本日の読書は「スペイン美術史入門」と岩波文庫「東京百年物語③ 1941~1967」。
「スペイン美術史入門」は序章と第1章を少々。序章は監修者でもある大高保二郎氏が執筆。副題が「雑多るものの融合と変貌、積層する視覚経験」となっており、教科書的な記述と同時にイベリア半島の歴史と風土と文化総体から美術史を見る視点を散りばめており、興味深い叙述であった。イベリア半島内にかぎらず、大航海時代以降に支配下に置いた中南米の建築史・美術史も射程に入れて、かなりの分量を裂いていた。この目配りも刺激を受けた。
この書物、残りは第1章のみとなった。
「東京百年物語③」におさめられている三島由紀夫の「橋づくし」、山川方夫の「お守り」、吉本隆明の詩「佃渡しで」の3篇を読んだ。
三島由紀夫の「橋づくし」(1956)は初めて読んだ。花柳界の女性4人の取り立てて大きな事件ではないが、残酷ともいえる突き放したような造形が鮮明である。このような花柳界の世界は私にはもともと縁のない世界であるが、それが1950年代まで残っていたこともまた思いもよらないところで私は生きていた。
山川方夫の名は初めて聞くような気がしていたが、この「お守り」(1960)という作品は中学か高校のときにおそらく文庫本で読んだと思う。
吉本隆明の「佃渡し」は私には忘れられない詩。大学生のころ、ずいぶん親しんだ吉本隆明の詩で最初に目にした作品である。
山川・吉本の東京都市風景は、わたしも共有でき、共感できる世界である。そのような世界の接していたり、あるいはその中に暮していた。三島の描く世界はやはり私にはどこか遠い、霞みの向うの捉え難い東京の都市風景である。