特定のお店を紹介することはまずないのだけれど、昨晩行ったお店はなかなか気に入った。
白隠正宗を飲めるかも知れないとちょっとの期待をもって出かけた。実はこの店、昨年・今年と箱根駅伝を見た場所のすぐそばであった。ネットで「白隠」を検索中に「白隠正宗」というお酒が白隠の出身地の蔵元で醸造されていることをしり、そのお酒が横浜中華街のすぐそばの一石屋酒店で扱っているらしいことがわかった。そして同時にこの「ふじさわ」でも客に供されていることもわかった。
そうはいってももう品切れの可能性もあるだろう、とは思ったが店の紹介が「メインの魚料理は、三浦市にある金田湾で朝に獲れたものを市場を通さずに仕入れています。その他、横浜の栄町という立地を生かし、横浜中央市場へ直接仕入れに通っております。飲み物は利き酒師であるオーナーが選んだ日本全国の地酒常時25種類前後用意しております」とあるので、目当てのお酒がなくてもいいお酒が飲めるかもしれないと期待をして、寄ってみることにした。
小さな店でテーブル席が10席とカウンターが6席で、清潔感あるカウンターに座ったら目の前に「白隠正宗」の純米吟醸の一升瓶がドンと立っていた。吟醸酒というのはどうも苦手なのだが、折角だからまずこれを注文した。お酒のメニューには手ごろな値段でお店のお勧めのお酒がびっしり。
初めての客とすぐわかったようで、店長が名刺をくれてまずびっくり、かつ恐縮。メニューには掲載されていないし、珍しいお酒だし、こだわりのお酒だから間違いなく高いのだろうとちょっと心配になり値段を聞くと、980円とのこと。確かにこのお酒は高いが注文した以上、高いから止めますというのも恥ずかしいので、そのまま注いでもらった。
「通常吟醸酒は冷蔵庫で冷やしてお出ししますが、これは蔵元から常温で供してほしいといわれていますので」ということで常温でなみなみと注いでくれた。珍しいと思いながらも一口味わってなるほどと思った。私は鼻が利かないので香りはわからないが、味は吟醸とは思えない。精米歩合は50パーセントとずいぶん削っている。濃厚な味わいがする。そして何よりびっくりしたのは、アルコール特有の刺激が感じられなかった。これは通常日本酒だと口の中がべたついてしまって1合くらいしか飲めないのだが、これはつい飲みすぎてしまいそう。
白隠の名を冠した白隠出生の地のお酒、山岡鉄舟の命名などと聞くと、姿勢を正して飲まなくてはいけないのかな、あるいはかなり偏屈な味わいかな、と考えたがまったく違った。素直に口に運ぶことができた。
お通しは若布の酢の物と思われたが、これは酢が強くなくてとてもおいしい。舌触りもいい。すっかりご満悦になってから、つまみのメニューをながめて「海鮮サラダ」680円を注文。ちょっと間をおいて出てきたサラダ、ドレッシングがとてもいい。日本酒にはたしてあうのかなと思ったが、そんなことは余計な心配、幾種類かの刺身用の魚の味も引き立ててくれておいしかったし、ボリュームのたっぷりであった。
ついもう1杯飲みたくなって同じものを注文したら「同じ白隠正宗」でも別のものを出してくれた。吟醸酒ではなく生酒原酒と書いてあり、精米歩合がこちらは60パーセントと低いが、こちらも十分においしい。私としては珍しく2合も飲んでしまった。
話の中では、1/3合のグラスも供してくれているみたいだったが、今度来店したときはそれで味見をするのも悪くないと思った。
魚とおでん等がメニューに載っている。特に高くはないし、手ごろだと思う。昨晩は海鮮サラダだけにしたが、今度はもう少し注文してみたいものだ。
もう一つ気に入ったのは、店長はなかなかお酒について勉強しているようだ。ただしおしゃべりではない。これがいい。聞けば丁寧に教えてくれる。そして厨房の中は二人。16席の店で3人で切り盛りしている。これは人件費を嫌う昨今には珍しい。人の手をキチンとかけて肴を作ってくれる。とてもうれしい。
次回は東北のお酒を注文してみよう。
難をいえば、焼酎もいいものを扱っているらしいのだが、メニューには書いていない。次回に聞いてみよう。
そして会計をしてもらったら、2600円あまり。希少なお酒とおいしい肴でこれは安いと感じた。2杯目は700位だったから高くはない。ちょうどよく酔って30分、冷たい空気に酔いを醒ましながら帰宅した。
こんどは誰かをさそって訪れたい店だ。歩いて6~7分で横浜駅の喧騒を離れ、家からも近い。何より落ち着ける。