Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

谷川俊太郎「少年と世界」

2020年12月30日 18時25分47秒 | 俳句・短歌・詩等関連

 岩波書店の「世界」は創刊75年ということで、巻頭に谷川俊太郎が「少年と世界」という詩を寄せていた。

  少年と世界
                  谷川俊太郎

少年は世間より先に
世界に目覚めた
今日にり先に
永遠を知ったつもりでいた

自作の短波ラジオから
海を越えて遥かな声が聞こえ
机の上の地球儀の世界は
プラネタリウムの宇宙に直結していた

見知らぬ地平に憧れと畏れを抱き
目をつむって音楽に溺れ
言葉の網の目にからまれながら
無意味の深みに生きて

落語に笑いながら泣きながら
少年はリンネを無視して
名もない野の花々の種子を
言葉の土壌に撒き続ける

生の賑やかな混沌のうちに
終末の静けさがひそんでいる
いつか老いて神を名付けるのを拒み
彼は落ち葉の寝床にやすらぐだろう

 




 「世界」は岩波書店の「世界」であり、少年にとっての外界としての「世界」の両方の意義であることは間違いないだろう。
 「世界」を読むことで、地球規模の世界の出来事が少年に届いた。それは私も体験したことであった。
 それ以上はこの詩についていうことはない。わかりやすい、そして私の胸に響く詩である。私にとっては最後の「いつか老いて神を名付けるのを拒み/彼は落ち葉の寝床にやすらぐだろう」は、今の感慨でもある。

 久しぶりに詩を読んだ。
 



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