決して大声を出したり、とめどなく多弁ということではない。もくもくと食事をしている人、向き合ってぼそぼそと話し合っている二人、夜のライトアップされたホアンキエム湖の周囲のベンチのカップルも多弁ではない。そこには私も惹かれた。なにものか知れないが、巨大なエネルギーを蔵して、その発露・はけ口をじっと探し続けるなにものかを感じた。
なお、写真については失敗したと思っている。初めてのことでもあり、観光地としても日本ではマイナーであることを考慮すれば、各訪問施設の全体像をまずとってから、私の印象としての写真を並べればよかったのだが、全体像がわかる写真が少なかった。というより撮影しなかったのが多少悔やまれる。一部案内書などを利用したものもある。
ベトナムは初めて訪れた。外国旅行自体が、韓国についで2国目でしかない。実に貧弱な外国体験である。
ネットや案内書で調べたところ、ハノイ市は15から18度位、ホーチミン市は30度位が最高気温ということであった。それで東京・横浜よりは温かいと判断し、長袖とTシャツとメッシュのベスト、そしてごく薄いダウンの上着、半ズボンと薄手の長ズボンを用意した。成田空港までは多少薄手でも我慢できるとふんでいた。
ところがハノイ空港についてびっくり、気温は10度で霧雨。出発した成田とほぼ同じ気温。薄いダウンの下にはせめて薄いセーターを1枚持ってきた方がよかった。
車で空港から街中に入ってまずびっくりするのが膨大なバイクの群れ。東南アジアの各都市は皆、バイクが道路上に氾濫しているとは聞いていたが、これほどとは思わなかった。みんながマスクをしている。50㏄のバイクに2人、時には3人・4人が乗っていて、自動車の横や前後をお構い無しにすり抜けていく。とても怖ろしい光景である。
ここで旅行会社のガイドから次の3点の注意があった。
ア、バイクは50㏄は無免許でも乗れる。2人まで乗れるが、守る人は少ない。道を歩いて横断するときは十分注意をすること。反対車線・歩道も区別なく走り回るので危険。また排気ガス対策としてマスクを着用すること。
イ、歩道上の店は、市民の多くが利用しており、観光客もなれた人は利用するが、初めての人は衛生上の問題があり絶対に避けること。食器も満足に洗ってはいないし、ミネラルウォーターの瓶に入っている水も水道水を充たしたものが多い。消化器系の感染症の恐れが大。
ウ、水道水は手洗いやうがいまでは利用できるが、絶対に飲用しないこと。
このバイクの群れはとてもすごい。車の後部座席に座っていてもとても緊張する。警笛が鳴らされ続けている。直進優先などもまったく守られていない。右折にしろ左折にしろ隙間があればどんどん入ってくる。車はその間をどんどん突っ切っていく。車と車の間に挟まれるのではないかと心配してしまうほどである。しかもほとんどバックミラーがついていない。
信号の無視は当たり前。横断歩道を青で渡っていても、人の前方をバイクが走り抜けるし、警笛をならして人を止めて走っていく。
日本の交通事情が当たり前で世界スタンダードだと考えているととんでもないことになる。
その上、警察官の車両や救急車が平然と歩道の上に乗り上げて停車している。
道路のインフラ整備も遅れている。側溝は大きく深く削られようやく水が流れている。路面はいたるところかめのこ状になっており、歩道はほとんど敷石だが、大きくえぐられたり大きな段差は当たり前である。
また街路樹が異状に大きく成長しており、歩くスペースが街路樹に占められている。信号も少ないし、低い位置で小さいので見にくい。
説明では、
・ベトナムでは地下鉄や鉄道などの都市の中での公共交通が整備されていないし、バスも限られている。まずバイクをつかう。
・政府は、ハノイもホーチミンも軟弱地盤で地下鉄が作れない、といっている。
(確かにハノイとは「河の中」の意味で紅(ホン)河のデルタにある。ホーチミンもメコンデルタ地帯に出来た都市である。)
・それにベトナムの人は200~300メートルでも歩くのを嫌いバイクを使う。
といわれた。
ホテルにも警笛やバイクの走行音が聞こえるが、早朝日の出前から深夜までひっきりなしにバイクが走っている。
その上、電気・通信線も手の届く低い位置にあり、何本もの線が一抱えもありそうな束になって電柱にかかっている。電柱などもとても古いものが使われ続けている。
この都市のインフラ、特に交通網や道路についての未整備はベトナム戦争の傷跡がいかに大きいものであったか、というのがよくわかる。見聞は出来なかったが、水道・下水道・通信・電力等々いづれのハードな面のインフラ整備は大変遅れているように見えた。
ホーチミンでのガイドも「ベトナムの人は会社勤めや工場での勤務を極端に嫌う傾向がある。時間に縛られて勤めるよりも、店を出して商売をするほうを選ぶ。またバイクは終日走っているが、ベトナム人自身なんでそんなに走るまわる必要があるのか、何を目的に走っているのか理解できないでいる」と自嘲的に話していた。
ハノイに比べ、ホーチミン市の方が交通事情は多少はよいが、バイクの量はハノイよりも多い。信号も多くあり、信号無視はそれほどでもない。バイクのミラーは大体が装着はしている。それでも一家3人、4人がまとまって乗っている。
歩道にはホーチミン市も店が多く出ているが、歩くスペースは残っている。
しかし私はこのバイクの膨大な群れに巨大な、とぐろを巻いているエネルギーも同時に感じた。ある種無秩序で混沌とした世界だ。型にはまってなどいない。それでいて何となく全体としては秩序が保たれている。
そして次に人の群れを見て感じたことは、若い世代が多いということだ。少子高齢化社会の歪にあえぎ、見通しの聞かない日本社会に較べれば、数倍の活気がある。その活気はまだ方向の定まらない何物なのかでしかないような混沌とした状態といえる。
歩道上の、日本で言えばプラスチック製の風呂用の椅子に座って食事をしているベトナムの人々、しかし決して大声を出したり、とめどなく多弁ということではない。もくもくと食事をしている人、向き合ってぼそぼそと話し合っている二人、夜のライトアップされたホアンキエム湖の周囲のベンチのカップルも多弁ではない。そこには私も惹かれた。なにものか知れないが、巨大なエネルギーを蔵して、その発露・はけ口をじっと探し続けるなにものかを感じた。
なお、写真については失敗したと思っている。初めてのことでもあり、観光地としても日本ではマイナーであることを考慮すれば、各訪問施設の全体像をまずとってから、私の印象としての写真を並べればよかったのだが、全体像がわかる写真が少なかった。というより撮影しなかったのが多少悔やまれる。一部案内書などを利用したものもある。