★まだ奥に部屋ありそうな水羊羹 五島高資
★密豆のみどりや赤や閑職や 北 登猛
この梅雨時、暑くはないが冷たいアイスクリームや水菓子などを妻が買ってくることが多くなった。私もついつられて口に入れてしまう。
広い家に招待されたり、訪問したりすると第1句のような感想を持つこともあるかもしれないが、少なくともここ50年ほど、このような経験はしたことがない。
森閑とした畳の部屋の向うにまだ別の客間などがあるかのような静けさがある建物なのだろうか。水羊羹というもてなしが嬉しいのだろう。人の気配が感じられずに涼し気に静まっている家を想像して、ちょっとくらいは涼やかな気分になるのではないだろうか。
第2句は、逆に夏の涼やかな菓子もどこか苦い味を伴って口に入ってくる。「みどりや赤や」の「や」は並列示す助詞、「閑職や」は詠嘆の意の終助詞でいわゆる俳句の切れ字。しかし「みどりや赤や」にも詠嘆に近いため息を読み取ってもいいのではないか。企業という組織は今の時代は高齢の者には冷たいものである。主要な業務から外されているもの、とはいってもそう簡単には引き下がらない維持もまた、この組織の中で身につけた者でもあろう。人は誰しも通過してきた。
共に、このような読みは間違っているかもしれない。