現代の女の子を真正面から捉えた力作です。人間の生身の本音がプンプン匂う。放たれる。映画は全く躊躇せず、画面の端々にまで一人の人間が爆発される寸前まで執拗に描かれてゆく様、スゴイです。
この手の作品につきものの、退屈さがまったくないことがこの映画の救いでもある。映像処理に無駄がまったくなく、推進力がある。映画は動いている。そして我々もカナの精神を肉体を通して見つめている、、。
男たちの脆弱さは強 . . . 本文を読む
逸木 裕、この作家は初めてかもしれない。5編の短編集だが、どれも秀作ぞろい。何より、人の心が透けて柔らかに伝わってくるテーマが素晴らしい。こんなミステリーを待っていた気がする。
いまだ知らない作家がいるのだろうと思う。これから彼の作品を読むのが楽しみである。 . . . 本文を読む
アカデミー賞受賞作品、まあ見に行こうか、といった感覚で見た映画でした。土曜日だけど、人はまばら。
どうも最近映画は全く違ったことになっているようである。我々年寄りからは映画って、映画により人生を教えられたことも多く、とても生きている上で重要である。アニメ、漫画原作もの、大いに結構。でも、ちゃんと実写の映画もみんな見なきゃね、と思いたい。
と、冒頭から脱線気味です。この映画、最初の30分はとても . . . 本文を読む
昭和の喫茶店によくあったお客さんのノートブック。それを読み返していくと、ある家族の人生が見えてくる、、。
凝った造りで、一瞬はわかりづらいところもあるが、親しみやすいテーマなので、すぐそんなもの払しょくされる。そこにあるのは市井の人たちのある人生だ。誰にもあるその思いが観客を深い郷愁に誘い込む。
思春期の面白おかしい時、仕事もありながら演劇にのめり込むとき、肉親との別れなど、、誰もが経験する「 . . . 本文を読む
今最も気になる石井作品。前半はこれでもかの暗い画面が続き、滅入る。人間は暗さに慣れて来ると、ささやかな明るさや言葉を求める。後半は同じく社会的弱者たる夫婦とさと君が均衡に対峙する。さて、その均衡の揺れ具合がいい。命の意味をしかと感得し、この映画のスケールの大きさを知る。石井の生命賛歌は鋭く、強い。秀作だ。 . . . 本文を読む
ホン・サンスの新作。かなり彼の映画好きが高じて、も見た映画は二けたになる。いわば、映画で描く私小説といった感じであります。題材も彼の廻りに起こる出来事をただつくねんと述べている。
相変わらず、間の取り方も独特で、モノクロの野外光景はドキッとするほど美しい。でも、もういいかな、といった感も僕の中には出て来ている。こちとら、いかんせん、彼ほど余裕がなくなってきている。そんな自分が哀しいが、いや、自分 . . . 本文を読む
石持ならではのクローズド連続殺人事件。いつもの書きぶりだが、それでも今回は読ませる。聞かせる。魅せる。10人もの多彩な人物が登場して覚えられないぐらいだが、よく一人一人の言動を注意していないと真犯人には行きつかない。ここがこの作品のみそである。
でも流れるような展開といい、さすがだと思わせる秀作となっている。ラストの犯人を当てた人なんかいないのではないかなと思われるほど、マニアには受けること間違 . . . 本文を読む
井上光晴の名作「明日 一九四五年八月八日・長崎」の演劇です。観客たる我々は長崎に原爆が落ちたことを知っている。そして舞台に登場する人物たちはそれを知らない。健気に戦争末期の日本を生きている。少しでも明日を信じてみんな生きている、、。
一つ一つのシーンがすべて真実で、清らかで、今当たり前のように平和を生きている我々は彼らから一番幸せの輝きをもらう。ラストは泣けて席を立てず。
俳優陣、すべて完璧の . . . 本文を読む
卒業公演で、こんな実験的な地球的SFを素材に公演を行うって、勇気がいることだと思う。何か内容が福島原子力問題をベースにしている感があり、興味深いが、ムズイ。舞台は集団のダンス的演技から始まり、いよよ人間の深源に入ってゆく、、。
セリフ等俳優たちの演技は完ぺきに近いと思う。ミステリー的にテーマを描いて入りやすくはしているが、人間とは何か、を本追求しているので、正直見ていて疲れる感も無きにしも非ず。 . . . 本文を読む
なんと、、、とてもメチャ面白い。470ページもの長編だが、読みやすく、二人の探偵にはピュアな絆がある。これだけでも十分読める。ある意味愛のハナシでもある。
幽霊と小6女子児童との組み合わせ。ミソは幽霊だからどこにでも飛んでいき、警察なら調書も十分見られる。裏取りはそういう便利組織が真実を即伝えてくれる。
まあ、こういう使ってはいけないかもしれないツールを禁じ手というなら、このミステリーは成立し . . . 本文を読む
ワイルダー作「わが町」は今まで何本も見てきたが、別役実がそれを基に神戸の大地震をミックスさせた劇だと言える。そしてこれが思いがけない相違を見せつける。
神戸が後半、クローズアップされるので、何か今までのワイルダー劇からイメージが浮遊されているかのようである。ワイルダーと別役とでは見続けるまなざしが違うのだろう、少し違和感を感じる。ワイルダーからは人生の営みの普通のことが生きる源泉となっていること . . . 本文を読む
土田英生は正統派演劇者である。個性的である。ユニークすぎます。面白い。独自のお話を築いている。ほかの劇団にはない地味目だが何より孤高路線を走っている。
これらが僕の土田論であります。なんといっても、今回、明治初期と現代とを血縁だけで辿るその見事さ。いやあ、感心いたしました。これぞ土田の魅力なんですね。こんな変な、不思議なことを考え、それを脚本にする作家は他にはおらんだろうと思います。すごいです。 . . . 本文を読む
前半と後半を対比させた北野の少しおふざけ映画。見どころはないわけではないが、従来の映画の世界イメージを断ち切るかのような北野映画というよりむしろビートたけし映画。そこそこおかしいが、1時間が長く感じる。 . . . 本文を読む
さすがコーネル・ウールリッチ原作もの。冒頭からどんどん食い入るように見させられる秀作。オオカミ少年の話を基に、サスペンスがみなぎる。当時の下町風俗光景も見ものです。この時代の映画はホント無駄が全くなく、映画の原点を捉えていたと思う。 . . . 本文を読む
奇抜な題名。ミステリーファンならほっておけないですなあ、、。
読み始めると面白い。かなり時間を費やしてこの作品を書いたんだなあと分かる。そして数々のトリック。よくもここまで念入りに詰め込んだと感心。
ラストのあっと驚くトリックも納得。真犯人は彼しかないだろうなあと思ったら、、。
いやあ、とにかく下村氏にはミステリーファンを代表して脱帽します。今どきこういうテーマに挑戦するとはものすごい若さ・ . . . 本文を読む