久しぶりに伊藤若冲の水墨画から。「若冲と蕪村」展のカタログから気に入ったいる作品を取り上げてみる。
今回の作品、制作年はわからないようだが、賛はあの上田秋成である。
「何を仇鱗のよろひ鬚の矛夜昼まもれる龍の都を」と記してある。署名と花押は上田秋成のものであるとのこと。多分この狂歌と上田秋成自身が賛を記載することを前提に作られた作品である、と解説では断定している。
いかめしい海老の姿を鎧、矛で武装して身構えている武将に喩えている。黒々と誇張された眼が、とてもリアルに感じる。
しかし細かく観測すると海老らしくないような表現が重なって、全体として海老である。ひょうきんで力を抜いた晩年の作風に思える。
伊藤若冲という画家は対象を画面いっぱいに大きく描くのが得意だったのだと思う。