ブラームスのはホルンをこよなく愛した作曲がといわれているが、ホルンのための室内楽曲はこの1曲だけである。1865年、ブラームスが32歳の時の作品である。ブラームスとしては初期の作品に属する。
私がホルンの魅力を知ったのは19歳の時、ブラームスの交響曲を聴いた時からである。ブラームスのこのホルン三重奏曲は倍音が主体の楽器で、倍音以外の音は朝顔の中に手をいれて音を出す奏法であったために、限られた音曲しか奏することはできなかった。それがバルブを使った楽器が出回るようになって、おおいに活躍するようになった。その切り替わる時期がブラームスの初期の時代と重なるとのことである。ただしナチュラルなホルンとバルブを使ったホルンでは音色に大きな差があるといわれている。私は聴き比べたことが無いので、何とも言えないが、ブラームスはこの古いタイプのナチュラルホルンをこの曲では指定している。
私の聴いているCDはバルブホルンということであるが、解説ではウィンナホルンといわれてナチュラルホルンにもっとも近い音をだすバルブホルンと記載されている。
この曲、ホルンの曲と思っていると出だしがバイオリンで始まりビックリする。しかしバイオリンとホルンの掛け合いが極めて自然に、そして美しい音の重なり合いで無限の波のように繋がっていく。第二楽章はよく聞く曲である。軽快で耳に心地よい。ピアノが全体をひっびっているような感じがする。トリオの少し哀愁を帯びたメロディーがスケルツォと対照的で面白味がある。第三楽章は母親を悼むエレジーだということだが、独立した曲としても聴きたい曲である。バイオリンとホルンが絡むように曲を紡いでいく。第四楽章はバルブがないと吹けそうもない技巧のように思われるような激しい動きのスケルツォである。狩りを思わせる曲というが、ヨーロッパの狩りというのはこのようなものなのだろうか。狩りと云うと息を潜めて一瞬のうちに生死の矢が放たれる緊張を強いられるものと思っている私のイメージとは随分と違う。